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ここでは甲冑コメント文中に記載された各用語を簡単にご説明致します。
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なお記載内容に間違いがある可能性もありますのでその点はご容赦ください。
色の解説は文字をその色で表示するようにしてみました。
記載内容に間違い、リンクミス・誤字・脱字があった場合はご一報頂けますと幸いです。

※用語解説に際しまして、下記書籍・Webサイトから文章を引用させて頂きました(順不同、敬称略)。

   「図録 日本の甲冑武具事典 第7刷」
   「日本甲冑の基礎知識 第2版第1刷」
   「日本甲冑論集」
   「武装圖説 改訂増補」
   「時代考証 日本合戦図典 5刷」
   「復元の日本史 合戦絵巻 武士の世界」
   「甲冑面もののふの仮装」
   「日本の武器・甲冑全史」
   「全日本弓道具協会」
   「大辞泉」
   「大辞林」
   「Wikipedia(ウィキペディア)」
   「コトバンク(Yahoo!辞書)」

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あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や行 ら行 わ行

あ行 解説
阿伊佐(あいさ) 踏込佩楯で足を入れる帯状(おびじょう)になった部分のことを言います。
左右の帯(おび)を腿(もも)の後ろで釦(ぼたん)やで留(と)める形式、千切り踏込鎖踏込などの形式があります。
「廻(まわ)し」「相引(あいび)き」とも言います。
合印(あいじるし) 味方同士を識別するために用いる印(しるし)のことです。
愛染明王(あいぜんみょうおう) サンスクリット語(=古代インドで使われた言葉)で「ラーガ・ラージャ」といいます。
愛情・情欲などの欲望を、悟りを開くための力に変換してくれる仏様で、恋愛成就・怨敵降伏(おんてきこうぶく)・戦勝などのご利益(りやく)があります。
通常、獅子を頭にかぶり、三目六臂(さんもくろっぴ=目が三つに腕が六本)の赤い体で表されることが多いようです。
鎌倉時代以降広く信仰されました。
葵座(あおいざ) 天辺の座に使われる金具の一つで、星兜の場合は外周を兜の間(けん)数に合わせて葵の葉の形にし、そこに小さな星を打ちました。
筋兜にも使われ、その場合は6〜8枚の葉で、高さのあるものが用いられました。
「葵葉(あおいば)」とも呼ばれます。
青貝(あおがい) @:螺鈿に用いるために加工された貝殻(かいがら)や、その貝殻(かいがら)を使った細工のことを言います。
鮑(あわび)・夜光貝(やこうがい)など、殻(から)に真珠色(しんじゅいろ)の光沢を持った貝が使われます。
A:巻貝(まきがい)の一種です。
青貝微塵塗(あおがいみじんぬり) 漆(うるし)を塗った上に細かく砕いた青貝を蒔(ま)いて固定し、さらに漆(うるし)をかけてから研ぎ出した技法のことを言います。
用いる素材の違いなどによって様々な種類があるようです。
青鹿毛(あおかげ) 馬の毛色の一つで、全身は殆ど黒色で、眼・鼻の周辺、腋(わき)、脇腹(わきばら)などが僅かに褐色になっている毛色のことです。
ただし黒鹿毛青毛との区別は実際には難しいようです。
なお「平家物語」の「宇治川の先陣争い」に登場する梶原景季(かじわらかげすえ)の馬で、「鬼鹿毛(おにかげ)」とも呼ばれた「摺墨(するすみ)」はこの毛色の馬だったのではないかとも言われているようです。
青毛(あおげ) 馬の毛色の一つで、濃い青味(あおみ)を帯びた黒色の毛色を言い、毛色の中では最も黒い毛色とされます。
泥障(あおり) 馬の汗や蹴(け)上げる泥を防ぐための敷物のことで、下鞍の小さな大和鞍に用います。
左右別々に鞍橋四方手に結んで用いる形式が一般的ですが、古くは左右つながった一枚のを用いた形式も有り、戦(いくさ)の際には取り外される場合も有ったようです。
毛皮や皺韋などで楕円(だえん)形のような形に作られますが、武官(ぶかん)用は方形とし、「尺泥障(さくのあおり)」と呼んだようです。
「鐙摺(あぶみずり)」とも言うようです。
朱柄槍(あかえのやり) 「しゅえのやり」「朱槍(しゅやり)」とも言います。
文字通り柄(え)の部分を朱漆で塗った槍(やり)のことで、特に武勇に優れた者にのみ与えられ、使用が許される槍(やり)とされます。
足掻胴(あがきどう) 別名を「海老胴(えびどう)」とも言います。
横矧桶側胴で各板を鋲(びょう)で固定せずに鋲穴(びょうあな)を縦に長くし、その中を鋲(びょう)が上下にスライド出来るように工夫されたのことです。
通常の立胴と違って屈伸が出来ると言う利点があります。
朱札(あかざね) 小札朱漆で塗ったもののことで、室町時代頃から見らます。
赤備え(あかぞなえ) 身分の上下を問わず、各人の鎧兜・刀槍・馬具・軍装の主要な部分、あるいは全てを朱漆塗りで統一した備え(そなえ=部隊)のことを言います。
赤備えの起源は甲州(こうしゅう=山梨県)武田家と言われ、武田信玄(たけだしんげん)の家臣であった飯富虎昌(おぶとらまさ)や弟の山県昌景(やまがたまさかげ)が率いた部隊などが有名で、その勇猛さゆえに恐れられていたようです。
武田家が滅亡した時に、徳川家康(とくがわいえやす)の指示によって井伊直政(いいなおまさ)がこの部隊を受け継ぎ、以降、「井伊の赤備え」「井伊の赤鬼(あかおに)」などと呼ばれるようになりました。
また、大坂夏の陣での真田信繁(さなだのぶしげ)の赤備えも有名です。
北条家には赤備えを含む北条五色備と呼ばれる備え(そなえ=部隊)があったとも言われています。
上玉(あげたま) 天辺の座に使われる金具の一つで、玉縁の下に入れる短い筒状のものを言います。
上下をつぶした球体のような形状が多く、その表面に彫刻を施す場合もあります。
唐花座などで包み込まれるように配置されることがあります。
「揚玉」とも書き、「宝瓶(ほうへい)」とも言います。
総角(あげまき) 「上巻」「揚巻」とも書きます。
十文字の飾り結びのことで、輪(わ)を上と左右に出し、下には房(ふさ)を出します。
通常は大鎧などのの背中に結ばれた物を指し、ここに懸緒水呑緒を結びとめ、腕の動きに合わせてが効果的に動作するための基部として用いられていました。
しかしながら時代が下がると背のみでなく、甲冑の様々な個所に用いられ装飾的な意味合いがより強くなりました。
なお「甲冑には出総角を用いる」と言われる場合があるようですが、時代の古い大鎧でも出総角ではなく入総角となっているものがあることから、必ずしもそうではないようです。
総角付環(あげまきつけのかん) @:逆板の中央に打たれた金属製の環(わ)のことで、ここに総角を結びます。
「総角付金物(あげまきつけのかなもの)」「大座の鐶(だいざのかん)」とも言います。
A:笠標附鐶のことです。
阿古陀瓜(あこだうり) 南瓜(かぼちゃ)の一種で、オレンジ色の皮を持ち「金冬瓜(きんとうが)」とも呼ばれます。
室町時代に海外から輸入され珍重(ちんちょう)されていたようで、同時にその独特の形を真似た意匠(いしょう=デザイン)が流行したようです。
阿古陀形兜(あこだなりかぶと) 室町時代頃から行われた兜鉢の形式の一つで、前後頂部にふくらみを帯び、天辺がややくぼんだ形の兜鉢のことです。
戦闘での打撃による衝撃を緩和するために空間を作ったのでこのような形になったと言われ、その形が阿古陀瓜に似ていることからこう呼ばれます。
浅黄色(あさぎいろ) 薄い黄色のことですが、全く違う色である浅葱色の当て字としても使われているようです。
浅葱色(あさぎいろ) 浅葱(あさつき)の葉の色に似た、青みがかった紺色(こんいろ)のことを言います。
浅葱(あさつき)とはユリ科の多年草で、細い葱(ねぎ)のことです。
この色の薄いものは水浅葱と言います。
浅黄色と書く場合もありますが、これは当て字です。
浅葱威(あさぎおどし) 浅葱色威毛を使って威した物を言います。
足金物(あしかなもの) 太刀を佩(は)く(=着ける)ための足の緒帯執に固定するための金具のことを言います。
「山形金物(やまがたかなもの)」とも言い、口金に近い方を「一ノ足金物(いちのあしかなもの)」石突に近い方を「二ノ足金物(にのあしかなもの)」「櫓金(やぐらかね)」「腹帯金(はるびかね)」と言います。
足軽(あしがる) 「足軽くよく走る者」の意味で、もともは主人に従って徒歩にて戦い、雑役(ざつえき)などもこなす下級兵士のことを言いました。
その後、室町時代末期には集団戦の普及とともに一般兵として訓練・組織され、「弓足軽(ゆみあしがる)」「鉄砲足軽(てっぽうあしがる)」「槍足軽(やりあしがる)」などが編成されました。
江戸時代には武士の中で最も下級の身分とされていたようです。
葦毛(あしげ) 馬の毛色の一つで、灰色の毛色のことを言います。
生まれたときは灰色や黒、または母親と同じ毛色ですが、年をとるにつれて白い毛がまじってくるのが特徴です。
「白葦毛(しろあしげ)」「黒葦毛(くろあしげ)」連銭葦毛などがあります。
「芦毛」「蘆毛」とも書きます。
足白(あしじろ) 足金物に銀を使った太刀の事です。
足半(あしなか) 鎌倉時代頃から徒歩の身分の者が使用した、足裏の前半分に履(は)く草鞋のことを言います。
南北朝時代以降はしだいに草鞋が一般的となり、廃(すた)れていったようです。
足の緒(あしのお) 太刀を佩(は)く(=着ける)ための帯執足金物を連結する部分のことを言います。
口金に近い方を「一ノ足(いちのあし)」石突に近い方を「二ノ足(にのあし)」と言います。
網代(あじろ) @:杉・檜(ひのき)・竹・葦(あし)・などの細い物を、斜めまたは縦横に交互にくぐらせて編んだものを言います。
A:冬、湖や川に柴(しば)や竹を細かく立て並べ、魚を中へ誘い込んで捕る仕掛けのことです。
網代胴(あじろどう) をこまかな網代にして作った仏胴のことを言います。
の表面に網代をかけて漆(うるし)を塗り、内側はネリ革の上に天鵞絨を貼ります。
軽くて強靭なのが特徴で、草摺網代になっているようです。
を用いたには他に籐伏胴があります。
汗流しの穴(あせながしのあな) 面頬の顎(あご)下中央部に開けられた穴のことで、面頬を付けた時に顔の汗をこの穴から外へ出すための穴とされるのでこう呼ばれます。
古くは5〜6個の小さな穴が円状に並んで開いているだけでしたが、近世には丸い大穴のみになっていったようです。
またこの穴に管(くだ)を立てて緒便としたものもあります。
愛宕権現(あたごごんげん) 本地仏を「勝軍地蔵」、主祭神(しゅさいじん=お祭りされている複数の神様の内で、中心となる主要な神様)を「迦倶槌命(かぐつちのみこと=火の神)」とする権現のことで、戦勝を祈願すれば必ず勝利するといわれ、明智光秀(あけちみつひで)が「本能寺の変」の直前に参拝したり、徳川家康(とくがわいえやす)が領地を寄進するなど、戦国武将達に信仰されました。
最上氏(もがみし)の信仰が盛んであった影響で、特に東北地方には神社の数が多いそうです。
現在では専(もっぱ)ら火伏(ひぶせ=防火)の神様として知られています。
鐙(あぶみ) 乗馬(じょうば)の際に使用する馬具の一つです。
水緒韋を用いての両側につるし、乗り手が足をのせてる部分のことを言います。
壷鐙半舌鐙舌長鐙など、時代によってその形状が異なります。
知多懸鐙以外は、刺鉄の倒れる方が馬側(うまがわ)になるように付けます。
雨覆(あまおおい) 太刀石突から口金の方に向かって施された覆輪のことで、太刀を佩(は)いた(=着けた)時に上側に来る方のことです。
反対側は芝引と言い、一般に芝引の方が長さが長いようです。
「股寄(ももよせ)」とも言います。
雨走(あまばしり) 出眉庇の表面のことを言います。
「あめばしり」とも言います。
編笠(あみがさ) 藺草(いぐさ)・菅(すげ)・藁(わら)などの植物を編んで作った、頭にかぶる笠(かさ)のことです。
主に日よけ用として使われ、種類や形がとてもたくさんあります。
編笠形兜(あみがさなりかぶと) 編笠を模した変わり兜のことを言います。
飴色(あめいろ) 水飴(みずあめ)の色のように薄い茶色のことを言います。
綾(あや) @:綾織物のことです。
A:綾織のことです。
綾威(あやおどし) 畳(たた)んだ麻布(あさぬの)などをで包(くる)んで作った紐(ひも)を威毛として威す手法です。
「錦威(にしきおどし)」「練緯威(ねりぬきおどし)」「布威(ぬのおどし)」とも呼ばれます。
の色によって「白綾威(しらあやおどし)」「紫綾威(むらさきあやおどし)」朽葉綾威(くちばあやおどし)」などがあり、材料に唐綾を用いた「唐綾威(からあやおどし)」「唐錦威(からにしきおどし)」、縦糸(たていと)が青で横糸(よこいと)が黄の経青緯黄(たてあおぬきき)で織(お)られたを使う「麹塵威(きくじんおどし)」、縦糸(たていと)が紅(くれない)で横糸(よこいと)が白の経紅緯白(たてくれないぬきじろ)で織られたを使う「紅梅威(こうばいおどし)」などがあります。
綾織(あやおり) 織物(おりもの)の三原組織の一つで、縦糸(たていと)と緯糸(よこいと)が交差する点が斜めの方向に並ぶ織り方のことや、その方法で織った織物のことを言います。
強さにおいては平織に劣りますが、光沢と伸縮性に優れています。
「斜文織(しゃもんおり)」とも言います。
綾織物(あやおりもの) @:いろいろな模様を浮き出すように織り出した美しい絹織物(きぬおりもの)のことで、朝廷では官位が五位(ごい)以上の者に限り着ることを許されました。
A:綾織の織物のことです。
洗韋(あらいがわ) 水につけて洗っただけで、何も色を染めていないのことです。
「白韋(しらかわ)」とも言います。
洗韋威(あらいがわおどし) 韋威の一つで、洗韋を使って威したものを言います。
「あらいかわおどし」「あらかわおどし」とも言い、「白韋威(しらかわおどし)」の別名とされています。
洗い張り(あらいはり) 着物を洗う方法のことです。
糸を抜いてばらした着物を水洗いした後、個々の生地(きじ)をピンと張って姫糊を付け、シワを伸ばして乾かします。
生地(きじ)が乾いたら、再び着物として縫い合わせます。
荒味漆(あらみうるし) 漆(うるし)の木から掻(か)いて採取したそのままの漆(うるし)のことで、掻(か)いた時の木の皮やゴミなどが混ざったもののことです。
当初は乳白色(にゅうはくしょく)をしていますが、空気に触れると酸化し褐色になります。
なお、石漆と呼ばれるものもありますが、この二つが同じものなのか違うものなのかは分かりませんでした。
阿波筒(あわづつ) 阿波(あわ=徳島県)で作られていた火縄銃で、銃身(じゅうしん)が八角形で長く、赤茶色(あかちゃいろ)の台木に斜めの縞模様(しまもよう)が有るのが特徴です。
家地(いえじ) 甲冑類に用いる布(ぬの)・綿(めん)類を言います。
一般的には三枚重ねで、表面を「家表(いえおもて)」、中心を「芯地(しんじ)」、裏面を「家裏(いえうら)」と呼びます。
ほとんどの籠手臑当佩楯に使用されています。
「家衣(いえぎぬ)」とも言います。
斎垣(いがき) @:筋兜で、それぞれの間(けん=筋と筋の間)が腰巻板と接する部分に付ける金銅製の装飾用金具のことです。
猪の目透かし入八双の形式が一般的です。
兜鉢は神が宿(やど)る所とされたため、神聖な場所を囲む垣根(かきね)のように兜鉢の裾(すそ)を飾っている様子からこう呼びます。
「威垣」「囲垣」とも書き、「筋(すじ)どまり」檜垣とも言います。
A:神社など神聖な場所に巡(めぐ)らせる垣根(かきね)のことで、「瑞垣(みずがき)」「玉垣(たまがき)」とも言います。
沃懸地(いかけじ) 蒔絵地蒔きの一つで、表面に漆(うるし)を塗り、鑢(やすり)で削った金・銀などの粉(こな)を全体あるいは一部分に蒔(ま)くことを言います。
「浴掛地」とも書きます。
時代が下がると粉(こな)が細かくなり、「金地(きんじ)」金陀美「粉溜 (ふんだみ)」とも呼ばれます。
筏金(いかだがね) 籠手佩楯などに使われた座盤の一つで、の1/3か1/4の長さの物を特にこう呼びます。
長方形の物を「篠筏(しのいかだ)」、正方形の物を「角筏(かくいかだ)」、花形の物を「花筏(はないかだ)」、二つ並べた物を「雙筏(もろいかだ)」、菱形の物を「菱筏(ひしいかだ)」などと呼び、と同じように表面の形状によって「平筏(ひらいかだ)」「丸筏(まるいかだ)」「鎬筏(しのぎいかだ)」「麦藁筏(むぎわらいかだ)」などの呼び名があります。
板所の一つとされ、単に「筏(いかだ)」とも呼ばれます。
居木(いぎ) 鞍橋前輪後輪をつなぐために渡した木の部分を言います。
乗り手が実際に座る部分になります。
居木先(いぎさき) 居木の両端(りょうたん)で、前輪後輪の内側にある切り込みにはめ込む部分のことです。
威儀細(いぎぼそ) おもに浄土宗(じょうどしゅう)で使われる、簡略化された四角い小さな袈裟のことです。
短いエプロンのような形状をしており、首を通して胸の前に垂(た)らすようにつけます。
似たものに掛絡があります。
石打(いしうち) 鷹や鷲などの尾の羽根で、両端から1番目と2番目の羽根の事を言います。
端から1番目を「小石打(こいしうち)」、2番目を「大石打(おおいしうち)」とも言うようです。
丈夫で質の良い羽とされ、この羽根を矢羽に使用した矢はよく飛ぶと言われているため、特に位の高い武士が使用する高級品とされていたようです。
鳥が離着陸する際にこの羽根が地面の石を打つことからこの名が付いたと言われています。
石漆(いしうるし) 漆(うるし)の木から採取したそのままの漆(うるし)のことで、粘(ねば)りが強いので破損した器具などの修理に使われます。
「せしめうるし」とも読み、「瀬〆漆」とも書きます。
なお、荒味漆と呼ばれるものもありますが、この二つが同じものなのか違うものなのかは分かりませんでした。
石突(いしつき) @:太刀口金と反対側のの先端部分に付ける部品のことを言います。
打刀拵に相当し、「鞘尻(さやじり)」とも言います。
A:矛(ほこ)・薙刀・槍(やり)などの柄(え)で、地面に突き立てる後端(こうたん)部分を包む金具のことです。
石目地塗(いしめじぬり) 漆塗り(うるしぬり)の技法の一つで、炭(すみ)の粉や乾いた漆(うるし)を砂のように細かく砕いて粉状にしたものを漆(うるし)を塗った上に撒(ま)いて固定させ、その上からさらに漆(うるし)を塗る方法のことです。
仕上がりが岩や石の表面に似ていることからこう呼ばれます。
ザラザラした表面が艶消しになるのと、滑り止めの効果があるとされます。
板合当理(いたがったり) ネリ革や木などを「D」字のような型にしたものに受筒を差し込む穴を開け、板の両側に付いた紐(ひも)でに取り付けるようにした合当理のことです。
上等なものには鯨(くじら)の鬚(ひげ)、で包(つつ)んだものもあるようです。
板札(いたざね) 一枚の鉄やネリ革を用いて作られた札板のことを言います。
一枚板なのでを重ね威す手間(てま)がかからず、製作が簡単にできるという利点があります。
札頭の形によって、切付札一文字頭などに分けられます。
板袖(いたそで) 江戸時代中期以降に現れたとされるの様式で、一枚の延板(のべいた)で作ったものと、数段の札板を鋲留(びょうどめ)や菱綴して作られた足掻(あが)きのないものがあります。
これと似たものに、額袖瓦袖変わり袖などの様式があります。
板所(いたどころ) 小札金具廻りを除いて、甲冑を構成する主な鉄または革製の板部分のことを言い、表面は漆塗り(うるしぬり)、板の縁(ふち)は捻(ひね)り返すか切放(きりはなし)たままになっているのが一般的です。
筏金骨牌金亀甲金などが主なもので、座盤などもこう呼ばれます。
板物(いたもの) 板札を用いて作られた甲冑や部品のことを言います。
伊太羅貝(いたらがい) 本来は「板屋貝(いたやがい)」で、これが訛(なま)って「いたら」になったと言われます。
「いたや」とは板屋根の意味で、その殻(から)の形が板で葺(ふ)いた屋根を思わせることに由来しています。
一段切り(いちだんぎり) 金具廻りの各段の札板の裏を一段ごとに・布帛(ふはく)・羅紗天鵞絨などで貼り包んだもののことを言います。
南北朝時代頃から始まったと言われますが、その後裏張りが主流になると行われなくなっていきました。
一の谷形兜(いちのたになりかぶと) 兜鉢に屏風(びょうぶ)を立てたような板が付いた兜のことを言います。
「一の谷」は兵庫県にある源平合戦の古戦場で、板状の装飾がその地形のように険(けわ)しいのでこう呼ばれるそうです。
板にが付いた物などもあります。
「一の谷兜(いちのたにかぶと)」とも言います。
これと似た物に二の谷形兜があります。
一枚ジコロ(いちまいじころ) 一枚の板札だけで構成されたシコロのことを言います。
市松模様(いちまつもよう) 石畳(いしだたみ)のように正方形を並べた、いわゆるチェック柄(がら)のことです。
「市松(いちまつ)」「石畳(いしだ)」「霰(あられ)」とも言います。
一饅頭ジコロ(いちまんじゅうじころ) 鉢付板だけに饅頭ジコロのように膨(ふく)らみを持たせ、それ以下は垂れ降しにした形式のシコロのことです。
「除ジコロ(のけじころ)」とも言います。
釦漆(いっかけうるし) なやし(=かき混ぜ)を普通より長く行い、粘(ねば)りが強く乾燥が早くなるようにした漆(うるし)のことを言います。
金釦高蒔絵螺鈿などの接着用の漆(うるし)を作る素材として用いられます。
一荷櫃(いっかびつ) 二個一組になった鎧櫃のことです。
大小一組(だいしょうひとくみ)の場合は、大きい方にを入れ、小さい方に兜とその他の小具足類を入れるとされます。
運ぶ時は箱の両側に付いている角型の金具を上に起こし、そこに棒を通して運んだようです。
また、箱に上から被せるカバーが付いている物もあります。
五星赤韋(いつつぼしあかがわ) 小縁韋として使われるで、赤地に五星紋を白く染め抜いたものを言います。
「ごせいあかがわ」とも読み、「紅五星韋(くれないいつつぼしがわ/べにのいつつぼしがわ)」とも言うようです。
五星紋(いつつぼしもん) 真ん中の点とその上下左右に一つずつ点を置いた五つの点から成る文様のことです。
「五星文」とも書きます。
射手ジコロ(いてじころ) 当世具足に見られる、吹返の付いていないシコロのことです。
弓の弦(つる)が引っ掛からないようにするためになくしたとも、あまり必要がないので省(はぶ)いたとも言われています。
糸威(いとおどし) 威すのに威糸を用いる手法のことです。
「絲威」とも書きます。
猪目(いのめ) ハート形を逆さまにした形のことで、猪(いのしし)の目に似ているのが名前の由来だとされています。
一般的にはこの形をした穴のことで、建築物(けんちくぶつ)や工芸品(こうげいひん)の装飾に用いられました。
甲冑では水走穴の他、前立などに見ることができます。
「猪の目」とも書き、「猪の目透かし(いのめすかし)」とも言います。
射向(いむけ) 左側のことを言います。
弓を射る時、敵に向けるのが体の左側であることから付いた名称です。
また、弓を持つ方の手と言う意味で「弓手(ゆんで)」とも言い、弓を押出(おしだ)すところから「押手(おしで)」とも言います。
反対側は馬手と言います。
射向威(いむけおどし) 越中流具足の特徴の一つで、射向草摺のみを金または銀で磨(みが)き、紅糸(くれないいと)などで威す技法を言います。
槍(やり)を構えたり弓を射る時に敵に向ける左側を尊重し、彩(いろど)りを添(そ)える目的で行われたのではないかと考えられ、別名を「小桜(こざくら)」とも言うそうです。
射向草摺(いむけのくさずり) 射向側の草摺のことを言います。
大鎧では太刀掛板(たちかけのいた)」とも言う左側の一枚、腹当などで草摺が三枚の場合には左端の一枚、その他の場合では引合せから前方に数えてだいたい四〜五間目の草摺を言います。
「弓手草摺(ゆんでのくさずり)」とも言います。
なお、反対側は馬手草摺と言います。
射向袖(いむけのそで) @:射向側ののことを言います。
大鎧大袖などでは、矢戦(やいくさ)の際に盾(たて)の役割を果たしていたようです。
「弓手の袖(ゆんでのそで)」とも言い、反対側は馬手袖と言います。
A:特に当世具足で仕寄(しよ)せ(=攻城戦)の際に盾として臨時に使われたと考えられる大型ののことです。
敵に向ける射向側だけに着けたようですが、馬手袖と一組になっている物もあります。
「袖楯(そでだて)」とも言い、持ち手の付いた「大持盾(おおもちだて)」と言う形式もあったようです。
一文字頭(いちもんじがしら) 板札札頭がまっすぐになっているものの事を言います。
鉄製の場合は縁(ふち)を捻(ひね)り返し、強度を持たせるとともに体への当たりをやわらげたり、ネリ革の場合は下に細い鉄などを入れて変形を防ぐようにしたものなどがあります。
「直頭(すぐがしら)」とも言います。
射形籠手(いなりごて) 江戸時代の籠手の一形式で、臂(ひじ)を軽く曲げたような「く」の字型の状態に仕立てた物のことを言います。
弓を射る際に都合が良いとされます。
「居形籠手」「稲荷籠手」とも書きます。
伊予札(いよざね) 一般的なは、同士を1/2〜2/3くらい重ねて札板を構成するのに対し、端(はじ)をわずかに重ねて札板を構成する形式のを言います。
下縅威しのための穴は縦に二列開けられています。
製作が簡略化できるので流行し、古くは鉄製でしたが近世はネリ革製が多くなりました。
伊予(いよ=愛媛県)で作られたのが名前の由来と言われ、札頭の形も小札状・半円状・半円を二つ並べた「碁石頭(ごいしがしら)」・四半円を二つ並べて「M」字型のように見える矢筈頭(やはずがしら)」小札札頭を二つから四つ並べたような「小札頭(こざねがしら)」などがあります。
入総角(いりあげまき) 総角を結んだ時に、結び目が「入(い)る」の字になるものを言います。
「入型(いりがた)」とも言い、これと逆の結びは出総角と言います。
入八双(いりはっそう) 出八双の逆で、ジグソーパズルの凹のように中央がくぼんだ形をいいます。
中央がくぼんだ形が魚の尾鰭(おびれ)に似ているので「鯖の尾(さばのお)」とも言われます。
色々威(いろいろおどし) 色目の一つで、通常、三色以上の威糸を使って威した物を指します。
色の組合せには規則性がある場合とそうでない場合があります。
彩漆(いろうるし) 漆(うるし)に種々の顔料(がんりょう=絵具)を加えて着色した物を言います。
代表的な物には黒漆朱漆黄漆などがあります。
色目(いろめ) 色の組み合わせのことです。
印籠(いんろう) 提げ物の一つで、もともとは印章(いんしょう=はんこ)と印肉(いんにく=インク)を携帯するための入れ物でしたが、のちには薬(くすり)を入れるようになりました。
木製または金属製で、全体は平たい楕円の柱状になっており、それが3〜5段くらいの輪切りで段に分割できるようになっています。
各段は両端(りょうはじ)に通した紐(ひも)で連結されているので、バラバラに分離してしまう事はありません。
通常、紐(ひも)の端には根付がついています。
蒔絵螺鈿を施したものもあります。
なお、現代の機械設計などで凹凸(おうとつ)状の部品を重ね合わせて位置を決めることを指す「インロー」の語源にもなっています。
印籠蓋(いんろうぶた) 鎧櫃に蓋(ふた)を被せる時、口の部分に薬籠が付いていて鎧櫃と蓋(ふた)の位置を合わせる形式の物を言います。
薬籠蓋(やろうぶた)」とも言います。
鎧櫃側に薬籠が付いているものを「本印籠(ほんいんろう)」と言います。
ヴィシュヌ神(ヴィしゅぬしん) ヒンドゥー教の神様で、もともとは太陽を神格化した神様でしたが、後にブラフマー神シヴァ神とともに三大神の一人とされました。
ブラフマー神が宇宙を創造し、この神が維持し、シヴァ神が破壊するとされ、海洋と縁の深い神様とも言われているようです。
天・空・地の三界(さんかい)を三歩で歩くとして讃えられ、ガルーダが乗り物だと言われています。
受緒(うけお) 冠板裏側前方に設けられた緒(お)のことで、肩上前方の茱萸金物四方手結びとし、が後ろにめくれるのを防ぎます。
「袖付の前緒(そでつけのまえお)」とも言います。
浮張(うけばり) 兜鉢の裏側に半球状の、または百重刺の布を浮かして張ったものを言います。
頭が直接兜に触れないようにするとともに、兜鉢との間に出来た空間が衝撃を和らげたり換気の役目をはたします。
室町時代以降は必ず用いられ、取り外しの出来るものや力韋を付けたものなどがあります。
また、兜の作者の銘(めい=サイン)を見られるように切り込みを入れたものもあり、この切り込みを「銘見の穴(めいみのあな)」と言います。
「受張」とも書き、「頭受(ずうけ)」「頭入(ずいり)」とも言います。
後胴(うしろどう) 古くは鎧やの後部のことを指しましたが、二枚胴が現れてからは後側ののことを指すようになりました。
後張出(うしろはりだし) 星兜兜鉢を矧(は)ぎ止める方式の一つです。
平安時代末期から鎌倉時代前期頃までにみられる脇張出とは異なり、文字通り兜鉢の後正中張出板が有る形式です。
その張出板の両端を起点として左右それぞれ前正中に向かって矧板(はぎいた)を上重ねにして張っていく方式で、鎌倉時代前期頃に発生し、中期以降はこの形式が標準となったようです。
なお兜鉢正中には張止板を重ねます。
薄板貝(うすいたがい) 螺鈿に用いる青貝の中で、特に殻(から)を両面から削って薄い板状にした物を指します。
薄金(うすかね) 源氏八領の内の一領で、源氏の棟梁(とうりょう=一族の長)のみが着用を許された鎧とされます。
全体を薄い鉄のだけを使って作った鎧でのことです。
源氏八領以外にも、同じ名称が付いた鎧がいくつか存在しているようです。
保元の乱では源為義(みなもとためよし)が着用したとされ、愛知県豊田市の猿投神社(さなげじんじゃ)に伝来する樫鳥威の鎧がこの薄金であるとの説もあるようですが、この鎧がその後どうなったかについてはっきりしたことは不明です。
薄墨毛(うすずみげ) 馬の毛色の一つで、文字通り薄い墨(すみ)の色から灰褐色(はいかっしょく)の毛色を言います。
葦毛河原毛粕毛と良く似ていますが、毛色を発生させる遺伝子が異なると言われているようです。
薄茶(うすちゃ) @:薄い茶色(ブラウン)のことです。
A:文字通り薄く入れた抹茶のことです。
濃茶と違い、お茶を入れることを「立てる(たてる)」と言い、一人で一椀(ひとわん)のお茶を頂くのが基本です。
「お薄(おうす)」とも言います。
鶉巻(うずまき) 熏韋の一種で、太い竹や木などの筒状(つつじょう)の物に白いを縄(なわ)で巻き付け、それを藁(わら)と煙草(たばこ)などを燃やした煙で燻(くすぶ)らせて色やうねり模様を付ける技法を言います。
鶉(うずら)の羽のような斑点(はんてん)のある、木目調(もくめちょう)の模様であることからこう呼ばれますが、うねり模様の状態、茶色に黒白の斑点(はんてん)など、燻(いぶ)し方によって違いがあるようです。
打飼袋(うちがいぶくろ) @:鷹(たか)、犬、馬などの餌(えさ)を入れる容器のことで、普通は布(ぬの)製の袋を用います。
ただし鷹(たか)は餌(えさ)が肉なので竹製の籠(かご)を用います。
A:旅人が荷物を入れて運んだり、戦(いくさ)の際、食料や必要品を詰めて肩にかけたり腰に結んだりした筒状(つつじょう)の細長い袋のことを言います。
一食分の食糧を入れ、それを点々と結(むす)んで肩にかけたものを特に「数珠打飼(じゅずうちがい)」と言います。
「うちがえぶくろ」とも読みます。
打刀(うちがたな) 刀(かたな)の様式の一つです。
一般的には長さが70cm前後で、腰(こし)の帯(おび)に差し込んで着用する形式のものを言います。
室町時代中期頃から、それまでの太刀に代わって多く用いられるようになりました。
刀(かたな)の先の方が反っており、文字通り「抜(ぬ)き打ち」に便利な形状となっています。
室町時代後期頃までは太刀と同じように刃が下を向くように着用していたようですが、江戸時代になると刃が上を向く状態で着用し、大小の二本を持つことが定着しました。
天神差し閂差し落し差しなどの差し方があります。
打刀拵(うちがたなこしらえ) 打刀に使われる拵えのことで、目貫鯉口切羽ハバキ栗形瓦金返角探金小柄下げ緒等を指します。
打出し(うちだし) 鉄地(てつじ)の裏側より意匠(いしょう=デザイン)をおおまかに叩(たた)き出し、表側から細部を彫り上げていく技法のことです。
意匠(いしょう=デザイン)としては文字・神仏・好みの模様などがあり、時には象眼を施した物もあります。
「鍛造(たんぞう)」とも言います。
内張(うちばり) @:兜鉢の裏側に張るや布などを言い、浮張裏張があります。
A:威糸の伸縮を防いで足掻(あが)きを無くすためや、の引っかかりを防ぎ着用しやすくするためにの裏側などに天鵞絨・布帛(ふはく)などを張りとめたものを言います。
裏張とも言います。
B:内側の金具廻りから発手まで、馬の・布帛(ふはく)などを貼って足掻(あが)きを無くしたもののことです。
の場合は特に「裏韋(うらがわ)」とも言います。
C:浮張裏張を張ることを言います。
内眉庇(うちまびさし) 直眉庇卸眉庇などのさらに内側に設けた眉庇のことを言います。
多くの場合、眉刳が施されています。
変わり兜などに用いられる事も多いようです。
打眉(うちまゆ) 眉庇を額(ひたい)に見立て、眉(まゆ)の形を打出したり、眉(まゆ)形の鉄を貼り付けたり、木屎を眉(まゆ)形に盛り上げたりした物のことです。
見上の表側に有ることから「見上眉(みあげまゆ)」とも呼ばれ、室町時代末期頃から行われたようです。
このほかに見上皺と呼ばれる物もあります。
打廻籠手(うちまわしごて) 腕の外側だけでなく内側まで全面を鎖(くさり)で覆った形式の籠手のことです。
総鎖とも言います。
また、脇(わき)のところに脇曳状の鎖(くさり)を縫い付けた物もこう呼びます。
このほかに半籠手と呼ばれる形式があります。
空穂(うつぼ) 矢を収納・運搬するための筒状の容器のことで、普通は右腰につけます。
竹や葛藤を編んだ物やネリ革に漆(うるし)をかけた物があり、逆頬空穂土俵空穂と呼ばれる物もあります。
雨や湿気などによって矢が傷んだり、矢羽が傷んだりするのを防ぐために用いられました。
ほど沢山の矢を盛(も)ることが出来ないので、上差の矢がある場合は上に置きます。
「靫」とも書き、「うつお」とも言います。
空穂台を使えば弓とともに運ぶことが出来ます。
矢を入れる容器には他に矢籠などがあります。
空穂台(うつぼだい) 二張(ふたはり=二本)の弓と空穂を一緒に持ち運び出来るようにした器具のことです。
畦目綴(うなめとじ) 「胸目(むなめ)」とも言い、「無名目(むなめ)」「武奈目(むなめ)」とも書きます。
を連結するときに、表・裏・表と交互に横一直線で綴(と)じていく手法のことを言いい、特に
シコロ草摺栴檀板などの菱縫板に装飾として施されます。
その場合、耳糸と同じ柄(がら)を用いるのが原則のようです。
古くは菱綴と共に紅猿鞣や紅糸(くれないいと)を用いました。
また、実際には綴(と)じずに朱漆を用いてあたかも綴(と)じているように描(えが)いたものもあります。
この他に菱綴と呼ばれる手法もあります。
卯花威(うのはなおどし) 卯花(うのはな)とは、アジサイ科の落葉低木である空木(うつぎ)の白い花のことを言います。
白い威毛を用いて威す「白威(しろおどし)」の別名と言われています。
姥頬(うばぼお) 文字通り姥(うば=おばあさん)を模した目下頬です。
美女頬に比べて頬(ほほ)が痩(や)せ、顎(あご)が細いものとされます。
産籠手(うぶごて) 座盤や鎖(くさり)などの金属をつけていない、家地だけの籠手のことです。
馬標(うまじるし) 大将の所在を示すために立てる目印のことで、大将の馬の側(そば)にあるのでこう呼ばれます。
他人と区別がつきやすいように考案した意匠(いしょう=デザイン)の旗・幟(のぼり)・その他いろいろな形のものを竿(さお)に付けて用いました。
大型のものを特に「大馬験(おおうまじるし)」、背中の指物にも用いられるくらいのものを「小馬験(こうまじるし)」と言います。
「馬験」「馬印」とも書き、「馬幟(うまのぼり)」とも言います。
馬廻り(うままわり) 戦場で大将の乗った馬の廻(まわ)りを守る騎馬武者のことを言います。
馬鎧(うまよろい) 「馬甲」とも書き、文字通り馬に着せる鎧のことで、から前に付ける「胸甲(むなよろい)」と後に付ける「尻甲(しりよろい)」で構成されます。
金箔を押した2〜3cm角ほどのネリ革または金属製の板や、鎖(くさり)などを家地に縫いつけてつくられています。
馬面とともに用いることが多く、さらに鳥の羽や動物の毛皮を上にかぶせて装飾する場合もあったようです。
末重籐弓(うらしげとうのゆみ) 日本の弓は木と竹をで貼り合わせ、固定の為に上から糸を巻いて漆で固め、更に補強と装飾を兼ねてを巻き付けますが、この巻き付けがユヅカより上を重籐弓形式、下を所籐弓形式とした弓の事を言います。
裏張(うらばり) @:兜鉢の裏側にを浮かせず直接貼ったものを言い、浮張より古い時代の手法です。
A:内張のことです。
「裏貼」とも書きます。
裏目貫(うらめぬき) 差裏側の目貫のことです。
寄(よ)りの位置に付けられ、その意匠(いしょう=デザイン)が動物なら頭、植物なら根が側を向くように付けるのが決まりとされ、これが逆のものは「逃げ目貫(にげめぬき)」と言われて嫌われたようです。
反対側は表目貫と言います。
瓜形兜(うりなりかぶと) 突パイのように兜鉢を盛り上げていますが、天辺を尖(とが)らせずに瓜(うり)の端(はし)のような丸みを持たせた兜のことです。
「長瓜形(ながうりなり)」「冬瓜形(とうがんなり/とうがなり)」と呼ばれる場合もあるようです。
潤漆(うるみうるし) いろいろな作り方があるようですが、一般的には黒漆朱漆弁柄を混ぜ合わせて作った漆(うるし)のことを言います。
混ぜ合わせの比率は特に決まっていないため、焦(こ)げ茶色から茶色っぽい朱色(しゅいろ)まで多くの色があるようです。
「茶漆(ちゃうるし)」と呼ばれる漆(うるし)はこの漆(うるし)の別名ではないかと思われます。
鱗具足(うろこぐそく) 「魚鱗具足(ぎょりんぐそく)」「天狗具足(てんぐぐそく)」「根来具足(ねごろぐそく)」とも言い、ネリ革や鉄でできた小さな魚鱗札を使った具足のことを言います。
トルコなど中近東(ちゅうきんとう)の鎧に影響を受けて作られたとも言われているようです。
似た物に船手具足があります。
上帯(うわおび) @:甲冑を着用した後に、発手辺りに締める帯のことです。
ここに打刀を差したりします。
A:引合緒のことです。
上薬(うわぐすり) 火縄銃などの筒(つつ)の内部に入れて、玉を発射させるための火薬のことです。
口薬より粒(つぶ)が粗(あら)い黒色火薬を用いました。
「装薬(そうやく)」「胴薬(どうぐすり)」「玉薬(たまぐすり)」とも言います。
上差(うわざし) に矢を盛(も)る時に表側に一・二筋(すじ=本)差しそえた、中差と形式の異なる矢を言います。
通常、雁股の付いた鏑矢の大きな矢が用いられたようです。
身分のある者を打ち取るのはこの矢でなければならず、そのためには所有者の生国(しょうごく=出身地)と名前を記し、打ち取った時の証拠としたようです。
「上矢(うわや)」とも言います。
上髭(うわひげ) 目下頬で鼻の下、唇(くちびる)の上に植えられた髭のことを言います。
纓(えい) 冠形兜で冠(かんむり)の後ろから張り出した板状の装飾を言います。
唐冠形兜の場合は翼(つばさ)のように水平方向の左右に張り出しており、「展角(てんかく)」と言います。
和冠形兜の場合は冠(かんむり)に対して垂直方向に取り付けられることが多いようです。
上方向に張り出したものは「立纓(りゅうえい)」と言い、その他にも「垂纓(すいえい/たれえい)」「巻纓(かんえい/けんえい)」「細纓(さいえい/ほそえい)」などがあります。
その人の身分によって使い分けていたようです。
絵漆(えうるし) 漆(うるし)2に対して、熱した弁柄を1の割合で混ぜ、それを漉(こ)したもののことを言います。
絵韋(えがわ) 鹿のに華麗(かれい)な文様などを染めた物のことで、「画韋」とも書きます。
越中籠手(えっちゅうごて) 越中流具足で多く用いられた籠手で、鎖(くさり)とを最小限に用いた実用的な物を言います。
格子(こうし)状に組んだ鎖(くさり)の間にを立てた小さなを入れ込むのが一般的です。
越中ジコロ(えっちゅうじころ) 小型で肩摺板が古式のように直線で、裾板笹縁を施したシコロのことです。
シコロの板は包みの漆(うるし)塗り板札毛引威とする場合が多い様です。
普通、越中頭形兜と組で用いられるようです。
越中頭形兜(えっちゅうずなりかぶと) 越中流具足で多く用いられた兜で、「越中形兜(えっちゅうなりかぶと)」とも言います。
五枚張頭形兜で、天辺を構成する板が、正面で眉庇の上に重なり、ラッパの口の様に湾曲した眉庇は端が水平になっているのが特徴です。
またシコロは通常、越中ジコロと呼ばれる物が用いられ、吹返は付いていないことが多いようです。
「越中」の名称は細川越中守忠興(ほそかわえっちゅうのかみただおき)とその家中で好んで使われたことに由来しますが、本形式の兜はそれ以前から既に存在していたようです。
越中臑当(えっちゅうすねあて) 越中流具足で多く用いられた臑当で、の間の三・四箇所だけを鎖(くさり)で繋(つな)ぎ、立挙家地の付いていない物を言います。
越中佩楯(えっちゅうはいだて) 越中流具足で多く用いられた佩楯で、格子(こうし)状に組んだ鎖(くさり)の間にを立てた小さなを散らした、非常に簡略化された実用的な物を言います。
越中頬(えっちゅうぼお) @:鑢目(やすりめ)と呼ばれるライン状の溝(みぞ)を全体に彫り込んだ目下頬のことで、細川越中守忠興(ほそかわえっちゅうのかみただおき)が好んで用いた形式とされます。
「鑢目頬(やすりめぼお)」とも言います。
A:越中流具足で多く用いられた半頬とされていますが、これは本来加賀頬と呼ばれるものが誤(あやま)って伝えられたようです。
越中流具足(えっちゅうりゅうぐそく) 細川越中守忠興(ほそかわえっちゅうのかみただおき)が好んで用いた具足とされ、「越中具足(えっちゅうぐそく)」「越中流(えっちゅうりゅう)」とも言われます。
また忠興(ただおき)の歌人(かじん=和歌を作る人)としての名前である「三斎宗立(さんさいそうりゅう)」から、「三斎流具足(さんさいりゅぐそく)」「三斎流(さんさいりゅう)」と呼ぶ場合もあります。
兜は越中頭形兜越中ジコロで、原則として射手ジコロ黒熊引廻しを用いることが多いようです。
その他は越中頬越中籠手越中佩楯越中臑当によって構成され、軽量で動きやすさ重点を置いた最小限の防御構成のためは使用せず、包み漆(うるし)塗りのを用いた丸胴が一般的です。
その他、シコロ裾板笹縁がある、三具などには青漆もよく用いられる、射向威にしたものが見られる、槍(やり)を突き込まれ難くする工夫として射向草摺を含む二間の草摺裾板威して連結したものもある、などが特徴です。
細川家中はもちろん他家でもこの様式を真似ることが多く、非常に流行したようです。
箙(えびら) 矢を入れる容器の一つで、平安時代頃から使われました。
を差す「方立(ほうだて)」と呼ばれる箱状の部分と、をよせかける「端手(はたて)」と呼ばれる枠(わく)で構成され、端手(はたて)につけた紐(ひも)で右腰に固定します。
中に盛(も)る矢の数は普通24筋(すじ=本)とされ、上差中差の矢に分けられます。
逆頬箙のように様々な形式があります。
ちなみに鎌倉時代には方立部分に引き出しの付いた物もあり、この引き出しの中に「矢立の硯(やたてのすずり)」と呼ばれる小型の硯(すずり)と筆を入れて携帯していたことから、後に携帯式筆記用具一式を矢立(やたて)と呼ぶようになったそうです。
矢を入れる容器には他に空穂矢籠などがあります。
烏帽子(えぼし) 烏(からす)のように黒い色をした袋状の帽子(ぼうし)のことで、成人した男子が使用しました。
麻(あさ)や絹(きぬ)製、漆(うるし)で塗り固めた紙製などがあります。
被(かぶ)る人の職業・階級・年齢などの別によって形と塗りが異なり、立烏帽子風折烏帽子「侍烏帽子(さむらいえぼし)」「引立烏帽子(ひきたてえぼし)」「揉烏帽子(もみえぼし)」「萎烏帽子(なええぼし)」などの区別が生じました。
烏帽子形兜(えぼしなりかぶと) 変わり兜の一種で、侍烏帽子を象った物を言います。
烏帽子の形状が長い物を特に「長烏帽子形兜(ながえぼしなりかぶと)」と言います。
笑頬(えみぼお) 口元(くちもと)に笑(え)みをたたえたり、大笑(おおわら)いしている表情の目下頬です。
「大黒頬(だいこくぼお)」とも言います。
襟廻(えりまわし) 「立襟(たてえり)」「襟裏(えりうら)」などとも呼ばれ、肩上の内側から背の押付板辺りにかけて、首廻りを立襟(たてえり)状にした防具です。
首の左右と後を一続きに囲(かこ)む立襟(たてえり)状の物と、左・右・後を分割した三ツ割(みつわり)状の二種類があります。
また、肩当小鰭と共に縫い付けた形式もあるようです。
襟輪(えりわ) 首の周囲に巻(ま)く防具で、の無い曲輪の形状をしています。
曲輪は首の後ろで紐(ひも)を結んで付けるのに対して、こちらは釦(ぼたん)止めするようになっています。
猿猴(えんこう) @:猿(さる)のことですが、特に手長猿(てながざる)のことを指すようです。
この猿(さる)が、水に映(うつ)った月を取ろうと手を伸ばして水に落ちたと言う話から、自分の能力以上のことをして失敗することを「猿猴捉月(えんこうそくげつ)」または「猿候補月(えんこうほげつ)」と言います。
「猿猴捉月(えんこうそくげつ)」の図は意匠(いしょう=デザイン)として蒔絵で描(えが)かれたものがあるほか、墨絵(すみえ)などの題材としても描(えが)かれました。
他に愁猴があります。
A:中国・四国地方に伝わる、河童(かっぱ)に似た妖怪のことです。
燕尾形兜(えんびなりかぶと) 燕(つばめ)の尾(お)のような「V」字型をした変わり兜のことを言います。
これと似た物に鯖尾形兜があり、両者を明確に区別することは難しいとされますが、「V」字型の切り込みが深くて尾が立ち上がっている物を燕尾(えんび)、切り込みが浅くて尾が左右に開いている物を鯖尾(さばお)とする説もあるようです。
御家頬(おいえぼお) 皺(ひげ)がなく穏(おだ)やかな表情の目下頬を言います。
老懸(おいかけ) 日本の武官(ぶかん)の正装(せいそう)で、冠(かんむり)の左右に取り付けた飾りのことを言います。
馬の尾の毛を束(たば)ねて扇状(おうぎじょう)にし、扇(おうぎ)の開いている側を前に向けて取り付けます。
髪が薄くなって髷(まげ)が結(ゆ)えないために冠(かんむり)を頭に固定できなくなった老人が、冠(かんむり)が落ちないように支えるために用いたのが名前の由来と言われますが、後には老人でなくても位(くらい)が五位(ごい)以上の武官(ぶかん)の証(あか)しとして用いられたようです。
「糸偏(いとへん)に委」の一字で書く場合もあり、「ほおすけ」「こゆるぎ」とも言うようです。
負苞(おいづど) 麻(あさ)や柿渋(かきしぶ)を塗った紙の紐(ひも)を網目(あみめ)に編んで作った袋のことで、中に食べ物や小物を入れて背負うのに使われました。
腰につけるものは「腰苞(こしづと)」と言います。
おいね刺し(おいねざし) 指物を斜めに差すことを言います。
右斜めだと腰(こし)の刀(かたな)に当たってしまうため、左斜めに差したようです。
黄橙色(おうとうしょく) 「黄(き)みを帯(お)びた赤色(あかいろ)」とされる色です。
「きだいいだいいろ」とも読みます。
大袖(おおそで) 文字通り広い面先を持ったのことで、通常は大鎧に附属します。
馬上での矢戦(やいくさ)などでは体を護る盾(たて)として使われていたようです。
大立物(おおたてもの) 立物のなかでも特に巨大な物を言います。
大指(おおゆび) 籠手手甲で、親指の上を守る板のことを言います。
大鎧(おおよろい) 平安時代から室町時代頃まで作成された鎧の形式で、甲冑の様式の中でも最も大型で堂々としているのでこう呼ばれます。
「式正の鎧(しきしょうのよろい)」「式の鎧(しきのよろい)」「着背長(きせなが)」「著長(きせなが)」とも呼ばれます。
騎馬(きば)での矢戦(やいくさ)に適応して作られた鎧で、一般的な形式は草摺前草摺引敷草摺馬手草摺射向草摺の四間、右側は独立した脇楯とし、左側から正面にかけて弦走韋を貼り、栴檀板鳩尾板を備え、大袖、兜は星兜となっています。
大鎧の形式は室町時代以降衰退しましたが、江戸時代になると復古調として再び作成されるようになります。
御貸具足(おかしぐそく) 主人から配下に貸し出された具足のことを言います。
役職によって意匠(いしょう=デザイン)を統一した甲冑を近習などに貸し出す「御小姓具足(おこしょうぐそく)」などと呼ばれるものと、身分が低く自分で甲冑を用意することが難しい者に貸し出した量産品の具足があります。
量産品の具足は通常、簡単な桶側胴仏胴素懸威草摺を五間ほど備え、臑当、さらに佩楯は付いていないことが多かったかったようです。
籠手手甲の無い物が多く、兜は簡単な頭形兜桃形兜烏帽子形兜畳兜陣笠などで構成されます。
兜やの目立つ所に合印を描き、背に同じ印を描いた指物を装備する場合が多いようです。
このような量産品の具足は足軽具足(あしがるぐそく)」「徒歩具足(かちぐそく)」「番具足(ばんぐそく)」とも言います。
また、借りる側からの視点で「御借具足(おかりぐそく)」と言う場合もあるようです。
置上げ(おきあげ) 絵の具や胡粉を盛(も)って、絵・蒔絵・彫刻などの模様を地の部分よりも高くすることを言います。
「起揚げ」とも書きます。
置袖(おきそで) 桃山時代末期〜江戸時代初期に実用化されたと考えられる小型のの事です。
通常、上下同じ幅で全体をゆるく湾曲(わんきょく)させ、冠板はほとんど設けず、代わりに矢留冠が見られます。
肩上への取り付けもそれまでの緒(お)で結びとめる方式ではなく、矢留冠裏左右の端(はし)に輪(わ)を設け、その輪(わ)を籠手掛の管に通して取り付ける方式となっています。
またの下方に「仕付けの(しつけのこはぜ)」を設け籠手に留(と)め、が跳ね上がるのを防ぐ形式のものなどもあります。
置手拭形兜(おきてぬぐいなりかぶと) 雑賀鉢の一形態とされ、幅の広い上板を兜鉢天辺中央で左右から矧(は)ぎ止めた形が、あたかも手拭(てぬぐい)を畳(たた)んで頭の上に置いたような形に見えることからこう呼ばれます。
通常は五枚張で、矧(は)ぎ止めた上板の後方は兜鉢から張り出します。
翁頬(おきなぼお) 文字通り翁(おきな=おじいさん)を模した、皺(しわ)があって上髭下髭のある面頬のことです。
白い眉を付けた総面もあります。
置目(おきめ) @:美濃紙などに書いた下絵(したえ)を、蒔絵を施す場所に写すことを言います。
まず蒔絵の下絵(したえ)となる絵柄(えがら)を墨(すみ)で紙に写し取り、その紙を裏返して絵漆で絵柄(えがら)の輪郭線をなぞります。
次に絵漆の面を下にしてこの紙を蒔絵を施したい場所に貼(は)り、紙の上から指やへらでこすって絵柄(えがら)を写します。
最後に、写した絵柄(えがら)の上を消し粉砥の粉を真綿(まわた)につけたもので摺(す)り、絵柄(えがら)をはっきりと浮き出させます。
臆病金(おくびょうがね) 南北朝時代以降の立挙が付いた臑当で、臑(すね)の背面である「ふくらはぎ」を護るために用いた鉄板のことです。
別名を「膕金(よぼろがね)」とも言います。
武士にとって後を守る必要があるということは、「敵に背を向ける」場合であることから「臆病(おくびょう)」の名称が付いたようです。
臆病板(おくびょうのいた) 室町時代に腹巻を完全武装化するために背中の引合せの隙間をふさぐ目的と、を付けた時に背の総角が無いのを補う目的で別に設けられた板のことを言います。
古くは押付板総角の台座のみの板でしたが、次第に草摺まで含んだ長さの板となりました。
「背板(せいた)」とも言います。
武士にとって後を守る必要があるということは、「敵に背を向ける」場合であることから「臆病(おくびょう)」の名称が付いたようです。
桶側胴(おけがわどう) 鉄やネリ革を矧(は)ぎ留めして作ったのことで、二枚胴五枚胴の形式があります。
矧ぎ留めの方法には縦矧横矧があり、留める方法によって鋲綴胴菱綴胴胸目綴胴などに分けられます。
さらに、桶側仏胴包仏胴と呼ばれる形式などもあり、当世具足の中ではもっとも数多い作例が残されています。
桶側仏胴(おけがわほとけどう) 「塗上仏胴(ぬりあげほとけどう)」「塗籠仏胴(ぬりごめほとけどう)」ともいい、「塗込仏胴」とも書きます。
桶側胴の表面に漆(うるし)を厚く塗って平らにし、あたかも一枚板の仏胴のように見せたものを言います。
さらに、見た目の単調さを無くすために菱綴畦目綴としたものもあります。
似たものに包仏胴と呼ばれる形式もあります。
押付板(おしつけのいた) @:の背に当たる金具廻りの部分です。
一般に覆輪した鉄やネリ革の板で作られ、ここに肩上が付けられます。
当世具足では「望光板(ぼうこうのいた)」「押付の金具(おしつけのかなぐ)」「後の金具(うしろのかなぐ)」肩上の横根(わたがみのよこね)」肩上の横板(わたがみのよこいた)」肩上の附板(わたがみのつけいた)」などとも言うようです。
ここに三日月板が付いたものもあります。
A:兜鉢の後正面の板のことを言います。
小田籠手(おだごて) 瓢籠手の別名とされます。
常陸(ひたち=茨城県)の小田家で作られた、あるいは流行したのが名前の由来だと言われています。
緒便(おだより) 面頬の頬(ほほ)や顎(あご)下にあって、忍緒を締めて固定する時に使う部分を言いいます。
頬(ほほ)の部分にあって「L」字型に折れた釘(くぎ)状のものを「緒便釘(おだよりのくぎ)」「緒便折釘(おだよりのおれくぎ)」と言い、環(わ)になっているものを「緒便鐶(おだよりのかん)」、細長い一枚の板になっているものは「緒便板(おだよりのいた)」「竪緒便(たておだより)」「緒便金(おだよりがね)」もしくは矢を止めるという意味で「矢留板(やどまりのいた)」「矢止め(やどめ)」「槍止め(やりどめ)」太刀除(たちよけ)」などと呼びます。
顎(あご)の部分にはまっすぐな釘(くぎ)状のものやイボ状の「緒便イボ(おだよりのいぼ)」などがあったほか、汗流しの穴に管(くだ)をつけたものもあったようです。
威(おどし)・威(おど)し 威毛を上下に連結することで、紐(ひも)をの穴に通す「緒通し(おどおし)」が語源と言われます。
連結手法により様々な名称があります。
「縅(おどし)」とも書きます。
威糸(おどしいと) 威すのに用いる糸のことで、絹糸(きぬいと)・麻(あさ)・木綿(もめん)などの組紐が使われました。
模様や色によって様々な種類があります。
威毛(おどしげ) 威すのに用いる紐(ひも)のことを言います。
紐(ひも)が規則正しく並んでいる様子が鳥獣(ちょうじゅう)の羽毛(うもう)に似ていることから「毛」の名称が使われているそうです。
紐(ひも)の素材には「糸」「織物(おりもの)」の三種類があり、これらの素材を用いて威す手法をそれぞれ糸威韋威綾威と呼びます。
落し差し(おとしざし) 打刀の差し方の一つで、刀(かたな)が地面に対して垂直に近くなるくらい縦(たて)にした差し方のことを言います。
脱藩者(だっぱんしゃ)や浪人者(ろうにんもの)などいつ命を狙われるか分からない者が、いつでも刀(かたな)を抜けるよう常に鯉口を切っておくために、刀(かたな)がから滑(すべ)り出ないようにした差し方と言われています。
緒留革(おとめがわ) 小猿革に付けられた筒状(つつじょう)の革のことで、佩楯の左右の腰紐(こしひも)を後ろに廻(まわ)し前にとってこの筒(つつ)を通して結び、佩楯が弛(ゆる)むのを防ぐために使われていたようです。
「帯通緒(おびどおしのお)」「帯通(おびどおし)」「前締(まえじめ)」とも言います。
引上綰と呼ばれる形式もあるようです。
鬼瓦(おにがわら) 屋根(やね)の合わせ目である「棟(むね)」の端(はし)に置く装飾用の瓦(かわら)のことです。
鬼の顔や姿を模(かたど)ったものも、そうでない文様だけのものもこう呼ぶようです。
鬼会(おにだまり) 江戸時代の用語で、当世具足胸板のことです。
「胸のたすけの板」「胸の金具」とも言うようです。
御歯黒(おはぐろ) @:女性が歯を黒く染めることを言います。
鉄漿に飴(あめ)や、付きをよくするために五倍子の粉(こな)を入れ、筆で歯に塗りました。
鉄漿とも書き、鉄漿付(かねつ)け」五倍子水(ふしみず)」とも言います。
A:鉄漿のことを言います。
帯三懸(おびさんがい) 飾りのない、単純な帯状(おびじょう)の三懸のことを言います。
帯執(おびとり) 足の緒の上に付き、佩緒を通す部分のことを言います。
「帯取」とも書きます。
帯径(おびみち) 馬の前脚(まえあし)のすぐ後ろ、人間でいうと脇(わき)の下にあたる部分のことをいいます。
ここに腹帯が取り付けられることからこの名称となったようです。
於女里(おめり) 金具廻りの下方や佩楯など見られる、紙・竹ヒゴ・木屎などを芯(しん)にして作られた土手状(どてじょう)の盛り上がり部分を言います。
金具廻りの段差を埋めて見た目を良くしたり、の頭を保護する、あるいは家地の頭で傷むのを防ぐ目的で作られたようです。
面懸(おもがい) 三懸の一つで、を馬の頭と首につなぎとめ固定するため紐(ひも)のことです。
「おもづら」とも言います。
沢瀉(おもだか) @:水田(すいでん)や湿地(しっち)に生える水生植物で、に似た「V」字型の葉を持っていることから、「勝ち草(かちぐさ)」「勝軍草(しょうぐんそう)」「将軍草(しょうぐんそう)」とも言われ、縁起の良い物として武具や家紋(かもん)の意匠(いしょう=デザイン)に用いられました。
A:源氏八領の内の一領で、詳細は伝わっていませんが沢瀉威の鎧だったろうと推測されています。
平治の乱で源朝長(みなもとともなが)が着用し、敗走中に雪の中に脱ぎ捨てられて失われたとされています。
沢瀉威(おもだかおどし) 色目の一つで、沢瀉の葉のような三角形「△」の模様を威した物を言います。
表目貫(おもてめぬき) 差表側の目貫のことです。
寄(よ)りの位置に付けられ、その意匠(いしょう=デザイン)が動物なら頭、植物なら根(ね)が側を向くのが決まりとされ、逆のものは「逃げ目貫(にげめぬき)」と言われて嫌われたようです。
反対側は裏目貫と言います。
卸眉庇(おろしまびさし) 兜鉢を構成する板をそのまま眉庇とした形式のものを言い、雑賀鉢頭形兜に見られます。
中には打眉見上皺打出したり、下の縁(ふち)を実際の眉(まゆ)に沿った曲線に切り欠いた物などもあります。
「撫眉庇(なでまびさし)」「付卸眉庇(つけおろしまびさし)」とも言います。
か行 解説
貝形兜(かいなりかぶと) 巻貝(まきがい)や二枚貝(にまいがい)を意匠(いしょう=デザイン)として用いた兜のことで、割蛤栄螺形兜などがあります。
「甲斐(かい)のある働(はたら)きをする」という意味があるとも言われています。
梅花皮(かいらぎ) 表面の凹凸(おうとつ)がなくなるまで研磨(けんま)し、着色した後に漆(うるし)などで仕上げた鮫皮のことです。
梅(うめ)の木の皮(かわ)に似た模様になるためこう呼ばれます。
などの装飾に使われます。
替紋(かえもん) 文字通り定紋に替えて非公式の場で用いる、略式(りゃくしき)または装飾家紋(かもん)のことを言います。
「替え紋」とも書き、「裏紋(うらもん)」「副紋(そえもん)」「別紋(べつもん)」「控え紋(ひかえもん)」などとも言います。
返角(かえりつの) 差表に付けられた角製(つのせい)の「レ」字型をした鉤状(かぎじょう)の突起(とっき)のことで、が帯(おび)から抜けないようにするための部品です。
金属製の物は「折金(おれがね)」「折り金(おりがね)」「返し金(かえしがね)」とも言うようです。
雅楽(ががく) 日本古来の古い音楽に、大陸から渡来した音楽や舞(まい)が加わって生まれた芸術で、10世紀頃に完成し、皇室(こうしつ=天皇家・皇族)の保護の下(もと)で伝えられてきました。
国風(くにぶり=日本風)の歌舞(かぶ)、中国系の唐楽(とうがく)、朝鮮系の高麗楽(こまがく)などがあります。
楽器を演奏する人のことは楽師(がくし)と呼びます。
加賀頬(かがぼお) 顎(あご)と両頬(りょうほほ)のライン下部のみを覆う最小限の半頬で、その名の通り加賀(かが=石川県)で作られ始めました。
「顎当(あごあて)」とも言います。
書き髭(かきひげ) 目下頬などで、実際に植毛された髭(ひげ)ではなく、金粉(きんぷん)・銀粉(ぎんぷん)などで髭(ひげ)を描いたり、真鍮象眼で髭(ひげ)を表したりしたものです。
書菱(かきびし) 菱縫で、実際に威毛で綴(と)じずに、朱漆を用いてあたかも綴(と)じているように描(えが)いたものを言います。
描覆輪(かきふくりん) 金箔金泥を用いて、あたかも覆輪しているかのように描いたものを言います。
額袖(がくそで) 全体を一枚の板で構成し、下段の数段のみを威しの様式で、板袖よりやや大きめのものを言います。
これと似たものに瓦袖変わり袖などの様式があります。
角手甲(かくてこう) 摘手甲で、手の甲を守る板に、四本指に合わせて打出しているもののことです。
額頭形兜(がくとうなりかぶと) 兜鉢の正面、額(ひたい)の部分を異様に前方に張り出し、盛り上げた形の兜のことです。
高崎藩初代藩主、大河内輝貞(おおこうちてるさだ)が考案した兜だとも言われているそうです。
鹿毛(かげ) 馬の毛色の一つで、全身は茶褐色(ちゃかっしょく)で、たてがみ・尾・四肢(しし=四本の足)の下部が黒い毛色を言います。
懸緒(かけお) 冠板裏側後方に設けられた緒(お)のことで、が前にめくれるのを防ぐため総角の左右の輪になった部分に四方手結びにします。
総角の無い腹巻では肩上後方の茱萸金物四方手結びにします。
「袖付の後緒(そでつけのあとお)」とも言います。
懸通(かけどおし) 肩上の上に後ろから前まで高紐が通っていることを言い、当世具足の特徴の一つとされます。
掛両袋(かけりょうぶくろ) を着る前に装着する、鼻紙袋のような小袋を二つ並べて紐で連結したもののことを言います。
袋には縦横に紐が付いており、縦に付いた紐を首に掛け、横に付いた紐を腰に回して縛ります。
二つの袋はそれぞれ佩楯の上部、両足の付け根の辺りに来ます。
その上からを着ると袋が草摺の下に隠れるため、「二つ内袋(ふたつうちぶくろ)」とも呼ばれます。
ホ具(かこ) @:現代のベルトのバックルと同じように、ベルトの穴に通してベルトを止める刺鉄と呼ばれる釘(くぎ)形の棒と、あまったベルトの端(はじ)を通すホ具頭と呼ばれる四角や円形の縁(ふち)の部分で構成される器具のことです。
A:ホ具頭のことです。
「具(かこ)」とも書き、「角(かく)」「尾錠(びじょう)」とも言います。
ホ具頭(かこがしら) の上部に付いているホ具の部分を言います。
をつなぐ水緒韋を固定するのに使われます。
「具頭(かこがしら)」とも書き、「蛸頭(たこがしら)」「尾錠金(びじょうがね)」「水緒金(みずおがね)」とも言います。
ホ具摺(かこずり) 臑当で、足の内側にくるの下方に張った革のことを言います。
当初は乗馬の際にホ具頭臑当が干渉し、双方が傷むのを防止するために張られたようです。
の下方を切り欠いて短くし、革の下までが来ないようにした物や、が全く無い家地部分に革を張った例も見られ、この場合は恐らく臑当家地や、家地が付かない場合は下に着ける脛巾などの布帛部分を保護することが主な目的だったのではないかと考えます。
別名を「角摺(かくずり)」「鐙摺(あぶみずり)」「鐙摺韋(あぶみずりのかわ)」とも言います。
風折烏帽子(かざおりえぼし) @:立烏帽子が動作の邪魔にならないように上部の1/3くらいを折り曲げた烏帽子のことです。
A:立烏帽子の上部が風に吹き折られた形の烏帽子のことです。
いずれも狩衣着用の時に被(かぶ)るとされ、上皇(じょうこう)用は右折り、一般は左折りが原則(げんそく)とされていたそうです。
「平礼烏帽子(ひれえぼし)」とも言います。
笠ジコロ(かさじころ) 南北朝時代以降に見られる、水平に広がったシコロのことを言います。
笠状に広がった状態からこう呼ばれますが、この形式は室町時代末期頃にはすたれ、その後は江戸時代に一部で再び行われたようです。
笠標(かさじるし) 戦場で敵味方を見分けるため、兜の笠標附鐶などに付けた合印のことです。
多くは布(ぬの)で作られた小さな旗のような形状で、文字や家紋(かもん)を染めました。
「笠印」とも書き、これと似たものに袖印があります。
笠標附鐶(かさじるしつけのかん) 兜鉢の後方中央に付いている鐶(かん=輪)のことです。
ここに笠標総角を付けます。
笠標鐶(かさじるしのかん)」総角付環「後勝鐶(こうしようかん)」「高勝鐶(こうしようかん)」「富の緒の鐶(とみのおのかん)」とも言います。
重鎖(かさねぐさり) 丸輪の鎖(くさり)だけを縦横につないだものを言います。
代表的なものに八重鎖があります。
重ジコロ(かさねじころ) 文字通り、通常のシコロの内側にもう一つ下ジコロを設け、二重としたもののことを言います。
笠ジコロ饅頭ジコロなど、開きの大きいシコロによく見られます。
飾り鞍(かざりぐら) 儀礼用の装飾を施したのことで、唐鞍大和鞍があります。
家蚕(かさん) いわゆるカイコのことで、屋内(おくない)で人工飼育され、繭(まゆ)から絹糸(きぬいと)が取れる昆虫のことです。
野蚕と違って、人間の管理なしには生きられない昆虫で、一つの繭(まゆ)から約1,500mの絹糸(きぬいと)が取れると言われています。
火事装束(かじしょうぞく) 江戸時代、火事の際に消火に当たる人が身に付けた服装で、「火事頭巾(かじずきん)」「火事羽織(かじばおり)」「野袴(のばかま)」胸当「革足袋(かわたび=かわのくつした)」などのことを言います。
一般の消防士が作業服として着た物と、武士が警備用に着る物がありました。
樫鳥(かしどり) 「かけす」の別名です。
カラス科の鳥で全長33cmくらい、体は淡(あわ)い葡萄(ぶどう)色で翼(つばさ)の一部に白・黒・水色の美しい斑(まだら)模様があります。
木の上に杯(さかずき)形の巣をかけるところから「かけす」と呼ばれ、樫の実(かしのみ=ドングリ)を好むところから「かしどり」とも呼ばれるようになったそうです。
「やまがらす」とも言います。
樫鳥威(かしどりおどし) @:樫鳥の羽毛(うもう)に似た模様の緒(お)で威す手法を言います。
A:市松模様(いちまつもよう)を描いて威す手法を言います。
「かんどりおどし」とも言います。
梶の葉(かじのは) 文字通り、カジノキの葉のことです。
古くは食器として用いられ、後に神様への供(そな)え物を盛るための器(うつわ)として用いられました。
戦(いくさ)の神として有名な信濃(しなの=長野県)の諏訪大社(すわたいしゃ)の紋様として使われているほか、家紋(かもん)や武具の意匠(いしょう=デザイン)として使われています。
頭(かしら) 柄頭に付ける金属や水牛(すいぎゅう)の角(つの)等で作られたキャップ状の部品のことです。
太刀拵兜金に相当する部品です。
とセットにして縁頭と呼ぶようです。
鎹撓(かすがいだめ) 草摺が重なり合う部分の隙間を出来るだけ無くすために、草摺最下段の両端(りょうはじ)を内側へ撓(たわ)ませることを言います。
粕毛(かすげ) 馬の毛色の一つで、元の毛色に白色の毛が細かく混じって全身が灰色っぽく見える毛色を言います。
葦毛薄墨毛と似ていますが、別の毛色として区別されます。
元の毛色によって「栗粕毛(くりかすげ)」「鹿粕毛(しかかすげ)」「青粕毛(あおかすげ)」と呼ぶ場合もあるようです。
「糟毛」とも書きます。
風留の金物(かぜとめのかなもの) 江戸時代のシコロ草摺菱縫板の両角(りょうかど)を飾(かざ)る三角形の彫金物(ほりかなもの)のことです。
「かざどまりのかなもの」とも言います。
肩当(かたあて) 鉄製であることの多い肩上から肩を守る為に、その裏側に取り付ける綿入れの蒲団(ふとん)状の物です。
大抵は押付板裏までをカバーし、襟廻小鰭が付きます。
片切彫(かたきりぼり) 断面が「レ」字のような、片方に刃が付いた片切鏨(かたきりたがね)で金属を彫って立体感のある線を描く技法のことを言います。
江戸時代に横谷宗a(よこやそうみん)によって始められたと言われます。
肩腰取威(かたこしどりおどし) 色目の一つで、肩取威腰取威の両方の形式を使って威した物のことです。
片籠手(かたごて) 文字通り、籠手を片方の手だけに着用する事を言います。
平安時代〜鎌倉時代末期にかけての騎馬による矢戦(やいくさ)を中心とする時代に用いられた大鎧などでは、敵に向く射向側にだけ籠手を付け、太刀や矢を引く馬手側は動きやすくするために籠手を省略したためこう呼ばれます。
なお、両手に着用する場合は諸籠手と言います。
片差縄(かたさしなわ) 馬の右のにだけ差縄を付けることを言い、身分が四位(よい)以下の者がこれを行なったとされます。
片白(かたじろ) 兜鉢の前方のみに地板篠垂がある兜のことです。
肩白威(かたじろおどし) 肩取威で、上部の段を白で威した物を言います。
胴丸腹巻などでのない物は「胸白(むなじろ)」と呼びます。
肩裾取威(かたすそどりおどし) 色目の一つで、肩取威裾取威の両方の形式を使って威した物のことです。
肩摺板(かたずりのいた) 兜のシコロの最下段を言います。
「肩摺(かたずり)」「受板(うけいた)」裾板と呼ぶ場合もあります。
肩取威(かたどりおどし) 色目の一つで「わたどりおどし」とも言い、上部の一段から三段を、他とは違う色で威した形式を言います。
白で威した場合は肩白威と言います。
刀筒(かたなづつ) 刀(かたな)を入れる筒状のケースです。
表面は漆塗り(うるしぬり)や蒔絵螺鈿などで装飾されることが多いようです。
また、形は似ていますが鉄砲(てっぽう)を入れる物は鉄砲筒と呼ばれます。
肩脱胴(かたぬぎどう) 着物の一方を脱いで肌を見せている様子を表(あらわ)したのことで、の斜め半分を助骨胴・それ以外を小札毛引威などにした物を言います。
右側を脱いでいるものと左側を脱いでいるものの二通りがありますが、単なる好みによるものなのかは分かりません。
「片肌脱胴(かたはだぬぎどう)」とも言います。
また、両肩を脱いだような両肌脱胴もあります。
勝虫(かちむし) 「蜻蛉(とんぼ)」の別名で、「勝」の文字から縁起の良いデザインとして武具や武士の衣装などに好んで用いられています。
「かちむし」と呼ばれる理由は、
 @:獲物を狙う様子が猛々(たけだけ)しい。
 A:常に真っ直ぐにしか進まない。
 B:とんぼ返りのように、戦(いくさ)に勝って無事帰る。
などの諸説があるようです。
また、「古事記(こじき)」や「日本書紀(にほんしょき)」には日本の別名である「秋津島(あきつしま)」の「あきづ」は「蜻蛉(とんぼ)」の別名に由来するとの記述もあり、古くから特別な虫と考えられていたようです。
勝色(かちいろ) 「藍色(あいいろ)の黒く見えるほど濃い色」、「灰色(はいいろ)がかった濃い青」、「暗い紫(むらさき)みの青」などと言われる色で、染める時に布(ぬの)を臼(うす)で搗(つ)くことから「搗色(かついろ)」と呼ばれていましたが、それが鎌倉時代くらいから武士にとって縁起の良い「勝(かつ)」の字が使われるようになり、「かちいろ」と呼ばれるようになったとされます。
褐色とも書き、「かちんいろ」とも言います。
勝色威(かちいろおどし) 勝色威毛を用いて威した物を言います。
勝栗(かちぐり) 「搗栗(かちぐり)」のことで、栗の実を殻(から)のまま干したものを臼(うす)で搗ち(かち=つく)、殻(から)と渋皮(しぶかわ)を取ったもののことを言います。
保存食や戦場への携帯食として用いられました。
食べる時はそのまま食べるか、水に漬(つ)けたり灰(はい)の中や体温(たいおん)で温めて柔らかくしたものを食べたようです。
この「搗つ(かつ)」に武士にとって縁起の良い「勝(かつ)」の字をあて、出陣の際の儀式(ぎしき)には「敵を討ち、勝ち、喜ぶ」の意味で打鮑・昆布(こんぶと)とともに供えられました。
「勝軍利」とも書きます。
家中(かちゅう) 戦国時代に武家の主君・家臣団の総称として使用された言葉で、江戸時代には大名の領地である「藩(はん)」自体のことも指したようです。
褐色(かっしょく) @:「黒みを帯(お)びた濃い茶色(ちゃいろ)」のことです。
A:勝色のことを指す場合も有り、その場合は「かちいろ」と読みます。
鹿角(かづの) 文字通り本物の鹿(しか)の角(つの)、もしくは鹿の角を模した物を言います。
立物をはじめ指物馬標などにも使われたようです。
裹頭(かとう) 一枚の布や袈裟、或いは複数の布などを用いて頭全体を包み、目だけを出す装(よそお)いのことを言います。
白の五条袈裟を用いるのが基本だったようですが、宗派によっては違いが有るようです。
僧兵のイメージが強いですが実際には法要(ほうよう)などでも着用することが有ったようです。
金貝(かながい) 金・銀・錫(すず)・鉛(なまり)などの薄い板を文様に切ったもの、またはその板を漆(うるし)にはめこんで装飾する技法のことを言います。
室町時代から特に蒔絵で多く用いられたようです。
これと似た技法に平文がありますが、平文に使われる板よりも厚いのが特徴です。
金具廻り(かなぐまわり) 兜鉢以外で、甲冑を構成する主要な鉄やネリ革製の板の部分を言います。
主なものには眉庇胸板脇板押付板鳩尾板冠板障子板壷板などがあります。
通常、板の表は絵韋小縁韋伏縫され、裏は張り、縁(ふち)を覆輪とします。
板の表には漆塗り(うるしぬり)や蒔絵などの手法が使われる場合もあります。
「金廻り(かなまわり)」とも言います。
鉄錆地(かなさびじ) 地金の表面に薄く錆(さび)を浮かせ、一定以上錆(さび)が深くならないように漆(うるし)で錆止(さびど)めを施した手法です。
色味としては焦茶色(こげちゃいろ)のように見えます。
「てつさびじ」と読む場合もあります。
金交(かなまぜ) 札板を作る際に、鉄製(てつせい)のネリ革製のを交ぜて用いることを言います。
鉄とネリ革を一枚置き交互に配置することを「一枚交(いちまいまぜ)」と言い、要所に少し交ぜるのを「小金交(こがねまぜ)」と言います。
また、三目札に特有の方式として、鉄製(てつせい)一枚にネリ革製二枚の三枚一組で交(ま)ぜ合わせる「二枚交(にまいまぜ)」も見られます。
また、特に防御力を上げたいところは鉄のだけを並べる場合もあったようです。
蟹形兜(かになりかぶと) 蟹(かに)を意匠(いしょう=デザイン)として用いた兜のことを言います。
蟹(かに)は、
@:堅い殻(から)で身を守る。
A:相手を掴んだら放さない爪(つめ)を持つ。
B:自分より強い敵に対して決して後退(こうたい)しない。
C:卵をたくさん産むので子孫繁栄。
D:脱皮(だっぴ)し、再生する。
イメージが好まれたと言われています。
蟹(かに)の全身を模したもののほかに、脇立に蟹(かに)のはさみを意匠(いしょう=デザイン)として用いたものもあります。
樺色(かばいろ) 山桜(やまざくら)の樹皮のような茶色、或いは蒲(がま)の穂のような茶色と言われ、「蒲色」とも書くようです。
衝胴(かぶきどう) 長側のことです。
兜金(かぶとがね) 太刀柄頭を覆う金具のことです。
頭(かしら)を覆うことから「兜」の名が付いたようです。
打刀拵に相当する部品です。
「冑金」とも書きます。
兜蓑(かぶとみの) 兜の附物の一つで兜鉢全体を覆うように付けられた装飾のことを言います。
白熊黒熊赤熊・馬の毛などが使われました。
これと似た物に引廻しがあります。
鏑重籐弓(かぶらしげとうのゆみ) 日本の弓は木と竹をで貼り合わせ、固定の為に上から糸を巻いて漆で固め、更に補強と装飾を兼ねてを巻き付けますが、この巻き付けが弓の両端部分を重籐弓形式、それ以外を所籐弓形式とした弓の事を言います。
鏑矢(かぶらや) 雁股を付けた「鏑(かぶら)」と呼ばれる部品を備え、四立羽とした矢のことを言います。
「鏑(かぶら)」は中をくりぬいて穴を開けた球状をしており、射(い)ると穴に空気が流れて笛のような音がするため平安時代以降は合戦を始める時の合図として用いられました。
火薬(かやく) 衝撃や火などの熱を加える事によって瞬間的に爆発する物質の事です。
爆発(ばくはつ)によって発生するエネルギーがいろいろな用途に利用されます。
火薬入れ(かやくいれ) 文字通り火薬を入れておくための容器で、一般的なものは百発分の火薬を入れることが出来る大きさに作られていたそうです。
また、容器の蓋(ふた)一杯分が火縄銃を一発打つのに必要な量になるという優れた工夫もされていたようです。
掛絡(から) @:おもに禅宗(ぜんしゅう)で使われる、簡略化された四角い小さな袈裟のことです。
短いエプロンのような形状をしており、首を通して胸の前に垂(た)らすようにつけます。
通常、左胸(ひだりむね)の所に象牙(ぞうげ)などでできた輪(わ)がついています。
「掛羅」「掛落」とも書き、「掛子(かす)」「絡子 (らくす)」とも言います。
似たものに威儀細があります。
A:「@」の輪(わ)のことや、輪(わ)の形をした根付のことです。
B:根付または根付のついた提げ物のことです。
唐綾(からあや) 唐(から=中国)から輸入した、または日本でそれを真似て織ったのことです。
唐革(からかわ) @:虎(とら)の毛皮のことで、敷物(しきもの)や尻鞘などに用いられました。
A:江戸時代、オランダからもたらされた 羊または鹿ののことです。
B:平家(へいけ)に先祖代々伝わったとされる、虎の毛皮で威した鎧のことです。
「唐皮」とも書き、金泥を塗ったものを特に金唐革と言います。
唐鞍(からくら) 飾り鞍の中でも大和鞍に対して唐風(からふう=中国風)の装飾をこらした物を言います。
「銀面(ぎんめん)」「頸総(くびぶさ)」「雲珠(うず)」杏葉などの飾りからなり、朝廷(ちょうてい)の儀式用馬具として使われました。
「からぐら」とも言います。
繰南蛮鎖(からくりなんばんぐさり) 甲冑に用いる鎖(くさり)の輪の形式の一つです。
輪が一般の鎖(くさり)より太く、輪の合わせ目を平らにして重ね、鋲(びょう)で止めてあるので輪が広がって外れる心配がありません。
近世になって海外から伝えられ、国内でも製作されるようになりました。
空小札(からこざね) 近世に使われたの一種で、盛上札に見せかけるため、札頭を中心に表面を反(そ)らせて作った革製の小札のことを言います。
烏天狗(からすてんぐ) 烏(からす)のような嘴(くちばし)があり、黒い羽(はね)に覆われた体と背中には翼(つばさ)を持った天狗(てんぐ)のことを言います。
一説にその姿は迦楼羅から影響を受けたものとも言われます。
自由に空を飛ぶことができる上に、剣術(けんじゅつ)に優れているとされ、幼(おさな)い源義経(みなもとのよしつね)に剣術(けんじゅつ)を教えたと言われます。
また、「小天狗(こてんぐ)」とも呼ばれ、武芸に秀(ひい)でた若者のことを指す言葉としても使われます。
「鴉天狗」とも書きます。
唐の頭(からのかしら) ヤクの毛で作られた兜蓑引廻しを付けた兜のことを言います。
中国からの輸入品であったため「唐(から)」の文字が用いられたようです。
白熊黒熊赤熊などの種類があり、高級な輸入品として珍重(ちんちょう)されたようです。
唐花座(からはなざ) 天辺の座に使われる金具の一つで、花形の文様である「唐花(からはな)」のような花弁(はなびら)を持った、咲いた花のような立体的な形状をしています。
花弁は5枚であることが多く、彫刻などが施されている場合もあるようです。
上玉を包み込むように配置されることがあります。
狩衣(かりぎぬ) 襟(えり)をまるく仕立てた盤領(まるえり)で、くくり緒のある袖が、本体と背中側でのみわずかに連結されている衣装のことを言います。
もともと狩りなどの時に着たことからこう呼ばれます。
平安時代には公家(くげ)の平常の略服(りゃくふく)として、鎌倉時代以降は公家(くげ)・武家(ぶけ)の正服(せいふく)・礼服(れいふく)として用いられました。
現在では神社の神主(かんぬし)の衣装に見られます。
「かりごろも」とも読み、「狩襖(かりあお)」とも言います。
雁股(かりまた) 先端(せんたん)が「U」または「V」字型の二股(ふたまた)に開き、その内側に刃をつけたや、そのを付けた矢のことをいいます。
本来は飛ぶ鳥や走る獣(けもの)の足を射切(いき)る狩猟用(しゅりょうよう)として使われていたようです。
上差として用いられる場合が多く、「狩股」とも書きます。
カルカ(かるか) 火縄銃に玉を込めた後に使う棒(ぼう)のことです。
この棒(ぼう)を銃口(じゅうこう)から入れて火薬と玉を押し込み突き固めるのに使ったり、銃身(じゅうしん)の掃除をする時に使いました。
玉込めの時は必要以上の力で何度も突くと玉が変形して射撃出来なくなるため、突く回数は1回だけ、それも適度な力で突くとされていたようです。
折れたりすると火縄銃が撃てなくなるため、予備も含めて数本用意して使っていたようです。
なお火縄銃の銃身(じゅうしん)の下に一本収納されていますが、こちらは非常用として最後に使ったと言われています。
素材は木製がほとんどですが、鉄製の物もあったようです。
「サク杖(さくじょう)」「込矢(こめや)」「玉杖(たまづえ)」とも言います。
骨牌金(かるたがね) 7cm×4cm位の長方形をした板で、鉄やネリ革などで出来ています。
形状が「かるた(=トランプ)」のカードに似ているのでこう呼ばれます。
板所の一つとされます。
迦楼羅(かるら) 金色で口から火を吐(は)き、翼(つばさ)を広げると336万里(まんり)(=1,344万km)もあると言う想像上の巨大な鳥です。
龍(りゅう)や毒蛇(どくへび)を食べるとされたことから、風雨(あめかぜ)を治め雷(かみなり)を避けたり、災(わざわ)いや病気を除く力があると信じられました。
「金翅鳥(こんじちょう)」「妙翅鳥(みょうしちょう)」「ガルーダ」などとも言い、「迦留羅」とも書きます。
また、ヴィシュヌ神の乗り物とされています。
迦楼羅頬(かるらぼお) 鳶頬の中でも特に皺(しわ)や表情を強く打出したものを、迦楼羅に因(ちな)んでこう呼びます。
「迦楼羅面(かるらめん)」とも言い、総面もあります。
韋威(かわおどし) 威毛として鹿のを用い、威す手法を言います。
模様により様々な種類があります。
側切蝶番(かわきりちょうつがい) 当世具足に見られる蝶番(ちょうつがい)で、各段ごとに栓(せん)を付けた蝶番(ちょうつがい)が付いているものを言います。
革包太刀(かわつつみたち) 文字通り、およびを革で包(つつ)み、黒漆を塗って仕上げた太刀のことを言います。
を湿気から守ることができ、尻鞘に代わって用いられるようになりました。
も革袋をかけて覆い、湿気から守ったようです。
韋覆輪(かわふくりん) を用いた覆輪のことを言います。
笹縁とも言います。
瓦金(かわらかね) 小柄を入れる穴を補強する、角製(つのせい)または金属製の部品のことです。
「裏瓦(うらかわら)」とも言います。
河原毛(かわらげ) 馬の毛色の一つで、全身は淡(あわ)い黄褐色(おうかっしょく)、長い毛と四肢(しし=四本足)の下部が黒色の毛色を言います。
瓦袖(かわらそで) 江戸時代中期以降に現れたとされるの様式で、全体を一枚板で構成し、屋根瓦(やねがわら)のように大きく撓(たわ)みをつけた様式を言うようですが、その特徴は必ずしも明確ではないようです。
これと似たものに、板袖額袖変わり袖などがあります。
変わり兜(かわりかぶと) 兜鉢の上に薄鉄(うすてつ)・ネリ革張懸などで様々な形を作り出したり、仕掛けを施した兜のことを言います。
似たような形のものであっても異(こと)なる名称で呼ばれたり、何を表(あらわ)そうとしたのか意匠(いしょう=デザイン)がはっきりしない抽象的な形のものもあるため、明確に種類を定義するのは困難です。
「形兜(なりかぶと)」とも言います。
変わり袖(かわりそで) 江戸時代中期以降に現れたとされるの様式で、丸・羽箒(はねぼうき)・木葉(このは)・亀甲軍配などの様々な形を表したり、複数枚を重ねたような「重ね袖」など、その様式は多様です。
これと似たものに、板袖額袖瓦袖などがあります。
雁木篠(がんぎしの) 幅2〜3cmの細長い平板(ひらいた)状のを、板の端がわずかに重なるように並べて連結し、薄いで包んで漆(うるし)を塗ったものを言います。
一枚の板で作るよりも柔軟性・機動性が高いのが利点とされます。
また、これをまねた物に雁木塗があります。
「雁木(がんぎ)」とは本来、城などで内側から土塁(どるい=土を盛り上げて作った壁)の上に登るために設けた階段のことで、形状が似ていることからこう呼ばれます。
雁木塗(がんぎぬり) 一枚の板でありながら、漆(うるし)を盛り上げたり表面に切り込みを付けたりして何枚もの平板が重なっているかのようにした物を薄いで包んで漆(うるし)を塗り、あたかも雁木篠であるかのように見せた手法とされます。
簪(かんざし) 指物四半四方などの旗を用いる時に、竿(さお)と直角になる横棒(よこぼう)のことを言います。
旗の上の辺(へん)の縫いくるみを通して旗の横方向を固定します。
古くは「折掛(おりかけ)」と言い、鉄を曲げたものや竹で直角(ちょっかく)に作っていたようです。
「折懸」とも書き、「象鼻(ぞうばな)」「横手(よこて)」「横上(よこがみ)」とも呼ぶようです。
巻子(かんす) いわゆる「巻物(まきもの)」のことで、ただしくは「巻子本(かんすぼん/けんすぼん)」と言います。
横に長くつなげた紙の一方の端(はじ)に棒状(ぼうじょう)の軸(じく)をつけ、紙をその軸(じく)に巻(ま)きつけるようにしたものです。
ガントレット(がんとれっと) 西洋の甲冑で、手を護るために着けた手袋状(てぶくろじょう)の防具のことを言います。
指先から前腕部(ぜんわんぶ)までを護るものが多いようです。
閂差し(かんぬきざし) 打刀の差し方の一つで、刀(かたな)を地面と水平になるくらい横に倒して差すことを言います。
冠形兜(かんむりなりかぶと) 変わり兜の一種で、役人(やくにん)の冠(かんむり)を模した物を言います。
唐冠形兜和冠形兜があり、どちらも立物にはがつくことが多いようです。
「かむりなりかぶと」とも言います。
冠板(かんむりのいた) 金具廻りの一つで、栴檀板の最上段に付けられているのでこう呼ばれます。
では一枚板の形式を「立冠(たてかんむり)」、「L」字型に外へ折り返した形式を「折冠(おりかんむり)」と言います。
栴檀板では頭の部分を「山」字型に切り欠いたものや、中央に据文金物を打ったものなどがあります。
なお近世では籠手の肩側の端(はじ)に付けられた鉄の小さな板を指す場合も有るようです。
生糸(きいと) 蚕(カイコ)の繭(まゆ)からとった糸を何本か合わせて一本の糸状にしたもので、糸を撚(よ)ったり練糸にしていないものを言います。
春の繭(まゆ)からとった糸の方が秋の繭(まゆ)からとった糸よりも上等とされています。
黄漆(きうるし) 透漆石黄を混ぜて作られた黄色の漆(うるし)です。
生漆(きうるし) 荒味漆から不純物を取り除いた、採取したばかりの漆(うるし)に近い精製途中の漆(うるし)のことです。
日本産は「生正味漆(きじょうみうるし)」と言います。
祇園守紋(ぎおんまもりもん) 祇園守(ぎおんまもり)とは京都東山(きょうとひがしやま)の八坂神社(やさかじんじゃ)が発行する守り札(もりふだ)のことで、これを図案化した家紋(かもん)のことを言います。
一説には十字(じゅうじ)の部分がキリスト教の十字架(じゅうじか)を密(ひそ)かに表しているとも言われているようです。
意匠(いしょう=デザイン)によっていくつかの種類があります。
「ぎおんもりもん」とも言います。
黄唐茶(きがらちゃ) 褐色がかった濃い黄橙色」あるいは「薄い藍色(あいいろ)を帯(お)びた薄茶色(うすちゃいろ)」などとされる色のことです。
「黄雀茶」「黄枯茶」とも書きます。
菊座(きくざ) 主に天辺の座などに使われる金具の一つで、菊の花を象った形状をしているものを言います。
花弁(はなびら)が盛り上がっているものを「甲菊座(こうぎくざ)」、花弁(はなびら)の表面に窪みが付いているものを「裏菊座(うらぎくざ)」、花弁(はなびら)の中央を刳り抜いて枠だけ残しているものを「透菊座(すかしぎくざ)」と言います。
菊綴(きくとじ) 水干直垂素襖などの衣装で、補強と装飾を兼(か)ねて縫い目にとじつけた組紐のことを言い、紐(ひも)の先をほぐして菊の花の形にしたことからこう呼ばれます。
革紐(かわひも)・布紐(ぬのひも)などを結んだ場合もあり、先をほぐさないものは「結び菊綴(むすびきくとじ)」と言います。
亀甲(きっこう) 正六角形のことで、亀の甲羅(こうら)の六角形が名前の由来です。
亀甲金(きっこうがね) 亀甲の形をした板のことで、鉄やネリ革などで出来ています。
板所の一つとされ、「亀甲札(きっこうざね)」とも言います。
亀甲総鎖胴(きっこうそうぐさりどう) 大型の亀甲金総鎖でつなぎ合わせて作ったのことで、畳胴の一種類です。
切付(きっつけ) 二枚重ねの下鞍のうち、上の物を言います。
狐火(きつねび) 日没(にちぼつ)などに単独(たんどく)または数多く現れる正体不明の怪火(かいか)のことで、狐(きつね)が灯(とも)していると言われる光のことです。
狐頬(きつねぼお) 顎(あご)の部分が狐(きつね)の口のように尖(とが)って大きく前に突き出している面頬のことを言います。
鳩尾板(きゅうびのいた) 「小手輪(こてわ)」「はとおのいた」とも呼ばれ、金具廻り の一つです。
大鎧に附属(ふぞく)し、左手を動かした時に左脇に出来る隙間を守るために使われたとされていますが、その他にも高紐を切られないための防具(ぼうぐ)ではないかとする説などもあり、実際の所はまだよく分かっていません。
長方形をした一枚の鉄板で作られ、通常は表面に絵韋が貼られています。
栴檀板と一対で用いられます。
杏葉(ぎょうよう) @:胴丸が軽武装であった時代に肩の防御目的に使われた板のことです。
古くは大型でしたが鎌倉時代以降に胴丸が重武装として用いられ、が使われるようになってからは形も小型化し、肩上の先に付けられるようになりました。
A:唐鞍面懸胸懸尻懸などに付けた金属製または革製の装飾です。
B:「A」をデザイン化した家紋(かもん)の一つです。
このデザインを元にして出来たのが「茗荷紋」だとも言われているようです。
「ぎょよう」とも読みます。
強撚糸(きょうねんし) 強く撚(よ)った糸のことで、現代の工業規格では1m当たり1000〜2500回転させた糸のことを言うようです。
魚鱗札(ぎょりんざね) 鱗具足船手具足などで使われた、魚の鱗(うろこ)状ののことです。
「鱗札(うろこざね)」とも言います。
切裂(きりさき) 旗指物などで、竿(さお)で固定されていない方の辺(へん)に幾筋(いくすじ)か切り込みを入れた旗のことを言います。
「切先」「切割」とも書き、「きっさき」とも言います。
切付札(きりつけざね) 「きっつけざね」とも言い、板札の上部に札頭に似せた切り欠きを入れ、あたかもを連結した札板であるかのように見せたもののことです。
さらに通常は木屎を盛上げてのように見せているので「切付盛上札(きりつけもりあげざね)」とも言い、「割小札(わりこざね)」とも言います。
小札に似せたものを「切付小札(きりつけこざね)」伊予札に似せたものを「切付伊予札(きりつけいよざね)」と言います。
切総(きりぶさ) 総角水呑緒などの緒(お)の端(はじ)を糸で縛(しば)り、それより先はそのままの状態でほぐして切りそろえ、房(ふさ)にしたものを言います。
近世以降になると付総が行われるようになりました。
「切房」とも書きます。
麒麟(きりん) 想像上の動物で、中国では王がすばらしい政治を行うときに現れる瑞獣とされていました。
「体形は鹿に似て大きく・顔は龍に似て牛の尾と馬の蹄(ひづめ)を持ち・頭には角(つの)が一本・背中の毛は五色(ごしょく)・その他の毛は黄色・体に鱗(うろこ)がある」とされていますが、角(つの)が無かったり複数ある姿で描(えが)かれる場合もあります。
鳳凰と同じように「麒」は雄(オス)、「麟」は雌(メス)のことを指すのだとする説や、毛の黄色いものを「麒麟(きりん)」、青いものを「聳孤(しょうこ)」、赤いものを「炎駒(えんく)」、白いものを「索冥(さくめい)」、黒いものを「ロク端(ろくたん)/角端(かくたん)」とする説もあるようです。
なお、幼(おさな)いころから優れた才能のある子供のことを指す「麒麟児(きりんじ=麒麟の子)」の語源にもなっています。
金釦(きんいっかけ) 漆器(しっき)などの縁(ふち)を金(きん)に仕上げることを言います。
縁(ふち)に釦漆を指で塗り、その上に金消し粉を指で塗り付けたり金箔などを置いて金色に仕上げます。
「いっかけ」は沃懸地が語源と言われているようです。
「縁金(ふちきん)」とも言います。
金漆箔(きんうるしはく)
銀漆箔(ぎんうるしはく)
@:漆(うるし)を塗った上に金箔を押すことを言います。
銀箔の場合は「銀漆箔(ぎんうるしはく)」と言います。
A:漆(うるし)に染料(せんりょう)を混ぜて薄く伸ばした物のことです。
金唐革(きんからかわ) 金泥を塗った唐革のことです。
金小札(きんこざね)
銀小札(ぎんこざね)
金小札(きんこざね)は「金札(きんざね)」とも言い、金箔を押したり金陀美塗を施した小札のことです。
また、金の代わりに銀を用いた物を「銀小札(ぎんこざね)」と言います。
近習(きんじゅ) 馬廻り小姓右筆など、主君の側近くに仕える家臣のことを言うようです。
「きんじゅう」とも言います。
金象眼(きんぞうがん)
銀象眼(ぎんぞうがん)
はめ込みに金を用いた象眼を金象眼(きんぞうがん)、銀の場合を「銀象眼(ぎんぞうがん)」と言います。
金陀美塗(きんだみぬり)
銀陀美塗(ぎんだみぬり)
金陀美塗(きんだみぬり)は「金溜塗」とも書き、あらかじめ細かな金粉(きんぷん)を用いて全体を蒔絵した上に透漆を何度も掛けて磨き上げる手法です。
金陀美(きんだみ)は「金彩」「金溜」とも書き、金箔金泥を使って全体を装飾する手法全般のことを指す場合もあるようです。
なお銀を用いた場合は「銀陀美塗(ぎんだみぬり)」「銀彩(ぎんだみ)」「銀溜(ぎんだみ)」と言います。
金茶色(きんちゃいろ) 明るく黄色(きいろ)がかった茶色(ちゃいろ)のことで、金色(きんいろ)に近い茶色(ちゃいろ)のことです。
「山吹茶(やまぶきちゃ)」とも言います。
金茶糸威(きんちゃいとおどし) 金茶色威毛を用いて威した物を言います。
巾着(きんちゃく) 小物(こもの)を入れて持ち歩くために腰(こし)などに下げた袋のことで、提げ物の一つです。
布製(ぬのせい)が多く、袋の口には紐(ひも)が通してあり、この紐(ひも)を引いて袋の口を絞(しぼ)って閉じます。
紐(ひも)の端(はし)に根付がついているものもあります。
巾着形兜(きんちゃくなりかぶと) 巾着を模した変わり兜のことです。
金泥(きんでい)
銀泥(ぎんでい)
金泥(きんでい)は金粉(きんぷん)をで溶(と)いて泥(どろ)のようにした顔料(がんりょう=絵具)のことで「こんでい」とも言います。
銀粉(ぎんぷん)を用いた場合は「銀泥(ぎんでい)」または「白泥(びゃくでい)」と言います。
金箔(きんぱく)
銀箔(ぎんぱく)
金を槌(つち=ハンマー)などでたたいて薄くのばし、紙のようにした物のことを言います。
銀の場合は「銀箔(ぎんぱく)」と言います。
金白檀塗(きんびゃくだんぬり)
銀白檀塗(ぎんびゃくだんぬり)
下地に金箔金泥を用いた白檀塗のことを金白檀塗(きんびゃくだんぬり)と言います。
銀箔銀泥が下地の場合は「銀白檀塗(ぎんびゃくだんぬり)」と言います。
金覆輪(きんぷくりん)
銀覆輪(ぎんぷくりん)
覆輪する際に、金または金色の金属を用いた物を特に金覆輪(きんぷくりん)、または「黄覆輪(きぶくりん)」と言います。
銀または銀色の金属を用いた場合は「銀覆輪(ぎんぷくりん)」「白覆輪(しろぶくりん)」と言います。
金粉溜塗(きんぷんためぬり)
銀粉溜塗(ぎんぷんためぬり)
金粉溜塗(きんぷんためぬり)は溜塗の上に塗る透漆に金粉(きんぷん)を蒔(ま)く手法のことだと思われます。
銀粉(ぎんぷん)を用いた場合は「銀粉溜塗(ぎんぷんためぬり)」と言います。
偶蹄(ぐうてい) 蹄(ひづめ)のある偶数本(ぐうすうほん)の指のことです。
絎紐(くけひも) 布(ぬの)の表から縫い目が見えない「絎け縫い(くけぬい)」で仕上げた紐(ひも)のことです。
紐(ひも)の形を整えるため、中に綿(わた)や布(ぬの)の芯(しん)を入れた物もあり、芯(しん)の入っていない平(たい)らなものを「平絎紐(ひらぐけひも)」、芯(しん)を入れて丸くしたものを「丸絎紐(まるぐけひも)」と言います。
鎖帷子(くさりかたびら) 細い鎖(くさり)をつなぎ合わせて帷子(かたびら=ひとえの着物)などにとじつけて作った防具のことを言います。
鎧や衣服の下に着込んで使用したので「着込(きご)み」「着籠(きごめ)」とも言い、「鎖襦袢(くさりじゅばん)」とも言います。
鎖籠手(くさりごて) 座盤を用いず家地に鎖(くさり)だけを縫い付けて作製された籠手のことを言います。
特に、肩から手甲・指の先まで全て鎖(くさり)製とした物を「総鎖籠手(そうくさりごて)」と言います。
鎖(くさり)は堅固(けんご)な青海波や、江戸時代末期には繰南蛮鎖が使われました。
鎖ジコロ(くさりじころ) 鎖(くさり)を家地に綴(と)じ付けたシコロのことで、多くは下ジコロに用いられました。
鎖垂(くさりすが) 面頬で、家地に鎖(くさり)を綴(と)じ付けたものを言います。
鎖垂(くさりだれ) 鎖(くさり)を家地に縫い付けて作製されたのことを言います。
鎖踏込(くさりふんごみ) 踏込佩楯阿伊佐が切れるのを防ぐため家地に鎖(くさり)を縫いつけた形式の物を言います。
九字(くじ) 正確には「九字法(くじほう)」と言います。
九字とは「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前(りん・ぴょう・とう・しゃ・かい・じん・れつ・ざい・ぜん)」の九つの文字とされ、一説に「臨(のぞ)める兵、闘(たたか)う者、皆、陣を列(つら)ねて、前に在(あ)り」の意味を表していると言われますが、九つの文字やその配列が異なる場合もあるようです。
九字を唱えれば護身・破魔(はま)に効果があるとされ、精神統一の効果もあると言われています。
なお鎧櫃の正面に書かれている「前」の文字は、箱の前後を表すためではなくこの九字の最後の文字で、魔除けの意味が込められていると言われます。
鯨髭(くじらひげ) 背美鯨(せみくじら)などのヒゲクジラ類の上顎(うわあご)に見られる板状(いたじょう)の部分で、海水から餌(えさ)となる生物だけを取り出すためのフィルターの役目を持っています。
繊維(せんい)のようになった皮膚(ひふ)が並んでいるためブラシのように見え、長くて非常に柔らかく弾力もあることから、金属線やプラスチックがない時代には「釣竿(つりざお)」・「鯨尺(くじらじゃく=着物用のモノサシ)」・「ぜんまいバネ」などとして伝統工芸品にも使われました。
「髭板(ひげいた)」「エンバ板」とも言います。
崩紋(くずしもん) 正規の紋所(もんどころ)の一部を略すなどし、形を崩(くず)して作り替えた紋(もん)のことを言います。
天鼠(くすね) 松脂(まつやに)に油を加え、熱して練ったもののことを言います。
粘着力が強いため弓の弦(つる)などに塗って補強したり、弓手に塗って弓が滑らないようにするのに使われました。
もとは「くすりねり」という言葉が変化したものと言われ、「薬練」「薬煉」「天鼠矢」とも書きます。
ちなみに弓手に塗ることを「手薬煉を引く(てぐすねをひく)」と言い、弓の用意をして敵を待つところから、いまでは「準備を整(ととの)えて何かを待ち構(かま)える」の意味で使われます。
具足下着(ぐそくしたぎ) 文字通り当世具足の下に着る着物のことです。
上は丈(たけ=長さ)の短い「半着(はんぎ)」と呼ばれる着物で、特に袖(そで)が筒(つつ)のようになったものを用い、亀甲金や鎖(くさり)を縫い付けたものもあります。
下は「小袴(こばかま)」と呼ばれる丈(たけ=長さ)の短い袴(はかま=ズボン)または膝下(ひざした)を細く絞(しぼ)った「裁付袴(たっつけはかま)」と呼ばれる袴(はかま=ズボン)が用いられたようです。
口金(くちがね) 太刀拵の入口部分に付ける部品のことを言い、打刀拵鯉口に相当します。
口薬(くちぐすり) 火縄銃火皿にのせる点火用(てんかよう)の黒色火薬のことで、火縄の火がつきやすいように上薬よりも粒(つぶ)を細(こま)かくした黒色火薬を使用しました。
ここに点火(てんか)された火は火穴を通じて筒内(つつない)の上薬に引火(いんか)します。
口薬入れ(くちぐすりいれ) 文字通り口薬を入れておくための容器のことです。
蓋(ふた)に紐(ひも)を通し、手を離すと蓋(ふた)が自重(じじゅう)で下がって栓(せん)ができる工夫がされたものもあります。
朽葉色(くちばいろ) くすんだ赤みがかった黄色のことで、文字通り秋の落ち葉の色を表したとされる色です。
微妙な色の違いによって、赤みが強いものを「赤朽葉(あかくちば)」黄色が強いものを「黄朽葉(きくちば)」などと呼んでいたようです。
沓込(くつこみ) 臑当の下端のことです。
轡(くつわ) 馬に手綱をつけるために、馬の口(歯槽間縁)にくわえさせる金具のことです。
面懸によって固定します。
組討(くみうち) 互いに組み合って争うことを言います。
特に戦場で敵と組み合って討ち取ることを言い、討ち取る時には鎧通などが使われました。
茱萸金物(ぐみかなもの) の緒(お)を結ぶために肩上に付けられた筒(つつ)状の金物を通した輪(わ)のことを言います。
通常は金銅製で、中央が膨(ふく)らんだ筒(つつ)型が茱萸(ぐみ)の実に似ていることからこう呼ばれます。
肩上の前方の金物には受緒、中央部の金物には執加緒を結びます。
また腹巻に限っては肩上後方に金物を設け、そこに懸緒を結びます。
「袖付茱萸(そでつけのぐみ)」とも言います。
組紐(くみひも) 細い絹糸(きぬいと)や綿糸(めんし)を組みあげて1本の紐(ひも)にしたものを言います。
紐(ひも)の断面形状が四角いものを「角打紐(かくうちひも)」、丸いものを「丸打紐(まるうちひも)」、平(たい)らなものを「平打紐(ひらうちひも)」と言います。
鞍(くら) 人が馬や牛の背に座り易くするための道具で、鞍橋によって構成されます。
儀礼用に飾りを付けたものは特に飾り鞍と呼ばれます。
鞍橋(くらぼね) の基本となる部分で、前輪後輪居木によって構成されます。
刳上(くりあげ) 当世具足発手の左右側面、または左右側面と後中央に設けられた緩やかな山型の切り欠きのことを言います。
当世具足になってそれまでの甲冑よりもの丈(たけ)が長くなったため、の腰への当たりを良くすると共に下半身の足掻(あが)きを良くする目的があったと考えられます。
栗形(くりかた) 打刀腰刀で、鯉口近くに付けられた下げ緒を通すための穴の開いた突起(とっき)のことです。
木・角(つの)・金属などで作られた半円(はんえん)状の輪(わ)で、栗(くり)の実を半切りにしたような形をしているのがその語源とも、穴を刳(く)った物の意である「刳り形」が語源とも言われているようです。
穴には通常、鵐目と呼ばれる金具が付いています。
「繰形」とも書き、下げ緒通し(さげおどおし)」とも言います。
倶利伽羅剣(くりからけん) 不動明王が持つ三鈷剣に龍(りゅう)が巻(ま)きつき炎(ほのお)に包(つつ)まれているもので、「欲・怒り・真理に対する無知」の三毒(さんどく)を断(た)ち切る剣(けん)とされます。
また単独(たんどく)では不動明王自身(じしん)が姿(すがた)を変えたものともされ、「倶利伽羅明王(くりからみょうおう)」「倶利伽羅不動(くりからふどう)」「倶利伽羅龍王(くりからりゅうおう)」などと呼ばれて信仰(しんこう)されています。
栗毛(くりげ) 馬の毛色の一つで、黄褐色(おうかっしょく)や栗色(くりいろ)のように全身は黒みを帯びた褐色で、たてがみ・尾が赤褐色(せきかっしょく)の毛色を言います。
繰締の受緒(くりじめのうけお) 二つ折りにした繰締の緒の短い方のことで、繰締の懸緒と結びます。
繰締の緒(くりじめのお) @:腹巻で背中の引合せ部分左右の発手から出ている紐(ひも)のことです。
後で紐(ひも)交差させたらの前に回して結び、の腰の部分を締めます。
「胴前緒/胴先緒(どうさきのお)」とも言います。
A:胴丸当世具足下部を締めるための紐(ひも)のことです。
紐(ひも)の一方が長くなるように途中で二つ折りにしたら、折った部分を繰締の緒の綰に結わえ、繰締の懸緒繰締の鐶に通して折り返した後、の前で繰締の受緒と結びます。
「繰締の本緒(くりじめのもとお)」とも言います。
繰締の緒の綰(くりじめのおのわな) 繰締の緒を結わえ付けるために射向側の前胴発手辺りに設けられた輪(わ)のことです。
繰締の懸緒(くりじめのかけお) 二つ折りにした繰締の緒の長い方のことで、繰締の鐶に通して折り返した後、繰締の受緒と結びます。
繰締の鐶(くりじめのかん) 繰締の懸緒を通して折り返すために馬手側の後胴発手辺りに設けられた鐶(かん=輪)のことです。
紐(ひも)を通した「U」字型のパイプ状の金属製が一般的で、「海老金物(えびかなもの)」とも言います。
繰半月(くりはんげつ) 「C」字型をした三日月の開いた部分を上に向けて横にしたような形状、もしくはその状態のまま開いた部分をつなげた三日月の形状を言います。
前立をはじめ、指物馬標などにも使われたようです。
「刳半月」とも書くようです。
クルリ(くるり) 中をくり抜いた竹の筒などにを取り付けたもので、神社の祭りや「端午(たんご)の節句」に飾る幟旗(のぼりばた)を立てる竿(さお)の上部などにはめます。
風向きに応じて旗を回転させ、旗に風圧がかからないようにします。
曲輪(ぐるわ) 喉輪と同様に首から胸上部を守るものですが、こちらは蝶番(ちょうつがい)を備えた立襟(たてえり)状で、首の周りも防御することが出来るようになっています。
面頬を伴うものは曲輪垂と言います。
似たものに襟輪があります。
曲輪垂(ぐるわすが) 文字通り面頬曲輪にしたもので、江戸時代以降におこなわれたようです。
久連子鶏 (くれこどり) 熊本県の天然記念物で、肥後五鶏の一つです。
90cmもの長さになる雄(オス)の黒い尾羽(おばね)は「久連子古代踊り(くれここだいおどり)」の笠(かさ)の装飾などにも使われています。
紅猿鞣(くれないさるなめし) 紅色(くれないいろ)に染めた猿(さる)ののことで、菱縫畦目綴に用いられました。
黒漆(くろうるし) 漆(うるし)を精製(せいせい)する際に鉄粉(てっぷん)や水酸化鉄(すいさんかてつ)を混ぜ合わせ、化学反応によって深みのある黒色を出した漆(うるし)のことです。
無油(むえん)の黒呂色漆(くろろいろうるし)、有油(ゆうえん)の黒塗立漆(くろぬりたてうるし)がおもなものです。
黒鹿毛(くろかげ) 馬の毛色の一つで、黒味(くろみ)がかった鹿毛または赤褐色(せきかっしょく)の毛色のことです。
実際には青鹿毛との区別は難しいようです。
慈姑(くわい) 沢瀉の一種で、塊茎(かいけい=ジャガイモのように地下の茎(くき)が栄養を溜めて大きくなったもの)が食用とされます。
「芽が出る」ことから縁起の良い物として、御節料理(おせちりょうり)などに使われます。
鍬形(くわがた) 大鎧などでよくみられる、兜の正面に付けた「U」または「V」字型をした立物のことです。
平安時代中期頃から行われたとされ、古くは一枚で構成されていましたが鎌倉時代頃から左右別々の部品となり、鍬形台に差し込む形式となりました。
形が農機具の鍬(くわ)に似ているのでこう呼ばれると言う説のほか、先端(せんたん)の形が慈姑の葉に似ているからだとする説も有るようです。
多くの方にとって最も馴染のある立物ではないでしょうか。
鍬形台(くわがただい) 左右の鍬形を差し込んで固定する、半月状(はんげつじょう)の台のことです。
兜の眉庇に固定されています。
軍扇(ぐんせん) 軍陣(ぐんじん)で用いる扇(おうぎ)のことで、平安時代末期頃にその形態がととのったとされます。
表面に日輪(にちりん=太陽)・裏面に月輪(がちりん=月)などの文様をあしらった華(はな)やかな物が多く見られ、室町時代末期頃からはその使い方について複雑な作法も生まれたようです。
軍配(ぐんばい) 正しくは「軍配団扇(ぐんばいうちわ)」と言いますが、単に「団扇(うちわ)」「軍配(ぐんばい)」と略して呼ばれます。
軍隊への合図・指揮をとるのに用いた道具で、室町時代末期頃から使われました。
時代が下がるにつれて団扇部分の面積が大きくなって行ったようです。
この他、指揮道具には采幣指揮棒と呼ばれる物もあります。
啓明(けいめい) 「明けの明星(あけのみょうじょう=朝方に東の空に輝く金星)」のことです。
夕方は太白と言います。
袈裟(けさ) 仏教の僧侶(そうりょ)が衣(ころも)の一番上につける衣類で、左肩(ひだりかた)から右脇下(みぎわきした)にかけてまとう長方形の布のことです。
サンスクリット語(=古代インドで使われた言葉)で「カシャーヤ」と言い、「濁った色」を意味するとされ、派出(はで)な色は使わないとされていたようです。
なお「カシャーヤ」は英語の「カーキ(枯草色:かれくさいろ)」の語源とも言われています。
もともとは拾った布を縫い合わせて作っていましたが、インドから中国・日本に伝えられる間に美しく装飾的なものになっていきました。
ただし今でも小さな布を縫い合わせて作られており、縫い合わせる布の一片を条(じょう)と呼びます。
この条(じょう)の数によって五条袈裟・七条袈裟・九〜二五条袈裟の三種類に分けられ、五条袈裟は作業着、七条袈裟は普段着、九条袈裟以上は正装用(せいそうよう)として用いられるそうです。
仏教の宗派(しゅうは)によっていろいろな種類があり、「功徳衣(くどくい)」「福田衣(ふくでんね)」「無垢衣(むくい)」「糞掃衣(ふんぞうえ)」などとも言います。
また禅宗(ぜんしゅう)では師(し)が自分の教えを正しく伝えた証(あかし)しとして、弟子(でし)に自分の袈裟(けさ)を与え、これを「伝法衣(でんぽうえ)」と呼びます。
下散垂(げさんすが) 面頬で、三分割されているものを言います。
芥子(けし) 佩楯襟廻などの家地の縁(ふち)に紅白や紅(くれない)の縮緬をジグザグに折りたたんで綴(と)じ付けたものです。
「緋縁(ひえん)」とも言います。
消し粉(けしふん) 金・銀箔などと混ぜて乾燥し、それを砕(くだ)いて粉(こな)にしたものを言います。
粉(こな)の中では最も細かいもので、蒔絵金釦などに用います。
仮装襟(けしょうえり) 襟廻家地の縁(ふち)に芥子を縫付けたもののことです。
化粧板(けしょうのいた) 胸板脇板押付板冠板などの金具廻りの連結部分の上を飾る、革で包んだ細長い板のことです。
「きょうしょうのいた」とも言い、「境粧板」「交装板」とも書きます。
毛引威(けびきおどし) 威しの手法の一つで、もともとは一枚の小札に対し一行を威し、次々と横に上下を「W」字状に隙間(なく威して行く手法のことを言いましたが、板札になってからも使われました。
また、全体をこの方法で仕上げたものを江戸時代には「総毛引威(そうけびきおどし)」または「総毛引(そうけびき)」と呼んだようです。
毛彫(けぼり) 金属などに、先が丸や細く尖(とが)った鏨(たがね)で髪の毛のような細い線を彫り込む技法を言います。
古くは古墳時代から行われたいたようです。
蹴彫(けりぼり) 金属などに鏨(たがね)で線を彫り込む、いわゆる彫金(ちょうきん)の技法の一つです。
毛彫が鏨 (たがね) を離さずに連続で線を彫り進めるのに対し、一打ちごとに鏨(たがね)を離すので、線は小さな楔 (くさび) 形が連続したような点線状になるのが特徴です。
奈良時代に始り平安時代に最も流行したとされます。
源氏八領(げんじはちりょう) 「保元物語(ほうげんものがたり)」や「平治物語(へいじものがたり)」などに記載されている、清和源氏(せいわげんじ)に代々伝えられていた、源太産衣八龍楯無薄金膝丸沢瀉月数日数と言われる8種類の鎧のことです。
金刀比羅宮(ことひらぐう/こんぴらぐう)に伝わる「保元物語」では、「源太産衣」の替わりに「七龍」と言う鎧が入っていますが、この「七龍」がどのような物であったかは分かりません。
剣大(けんだい) 「大(だい)」の字の「一」の両側と「人」の上部を剣先(けんさき)の形にしたものを言います。
津山松平家(つやままつだいらけ)の合印が有名ですが、これは松平家(まつだいらけ)の初代である結城秀康(ゆうきひでやす)が幼(おさな)い頃、徳川家康(とくがわいえやす)の次男と言う立場でありながら遠ざけられていたのを保護(ほご)した本多重次(ほんだしげつぐ)の忠義を忘れないようにと、「本多」の「本」という字を「大」と「十」の二つに分けて「大」の字を合印・「十」の字を槍(やり)のの形にしたのが由来だと言われているそうです。
源太産衣(げんたがうぶきぬ) 源氏八領の内の一領で、源義家(みなもとよしいえ)が生まれた時に天皇から頂いた、或いは生まれた時に作られた鎧で、その袖に義家を座らせて天皇と面会した、などと言われています。
「源太」とは義家が幼い時の名前です。
胸板に天照大神(あまてらすおおかみ)と八幡神(はちまんしん)を表(あらわ)し、左右のには藤(ふじ)の花が威してあったとされています。
平治の乱で12歳の源頼朝(みなもとよりとも)が着用し、敗走中に美濃(みの=岐阜県)の山の中に脱ぎ捨てられて失われたとされています。
「元太がうぶぎぬ」「かんたがうぶきぬ」などの別名で書かれた場合もあるようです。
元服(げんぷく) @:男子が成人になったことを示す儀式のことを言います。
11〜16歳の間に行われるのが一般的で、名前や服を改め、髪を結(ゆ)い、冠(かんむり)や烏帽子を着けました。
近世になると前髪(まえがみ)を切り落とすだけの簡単な儀式になりました。
「げんぶく」とも読み、「加冠(かかん)」「首服(しゅふく)」「初冠(ういこうぶり)」「冠(こうぶり)」などとも言います。
A:江戸時代、女性が結婚して眉(まゆ)を剃(そ)り、御歯黒を付けて髪を丸髷(まるまげ)に結(ゆ)ったことを言います。
鯉口(こいぐち) 打刀拵の入口の部分を言います。
見た目が開いた鯉(こい)の口に似ているのでこう呼ばれます。
太刀拵口金に相当(そうとう)する部品です。
なお、刀(かたな)をすぐに抜けるように刃(は)を少し引き出す動作を「鯉口を切る(こいぐちをきる)」と言います。
濃茶(こいちゃ) 文字通り濃く入れた抹茶のことです。
薄茶と違い、お茶を入れることを「練る(ねる)」と言い、何人かで一椀(ひとわん)のお茶を回し飲みするのが基本です。
有名な石田三成(いしだみつなり)と大谷吉継(おおたによしつぐ)のエピソードはこのお茶を頂く会でのことだったようです。
「お濃茶(おこいちゃ)」「お濃(おこい)」とも言います。
笄(こうがい) @:髪型を整えたり、頭のかゆいところをかいたりするための、箸(はし)に似た細長い道具のことです。
A:刀(かたな)の差表に付く金属製の箆状(へらじょう)の道具のことです。
本来は@と同じで携帯用の整髪道具でしたが、中世以降は小柄とともに刀(かたな)の装飾となったようです。
B:江戸時代の女性用髪飾りの一種です。
笄金物(こうがいかなもの) 水呑鐶の座金(ざがね=土台)となる装飾を施した細長い金物(かなもの)のことを言います。
鎌倉時代後期以降にみられ、形がの柄(え)に似ているのでこう呼ばれます。
一般的に大袖は上から四段目の表側後方、広袖壷袖では上から三段目の表側後方に付けられ、江戸時代になるとそのほかのにも付けられるようになったようです。
甲懸(こうがけ) 足の甲(こう)を守るための防具です。
@:室町時代頃の古い形式は筒臑当臆病金の下辺に、板状の鉄を鎖(くさり)などで連結し、籠手手甲のようにして用いていたようです。
「仕付甲懸(しつけこうがけ)」とも言います。
A:近世の当世具足で使われた形式は何枚かの鉄やネリ革の板を鎖(くさり)で連結して足袋(たび=くつした)の形にし、家地に綴(と)じ付けた物を言います。
こちらは臑当とは独立した防具になっており、見かけは足袋(たび=くつした)のようですが、守るのは足の甲(こう)の周囲だけですので底の部分には何も付いていません。
また、板のかわりに鎖(くさり)だけを使った物もあります。
装着する時はまず足袋(たび=くつした)をはいた上にこれを乗せ、それから草鞋を履(は)いてその紐(ひも)で固定しました。
格子縫い(こうしぬい) 旗指物で、裏表の二枚の布を縫い合わせたり布の強度を高めるために、格子状(こうしじょう)に縫い目を入れることを言います。
後勝山形兜(こうしょうざんなりかぶと) 天谷山形兜などで、兜鉢の後方が高く盛り上がって大きく張り出している形式のものを言います。
「後生山」高盛山「高勝山」とも書きます。
なお、これと反対のものは前勝山形兜と言います。
合子形兜(ごうすなりかぶと) 「ごうしなりかぶと」とも読みます。
「合子(ごうし)」とは椀(わん)などの蓋(ふた)付き小容器の総称で、これを象(かたど)って作られた変わり兜のことを言います。
高盛山(こうせいざん) 天辺が尖(とが)った大円山のことで、突パイと同じとされます。
高盛天谷山(こうせいてんこくざん) 天辺が高くなっていながら、天辺の座辺りが窪(くぼ)んでいる兜のことです。
公孫樹(こうそんじゅ) 銀杏(いちょう)のことです。
植えた後、孫(まご)の代になって実が食べられると言う意味だそうです。
高台寺蒔絵(こうだいじまきえ) 京都東山(きょうとひがしやま)の高台寺(こうだいじ)にある調度品に施された、桃山時代の蒔絵の様式のことです。
豊臣秀吉(とよとみひでよし)と妻(つま)の高台院(こうだいいん)が好(この)んで使ったと言われます。
平蒔絵蒔放し・漆(うるし)が乾く前に針で引っ掻(か)いて文様を描(えが)く「針描(はりがき)」梨子地で文様を描(えが)く「絵梨子地(えなしじ)」と言った技法を使って秋草(あきくさ)・桐(きり)・菊(きく)等の意匠(いしょう=デザイン)を描(えが)いたものが多く見られます。
向兎形兜(こうとなりかぶと) 変わり兜の一種で、真向兎を立体化したような、兎(うさぎ)の全身を模した兜のことです。
蝙蝠(こうもり) 翼手目(よくしゅもく=前足と胴体の間に膜があり、それを翼として飛行できる)と言われる哺乳類で、体の大きさは大小様々な種類があります。
「ネズミが百年生きると蝙蝠になる」と言う伝説から長寿のシンボル、「幸(こう)を盛(も)る」ので縁起が良い、「蝠」の字が「福」に通じる、中国語の発音が「福が寄って来る」と言う言葉と似ているなどの理由から縁起の良い生き物とされます。
「蚊食鳥(かくいどり)」「天鼠(てんそ)」「飛鼠(ひそ)」などとも呼ばれ、「鼠(ねずみ)」の文字が使われますが実際は「猫や馬などに近い動物」のようです。
蝙蝠扇(こうもりおおぎ) 5本の竹の骨(ほね)を持ち、片面だけに紙を貼った扇(おうぎ)のことです。
それまでの檜扇に比べて軽いので広く使われるようになりました。
蝙蝠」の字が使われたのは、「紙貼り扇(かみはりおうぎ)」が変化して「かわほり扇」となり、そこに縁起の良い生き物とされた「蝙蝠」の字があてられた、扇(おうぎ)を開くと蝙蝠が羽を広げた形に似ているから、などと言われているようです。
また、紙には文字や絵を書くことが多かったようです。
単に「かわほり」とも言います。
蝙蝠付(こうもりづけ) @:大鎧脇楯壷板馬手草摺射向草摺をそれぞれ連結するために使われた絵韋の部分を言います。
A:喉輪曲輪と本体を連結するための絵韋のことを言います。
いずれの場合も形が羽を広げた蝙蝠に似ているのでこう呼ばれます。
小刻座(こきざみざ) 天辺の座に使われる金具の一つで、丸い円盤状の縁に細かい刻み目が沢山入っているものを言います。
通常は玉縁の直ぐ下に入れられることが多いようですす。
切羽座(せっぱざ)」とも言います。
黒色火薬(こくしょくかやく) 硝石を約75%、硫黄(いおう)を約10%、木炭(もくたん)を約15%混ぜ合わせて作られた黒っぽい火薬のことです。
爆発力が弱く、主に物を発射するために用いられました。
現在では花火に使われています。
木屎(こくそ) 木の粉(こな)や繊維屑(せんいくず)などを漆(うるし)に混ぜた物を言います。
「刻苧」「木糞」とも書きます。
小具足(こぐそく) 兜・と言った甲冑本体に附属して、甲冑の隙間を覆って防御機能を補う装備品のことをいいます。
面具籠手佩楯臑当満智羅などを言います。
小具足出装(こぐそくいでたち) 陣中(じんちゅう)などで、小具足のみを着用した姿のことを言います。
この上に兜・を着ると完全武装になります。
「小具足姿(こぐそくすがた)」とも言います。
黒熊(こぐま) ヤクの毛を黒く染めた物のことを言います。
小桜韋威(こざくらかわおどし) 韋威の一つで、桜(さくら)の花の形をした細かな文様を藍(あい)で染めたを使って威したものを言います。
なお、下染めした上からさらに黄蘗(きはだ)や梔子(くちなし)等の黄色の植物染料を使って染めることを「黄返(きがえし)」と言い、この様な小桜を使って威したものは「小桜韋黄返威(こざくらかわきがえしおどし)」と呼びます。
小猿革(こさるがわ) 佩楯を腰に結ぶ腰紐(こしひも)の中央に付けられた熏韋製などの小さな座(ざ)の部分で、ここに引上綰緒留革が付きます。
腰当(こしあて) 革または布製の帯(おび)で、太刀を固定して腰に巻くために用います。
これを使うと太刀を確実に固定でき、の摩擦(まさつ)による揺絲への損傷(そんしょう)を防ぐ事もできます。
その反面、が固定されていることで刀(かたな)が抜き難くなったり、太刀が物に引っかかったりしたときなどは大変動き難いと言う欠点がありました。
このような理由から加賀(かが=石川県)の前田家では使用を禁じていたとも言われますが、実戦経験の無い江戸時代の武士達は好んで使用したようです。
腰刀(こしがたな) 鞘巻など、腰(こし)に差すのない短い刀(かたな)のことを言います。
「腰挿し(こしざし)」「腰の物(こしのもの)」とも言うようです。
腰韋附(こしかわづけ) 「腰革付」とも書き、「こしかわつけ」と呼ぶことも有るようですが、との取り外しが可能な草摺の形式を言います。
揺絲の上部に「腰韋(こしかわ)」と呼ばれる細い三つ折のを取り付け、この「腰韋(こしかわ)」部分を紐(ひも)や釦(ぼたん)などでに取り付けます。
腰鎖(こしぐさり) 揺絲部分の防御力を上げるため、揺絲裏に置いた防具のことです。
家地に鎖(くさり)を綴(と)じ付けたものです。
「槍止めの鎖(やりどめのくさり)」とも言います。
腰指(こしざし) @:旗指物の一つで、文字通り腰(こし)に差して使う物のことを言います。
「腰差」とも書き、「腰小旗(こしこばた)」とも言います。
A:旗指物を腰(こし)に差すために、の背(せ)の腰(こし)の辺りに付けられた合当理のような設備のことです。
左腰(ひだりごし)に付けられたようです。
腰白威(こしじろおどし) 腰取威で、白で威した物のことを言います。
腰取威(こしどりおどし) 色目の一つで、の腰(こし)・シコロの中ほど一、二段を他とは違う色で威した形式を言います。
白で威した場合は腰白威と言います。
腰巻板(こしまきのいた) 兜鉢が半球状を維持する為に、鉢(はち)周りを固定する板のことです。
この板にシコロ眉庇が付きます。
小姓(こしょう) 主君の側近くに仕え、身の回りの世話や秘書的な仕事をする家臣のことを言います。
「小性」「扈従」とも書きます。
五条袈裟(ごじょうげさ) 五枚の布で作られた袈裟をこう呼びます。
作業着として使われたほか、裹頭にも用いられました。
拵え(こしらえ) 刀(かたな)のに施す細工や塗りなどの装飾やその様式のことで、太刀拵打刀拵があります。
鐺(こじり) 打刀拵鯉口と反対側のの先端(せんたん)部分、あるいはそこに付ける角製(つのせい)または金属製の部品のことを言います。
太刀拵石突に相当(そうとう)する部品です。
「小臀」とも書きます。
ここが詰まると刀が抜き差しできなくなることから、「鐺が詰まる(こじりがつまる)=借金(しゃっきん)で動きがとれなくなる」、また武士同士がすれ違う時にここが触れ合ったことが喧嘩(けんか)の原因になったことから「鐺当て(こじりあて)・鐺咎め(こじりとがめ)・当て(さやあて)=些細(ささい)なことが原因の喧嘩(けんか)」等の言葉が生まれたそうです。
古頭形兜(こずなりかぶと) 「こずなり」とも呼ばれ、越中頭形兜日根野頭形兜より前の時代の頭形兜のことを言います。
平安時代末期頃から使われ始めたと考えられていますが、改造されたり張懸のベースに使われるなどして再利用されたため、その当時の物はほとんど残っていないようです。
基本的な特徴は、
@:兜鉢の縦横比(たてよこひ)が小さい。
A:全体的に小ぶりで丸みを帯(お)びている。
B:腰巻板の幅が広い。
C:頭上の板は前面の板の上に重なる。
D:天辺には大きな穴が一つ、または小さな穴が一つか、それを囲むように小さな穴が五つ開いている。
などが挙げられます。
小柄(こづか) 刀(かたな)の差裏にさし添(そ)え、雑用(ざつよう)などに用いた小刀(こがたな)のことです。
小手(こて) 腕(うで)の肘(ひじ)と手首との間の部分を言います。
籠手掛の管(こてがけのくだ) 当世具足籠手の肩先(かたさき)に付けられたのことを言います。
これを籠手付綰に入れて留(と)めます。
籠手付の管(こてつけのくだ)」籠手付の(こてつけのこはぜ)」とも言います。
籠手付の緒(こてつけのお) 籠手の肩(かた)の所に付けられた紐(ひも)のことで、古くはこの紐(ひも)で籠手を体に結び留(と)めていました。
「肩の緒(かたのお)」とも言います。
籠手付綰(こてつけのわな) 特に当世具足肩上で、肩(かた)の内側の辺りに設けられた輪(わ)のことを言います。
通常は責鞐となっており、ここに籠手掛の管を通し、籠手肩上に取り付けます。
「袖付の(そでつけのこはぜ)」・>「袖留の(そでとめのこはぜ)」「袖付綰(そでつけのわな)」とも言います。
鞐(こはぜ) 「笠鞐(かさこはぜ)」「責鞐(せめこはぜ)」の組によって構成され、肩上胸板または前立挙を連結する高紐肩上籠手を連結する部分の紐(ひも)などに付けられた仕掛(しか)けのことを言います。
「笠鞐(かさこはぜ)」は紐(ひも)の先端に付いている菱型(ひしがた)の部品で、この部分を「責鞐(せめこはぜ)」の先に出ている綰(わな=輪っか)の間に通します。
すると菱型(ひしがた)の両端が丁度「T」字型となって綰(わな=輪っか)の紐(ひも)に引っ掛かります。
「責鞐(せめこはぜ)」「笠鞐(かさこはぜ)」の相手となる紐(ひも)の綰(わな=輪っか)に通してある「S」字型もしくは「8」字型をした部品で、前後にスライドできるようになっています。
「笠鞐(かさこはぜ)」を綰(わな=輪っか)に通して引っ掛けた後、「責鞐(せめこはぜ)」を前にスライドさせて紐(ひも)の隙間を絞ることによって、「笠鞐(かさこはぜ)」をさらに抜け難くする仕組みになっています。
どちらも材質は金銅赤銅・水牛の角・象牙(ぞうげ)などが使われました。
現代のダッフルコートの釦(ぼたん)のような感じと言えば想像しやすいでしょうか。
小鰭(こびれ) 肩上の外端に付き、肩や籠手掛の管を守る鰭(ひれ)状の防具で、
一枚鉄製・三段札板製・鎖(くさり)製などがあります。
また、肩当襟廻と共に縫い付けた物や、蝶番(ちょうつがい)を使って取り付けられた物などもあるようです。
「袖隠し(そでかくし)」「小肩(こかた)」とも言います。
胡粉(ごふん) 室町時代以降に用いられた、「白色顔料(はくしょくがんりょう)」と言われる白い絵具のことです。
カキの殻(から)を焼いて砕(くだ)き、水簸・乾燥させた粉末のことを言います。
主な成分は炭酸カルシウムで、粉本置目などに使われました。
御幣(ごへい) 神道(しんとう)で用いられる供(そな)え物の一種で、2つの紙垂を竹または木でできた幣串(へいぐし)と呼ばれる棒(ぼう)の先に挟(はさ)んだものの事です。
多くの場合、紙垂は白い紙で作られ、実った稲穂(いなほ)が垂(た)れる様子を表しているとも言われますが、五色の紙や金箔銀箔を押したものが使われる場合もあります。
古くは神様に布(ぬの)を捧(ささ)げる時、棒(ぼう)に挟(はさ)んで供(そな)えていたものが変化したようです。
「幣束(へいそく)」「幣(ぬさ)」とも言います。
小縁韋(こべりがわ) 金具廻り絵韋などの縁(ふち)に伏縫で連結したで、単に「小縁(こべり)」とも言います。
五枚胴(ごまいどう) 蝶番(ちょうつがい)を体の四隅(よすみ)にあたる部分に配し、広げると全体が連(つら)なった五枚のパーツで構成される形式のをこう呼んでいます。
蝶番(ちょうつがい)を「・」で表すと、「右脇前板・前胴・左脇板・後胴・右脇後板」の四箇所蝶番(ちょうつがい)五枚分割となります。
をほぼ平面になるまで展開出来るのが特徴で、その典型的な物が「仙台胴(せんだいどう)」です。
仙台胴は別名「雪の下胴(ゆきのしたどう)」解胴(ほどきどう)」「奥州胴(おうしゅうどう)」「関東具足(かんとうぐそく)」とも呼ばれています。
高麗犬(こまいぬ) 犬に似た想像上の動物です。
魔よけの力があるといわれ、獅子と対(つい)にして神社の入口などの右側に置かれました。
古くは頭に角(つの)がない方は獅子として区別していたそうですが、後には混同(こんどう)されるようになりました。
「狛犬」とも書き、単に「こま」とも呼ばれるようです。
五枚張(ごまいばり) 兜鉢の外観を構成するのに不可欠な部分が五つ有る兜の事で、特に頭形兜に対して使われます。
五つの部分とは、@:天板、A:右側面、B:左側面、C:腰巻板、D:卸眉庇です。
通常、内眉庇は数に含みませんが、付眉庇が付いた兜で、内眉庇が兜鉢の構成に不可欠な場合は上記@〜C+内眉庇の五つで数えます。
腰巻板卸眉庇が複数の板で構成されている場合でも、それぞれ一つのまとまりとして数えます。
独楽塗(こまぬり) 漆塗り(うるしぬり)の技法の一つで、黒漆朱漆黄漆などの彩漆を同心円状に色分けして塗ることを言います。
独楽(こま)は「よく廻(まわ)る」ことから、ものごとがすべて順調(じゅんちょうに)進む、縁起の良い模様として好(この)まれたようです。
「高麗塗」とも書き、「こま」「独楽文様(こまもんよう)」とも言います。
御夢想(ごむそう) 夢の中で神仏(しんぶつ)からお告げを受けることや、そのお告げ自体のことを言います。
御免革(ごめんがわ) @:錦革で紫地以外のもののことを言います。
足利義満(あしかがよしみつ)が紫色の錦革を好み、その使用を一般に禁じたところからこう呼ばれます。
A:正平革のことです。
五輪塔(ごりんとう) 仏教で、宇宙を構成するとされる五つの要素「地・水・火・風・空」を表した塔(とう)のことで、石造りのものが一般的です。
塔(とう)は下から「■=地輪(ちりん)」・「●=水輪(すいりん)」・「▲=火輪(かりん)」・「半円=風輪(ふうりん)」・「宝珠=空輪(くうりん)」と積(つ)むのが基本形で、それぞれの部分に「地(ア)・水(ヴァ)・火(ラ)・風(カ)・空(キャ)」の梵字を刻(きざ)んだり、天台宗(てんだいしゅう)・日蓮宗(にちれんしゅう)・日蓮正宗(にちれんしょうしゅう)では上から「妙・法・蓮・華・経」、浄土宗(じょうどしゅう)では上から「南・無・阿弥・陀・仏」、禅宗(ぜんしゅう)では下から「地・水・火・風・空」の漢字を刻(きざ)む場合もあるほか、何も書かれていない場合も多いようです。
また、地輪(ちりん)が人が足を組む形、水輪(すいりん)・火輪(かりん)が手で印(いん)を結(むす)び、風輪(ふうりん)が顔、空輪(くうりん)が頭、と人が座禅(ざぜん)をする姿とも言われています。
木製のものは卒塔婆と呼びます。
権現(ごんげん) 「権(か)りの姿で現(あら)われる」という意味で、仏教の仏様が日本の神道の神様に姿を変えたものとされます。
金剛杵(こんごうしょ) 「ヴァジュラ」「ヴァジラ」とも言い、密教(みっきょう)やチベット仏教などの仏教で用いられる法具(ほうぐ)で、インド神話に登場する雷(かみなり)を操(あやつ)る武器を模(かたど)っています。
基本的には棒(ぼう)の両端(りょうはじ)に槍状(やりじょう)の刃などが付いた形をしています。
棒(ぼう)の中央には鬼目(きもく)と呼ばれる部分があり、ここを握ることで大日如来(だいにちにょらい)と一体化できると言われているようです。
刃の数や形状・棒(ぼう)の飾りなどによって独鈷杵三鈷杵などのようにいくつかの種類に分けられます。
「金剛(こんごう)」とはダイヤモンドもしくは非常に硬(かた)い金属の意味で、この法具(ほうぐ)がどんなに悪い心・欲望(よくぼう)・怒りの心をも打ち砕(くだ)き、悟(さと)りを開く心にしてくれるとされています。
紺青(こんじょう) 青色を出すための素材の一つで、フェロシアン化カリウム水溶液(すいようえき)に硫化第一鉄(りゅうかだいいちてつ)を混ぜ合わせ、さらに塩素酸(えんそさん)ナトリウムを加えて作られるそうです。
金銅(こんどう)
銀銅(ぎんどう)
銅または銅を主とする金属に、金を鍍金したものを言います。
銀を鍍金したものは「銀銅(ぎんどう)」と言います。
さ行 解説
犀(さい) 想像上の動物で、「体形は鹿・背中には亀の甲羅(こうら)・頭には角(つの)が一本・体に風車紋・脚(あし)は細く偶蹄・腹には蛇腹がある」とされます。
霊獣(れいじゅう=めでたいけもの)とされ、建築装飾・絵画・工芸品などの意匠(いしょう=デザイン)として使われました。
雑賀兜(さいかかぶと) 雑賀鉢を用いた兜のことです。
「さいがかぶと」とも言います。
犀頭兜(さいがしらかぶと) の頭(あたま)を模した変わり兜のことです。
「皐の頭(さいのかしら)」とも言います。
雑賀鉢(さいかばち) 室町時代末期頃に紀州(きしゅう=和歌山県)雑賀(さいか)の甲冑師によって作られた兜鉢の事です。
鍛(きた)えの良い鉄を切り出して模様をつけたり、矧(は)ぎ止めに鋲(びょう)を使うところなどに特徴のある、異国的(いこくてき)な雰囲気の兜鉢です。
通常、表面は鉄錆地で、八枚張りの場合が多いようですが七枚張りや置手拭形兜などの形式もあります。
「さいがばち」とも言います。
采幣(さいはい) 軍隊への合図・指揮(しき)をとるのに用いた道具のことで、室町時代末期頃から行われました。
細かく裂(さ)いた紙を束(たば)ねた物を紐(ひも)で棒の先に結び付けた形式が一般的ですが、紙の代わりにヤクの毛などを用いた物などもあります。
もともとは白の紙が使われていたようですが、江戸時代には身分に応じて紙の色に規定があったようです。
「采配」「再拝」とも書きます。
この他、指揮道具には軍配指揮棒と呼ばれる物もあります。
采幣付鐶(さいはいづけのかん) 両乳鐶の一つで、江戸時代になって当世具足への装飾として前立挙右側に付けられた鐶(かん=輪)のことを言います。
采幣の紐(ひも)を結ぶための鐶(かん=輪)だとされたのでこう呼ばれますが、実際その様に使われたのかは不明です。
逆板(さかいた) 特に大鎧後立挙の上から二枚目の板のことを言います。
通常のとは逆に、上のの内側に垂(た)れて下を覆う形になっているのでこう呼ばれます。
背中の足掻(あが)きを良くするためと言われています。
この板に総角付環が付くことから、「総角付板(あげまきつけのいた)」とも言います。
逆威(さかおどし) 板札の下の端(はじ)近くに威糸を通して威す手法です。
通常の威しでは次に威す段は前の段の上に重なっていきますが、この方法では次に威す段が前の段の下に重なっていくため、こう呼ばれます。
威糸が前の段の下に隠(かく)れて見えなくなるため、威糸を切られなくするための手法だと言われています。
逆沢瀉威(さかおもだかおどし) 色目の一つで、沢瀉威と反対に逆三角形「▽」の模様を威した物を言います。
「逆剪草威」とも書きます。
榊座(さかきざ) 天辺の座に使われる金具の一つで、6枚位の葉を持ったものを言います。
「榊葉座(さかきばざ)」とも言います。
逆頬空穂(さかつらうつぼ) 空穂の中でも特に表面を熊(くま)や猪(いのしし)の毛皮で包んだ物のことを言います。
「逆頬(さかつら)」とはその毛並(けなみ)が逆さまに上へ向かっている様子を表した言葉です。
腰(こし)への当たりを押さえるために毛皮で包んだと言われています。
矢を入れる容器には他に矢籠などがあります。
逆頬箙(さかつらえびら) の中でも特に表面を熊(くま)や猪(いのしし)の毛皮で包んだ物のことを言います。
「逆頬(さかつら)」とはその毛並(けなみ)が逆さまに上へ向かっている様子を表した言葉です。
腰(こし)への当たりを押さえるために毛皮で包んだと言われています。
矢を入れる容器には他に空穂矢籠などがあります。
作形(さくなり) @:兜鉢の形で後勝山形兜の一種とされ、前がやや低く、後がわずかに高い形とされます。
A:江戸時代の甲冑師、明珍家(みょうちんけ)が自家で作った大円山等の兜を称して呼んだものとされます。
「作の兜(さくのかぶと)」とも言い、「作成」とも書きます。
作の甲冑(さくのかっちゅう) 江戸時代の甲冑師、明珍家(みょうちんけ)が自家で作った甲冑のことを称してこう呼んだようです。
探金(さぐりがね) 返角が小型化した突起(とっき)のことを指すようです。
柘榴形兜(ざくろなりかぶと) 柘榴(ざくろ)を模した兜のことです。
柘榴(ざくろ)は赤い花をつける落葉樹で、実は球状で熟(じゅく)すと裂けて赤い肉のある種子が現れます。
「石榴」とも書きます。
下げ緒(さげお) 刀(かたな)を帯(おび)に結び付けるために栗形に通す紐(ひも)のことです。
「下げ(さげ)」とも言います。
提げ物(さげもの) 巾着印籠・煙草入れ(たばこいれ)など、帯(おび)から提(さ)げて持ち歩いた小道具のことです。
通常、根付がついています。
栄螺形兜(さざえなりかぶと) 貝形兜の一つで、張懸打出しで栄螺(さざえ)を模して作られた兜のことです。
栄螺(さざえ)は巻貝(まきがい)の一種で、多くは棘(とげ)のあるごつごつした殻(から)をしています。
棘(とげ)の威嚇的(いかくてき)な感じ、守りの堅(かた)い殻(から)の感じ、あるいは名前に「栄(さかえる)」と言う縁起の良い文字が含まれているなどの理由から、武具の意匠(いしょう=デザイン)として用いられたと言われています。
笹縁(ささべり) 補強や装飾のために衣服・袋・ござなどの縁(ふち)に平たい組紐や布を被せ、縫い目の見えないように縫い包めて細く縁取(ふちど)りすることを言います。
甲冑では浮張の縁(ふち)・越中ジコロ裾板籠手の端(はし)などに覆輪を施す例が見られます。
笹の葉の縁(へり)に白い線があるのに似ていることからこう呼ばれ、「ささへり」「ささっぺい」とも言い、韋覆輪とも言うようです。
笹眉(ささまゆ) 笹(ささ)の葉に似た形の打眉のことです。
差裏(さしうら) の裏側(うらがわ)のことです。
打刀を腰(こし)に差した時、の体に接する側(がわ)のことで、小柄が付く場合もあります。
反対側は差表と言います。
差表(さしおもて) の表側(おもてがわ)のことです。
打刀を腰(こし)に差した時、の体に接しない側(がわ)のことで、が付く場合もあります。
反対側は差裏と言います。
差縄(さしなわ) @:手綱と共に馬のに結びつけた縄(なわ)のことで、馬を引くときや馬をつなぎとめる時に使われました。
「指縄」とも書き、「差し綱(さしつな)」「小口縄(こぐちなわ)」「手縄(てなわ・たなわ)」「口取り縄(くちとりなわ)」とも言います。
片差縄諸差縄とがあるそうです。
A:罪人(ざいにん)を縛(しばる)る縄(なわ)のことです。
「捕り縄(とりなわ)」とも言います。
刺鉄(さすが) ホ具に付いている、釘(くぎ)形の棒(ぼう)のことです。
水緒韋などの革帯(かわおび)に開けられた穴に通して、帯(おび)を固定するのに使われます。
「刺金」とも書きます。
薩摩筒(さつまづつ) 薩摩(さつま=鹿児島県)で作られていた火縄銃で、種子島に伝来した火縄銃の形状を台木の形などによく残しているのが特徴だと言われます。
火挟を動かすカラクリと呼ばれる機構にゼンマイバネを使用し、火挟が小さいと言う特徴もあります。
札(さね) 「小札(こざね)」とも言い、甲冑の各部分を構成する縦長の部品です。
鉄やネリ革などで作られ、三目札並札盛上札伊予札などがあります。
「小実」とも書きます。
札板(さねいた) を重ね威して構成された板のことです。
札頭(さねがしら) 札板の上部のことです。
鯖尾形兜(さばおなりかぶと) 鯖(さば)の尾鰭(おびれ)を模(かたど)った「V」字型の変わり兜のことを言います。
これと似た物に燕尾形兜があり、両者を明確に区別することは難しいとされますが、「V」字型の切り込みが浅(あさ)くて尾が左右に開いている物を鯖尾(さばお)、切り込みが深くて尾が立ち上がっている物を燕尾(えんび)とする説もあるようです。
「鯖尾兜(さばおかぶと)」「さばのおかぶと」とも言います。
座盤(ざばん) 籠手などの小手部分や二の腕部分を保護するために家地に縫い付けてある鉄板のことを言い、広義には板所とされます。
錆漆(さびうるし) 水で練った砥の粉生漆を混ぜた、鉄の錆色に似せた漆(うるし)のことです。
錆塗や下地の塗りに使われるほか、絵や模様の輪郭(りんかく)を描いたり、漆(うるし)を盛り上げたりするのに用いられます。
「さび」とも言います。
錆塗(さびぬり) 錆漆を塗ることや、塗ったもののことを言います。
「錆色塗(さびいろぬり)」とも言います。
座星(ざほし) 星鋲の根元(ねもと)に「小刻座(こきざみざ)」と呼ばれる、花弁(はなびら)のように小刻(こきざ)みを入れた装飾用の土台(どだい)があるものを言います。
鮫皮(さめがわ) 鮫(さめ)と言っても、実際には南シナ海やインド洋に生息するエイの一種であるツカエイなどの「真鮫(まざめ)」と呼ばれる魚の皮(かわ)のことです。
背中の中央の皮(かわ)をはがして乾燥させたもので、表面がざらざらしていることから滑(すべ)り止めとして刀剣(とうけん)のなどに使用されました。
「沙皮」とも書きます。
佐目毛(さめげ) 馬の毛色の一つで、全身や長い毛は象牙色(ぞうげいろ)、眼は青色、皮膚(ひふ)はピンクの馬のことを言います。
昔、この毛色は吉相(きっそう=縁起が良い)と考えられ、神馬として奉納(ほうのう)されました。
稀(まれ)に色の違いによって「栗佐目毛(くりさめげ)」「鹿佐目毛(しかさめげ)」「青佐目毛(あおさめげ)」と分けて呼ぶこともあるようです。
鞘(さや) 刀剣(とうけん)の刃(は)の部分を入れるための筒(つつ)のことです。
「刀室(とうしつ)」とも言い、塗りや装飾を施したものなどいろいろな種類あがあります。
刃(は)の反(そ)りに合わせて作られているため、同じ組み合わせでないと入らないことから「反りが合わない(そりがあわない)=相性(あいしょう)が良くない」・「元の鞘に納まる=仲直(なかなお)りする」、また武士同士がすれ違う時にここが触れ合ったことが喧嘩(けんか)の原因になったことから「鞘当て(さやあて)・当て(こじりあて)・咎め(こじりとがめ)=些細(ささい)なことが原因の喧嘩(けんか)」等の言葉が生まれたそうです。
鞘巻(さやまき) 腰刀の一種で、葛藤の蔓(つる)などを巻きつけたもののことを言います。
中世以降は実際に蔓(つる)を巻き付けず、巻きつけた様子を彫刻して漆(うるし)を塗ったものが多くなったようです。
猿手(さるで) 太刀兜金につけられた鐶(かん=輪)のことで、ここに手抜緒を通します。
あるいは手抜緒を形式化したものとも言われているようです。
「さるて」とも読み、「結金(むすびがね)」とも言います。
猿菱(さるびし) 菱縫紅猿鞣が使われたことから、菱縫に使う赤いのことをこう呼びます。
後に馬のが使われるようになっても、この名称が使われたようです。
猿頬(さるぼお) @:燕頬と同じく半頬の一つですが、顎(あご)から両頬(りょうほほ)のラインだけでなく、頬(ほほ)の部分までを覆うようにした物のことです。
形が猿(さる)の顔の毛の生(は)え際(ぎわ)に似ているのでこう呼ばれます。
「猿面(さるめん)」「宇田頬(うだぼお)」「宇多頬(うだぼお)」「小田頬(おだぼお)」とも言います。
A:顎(あご)と頬(ほほ)を守る面具の俗称(ぞくしょう=正式名称ではない、世間での呼び名)のことで、頬当のことです。
B:半首のことです。
サワシ篦(さわしの) 火色篦を夏の二ヶ月間程、水田の泥の中に埋めて時折、手入れしながら黒く変色させたものを日陰干しにして十分に矯(た)め、漆拭きして作ったのことを言います。
が歪み難いという利点がありますが、折れ易いという欠点もあるようです。
三懸(さんがい) @:面懸胸懸尻懸の三つの馬具の総称です。
帯三懸房三懸があります。
「押掛(おしかけ)」とも言います。
A:胸懸四懸であっても、特に区別をせずにこう呼ぶ場合もあるようです。
算木紋(さんぎもん) 算木(さんぎ)とは和算で計算に用いた四角い棒(ぼう)のことで、これを図案化した家紋(かもん)を言います。
算木(さんぎ)は六本一組で用いられ、易(えき=占(うらな)い)の八卦にも用いられていたことから八卦紋(はっけもん)」とも呼ばれます。
棒(ぼう)の数や配置などによっていくつかの種類があります。
三具(さんぐ) 籠手臑当佩楯の三つの小具足のことです。
残欠(ざんけつ) 歴史的遺物などで、元の形を欠いて一部だけ残った物のことを言います。
但し、陶磁器などのかけらについてはこう呼ばないようです。
三原組織(さんげんそしき) 織物を織る基本的(きほんてき)な三つの織り方のことで、平織綾織繻子織のことを言います。
三光鋲(さんこうびょう) 兜鉢眉庇を取り付けるために打った三個の鋲(びょう)のことを言います。
ちなみに「三光(さんこう)」とは「太陽・月・星」のことです。
「さんこうのびょう」とも言います。
三鈷剣(さんこけん) 剣(けん)のの部分が三鈷杵の形をしたものをこう呼びます。
三鈷杵(さんこしょ) 金剛杵の中で、柄(え)の両端(りょうはじ)にフォークのように三本に分かれた刃が付いた形状の物のことを言います。
三尺革(さんじゃくがわ) 馬の耳の後ろあたりの首に回して用いた帯状(おびじょう)の馬具のことです。
面懸がずれるのを防ぐため、近世(きんせい)になって使われました。
三社神号(さんじゃしんごう) 一般的には「天照皇大神(あまてらすおおみかみ)」「八幡大菩薩(はちまんだいぼさつ)」「春日大明神(かすがだいみょうじん)」の三柱(みはしら=3人)の神様の名前のことです。
場合によっては別の神様の名前が入っていることもあります。
三社の板(さんじゃのいた) 兜鉢の後ろ正中の板を言います。
この板の裏に三社神号を鐫(き)ったりすることがあるのでこう呼ばれます。
銘の板とも言います。
桟留革(さんとめがわ) インドのマドラス(現チェンナイ)から輸入された、皺(しわ)のあるのことを言います。
のちには日本国内でも作られるようになりました。
「桟留(さんとめ)」とはマドラス地方に布教(ふきょう)に来たと言われる聖トーマス(セント・トーマス)を指すポルトガル語が語源とされます。
三宝荒神(さんぽうこうじん) 仏教で三つの宝(たから)とされる「仏(ぶつ=おしゃかさま)」・「法(ほう=きょうてん)」・「僧(そう=おしえを実行する人)」を守護(しゅご)するとされる神様のことで、通常「荒神さま」と略して呼ばれることが多いようです。
文字通り荒(あら)ぶる神様で、怒ると全てを破壊しつくす力を持っているとされます。
三宝荒神形兜(さんぽうこうじんなりかぶと) 三宝荒神を象(かたど)った兜のことです。
三枚胴(さんまいどう) 蝶番(ちょうつがい)を二箇所に設けて三枚のパーツで構成された形式のをこう呼んでいます。
蝶番(ちょうつがい)を入れる場所によって何種類か存在し、蝶番(ちょうつがい)を「・」で表すと、
@:右脇板・前胴・左脇板の腹当
A:前胴後胴・右脇板の特殊(とくしゅ)型
B:前胴表側・後胴前胴内側の前胴二枚重(まえどうにまいがさね)型
の例があります。
三枚張(さんまいばり) 兜鉢の外観を構成するのに不可欠な部分が三つ有る兜の事で、特に古頭形兜に対して使われます。
三つの部分とは、@:天板、A:右側面、B:左側面で、通常、腰巻板は含みません。
地板(じいた) 兜鉢篠垂を置く所の下に敷かれた板(いた)のことを言います。
金銅のほか銀銅、漆塗り(うるしぬり)、鉄地(てつじ)のままの場合もあります。
シヴァ神(しヴァしん) サンスクリット語(=古代インドで使われた言葉)で「めでたい」を意味するヒンドゥー教の神様で、後にブラフマー神ヴィシュヌ神とともに三大神(さんだいしん)の一人とされました。
破壊と再生を司(つかさど)る神とされ、ブラフマー神が宇宙を創造し、ヴィシュヌ神が維持し、この神が破壊するとも言われます。
また、山岳(さんがく)と縁(えん)の深い神様とも言われているようです。
仏教に取り込まれて「大自在天(だいじざいてん)」と呼ばれています。
四懸(しがい) 古くは1本だった胸懸を2本の紐(ひも)を用いる方式にしたもののことです。
三懸+1本」の意味でこう呼びます。
前輪の両側に房(ふさ)付きの紐(ひも)が垂(た)れるのが特徴です。
ちなみに胸懸が1本だった時代は前輪の右側にだけ房(ふさ)付きの紐(ひも)が垂(た)れていました。
本数を特に区別せずに三懸と呼ばれる場合もあるようです。
仕返しの甲冑(しかえしのかっちゅう) 戦場に棄(す)てられていたり、戦死者から剥(は)ぎ取られた甲冑が甲冑師の元に持ち込まれ、そこで部品を再利用して作り直された甲冑のことです。
地金(じがね) @:鍍金などの土台(どだい)や下地(したじ)となる金属のことです。
A:細工物(さいくもの)の材料にする金属のことです。
B:貨幣(かへい)などの材料として溶かして使う金属の塊(かたまり)のことです。
「じきん」とも言います。
獅噛(しかみ) 獅子の面を意匠(いしょう=デザイン)とした兜の前立のことです。
元々は獅子でしたが、次第に角(つの)を付けた鬼面(きめん)に近い意匠(いしょう=デザイン)へと変わり、名称も「魅」の文字を用いて「しかみ」と呼ぶようになりました。
口から牙(きば)を見せた様子が、物に噛み付いて離さないイメージを連想(れんそう)させることから、「獅噛付く(しがみつく)」の語源になったとする説もあるようです。
敷(しき) 下縅の際、綴紐(とじひも)の下に敷いた紐状(ひもじょう)の細い革や鉄のことです。
札板の形を保(たも)ち、崩(くず)れないようにするための補助として使われました。
古くは革が用いられましたが、後には鉄も使われるようになりました。
革製のものを「敷革(しきがわ)」力韋とも言い、鉄製の物を「敷金(しきがね)」とも言います。
「緯(ぬき)」とも言います。
指揮棒(しきぼう) 文字通り、軍隊を指揮するための棒です。
最上義光(もがみよしあき)が使ったとされる鉄製の物は重さが1.7kgもあるのでかなり腕力(わんりょく)があったと思われるほか、緊急時には武器として使うことも考えられていたのではないかと想像されます。
この他、指揮道具には采幣軍配と呼ばれる物もあります。
敷目威(しきめおどし) @:威目(おどしめ)が三列あるのことを言います。
の重ねが厚くなるので、より頑丈になります。
A:威毛市松模様を描(えが)いて威す手法のことです。
B:二色の威糸草摺に斜めに仕切目(しきりめ)を立てて威した物を言います。
C:樫鳥威の別名です。
重籐弓(しげとうのゆみ) 日本の弓は木と竹をで貼り合わせ、固定の為に上から糸を巻いて漆で固め、更に補強と装飾を兼ねてを巻き付けますが、この巻き付け個所が所々(ところどころ)にある弓の事を言います。
の巻き方は多くの種類があるようですが、一般的にユヅカの上に三十六箇所、下に二十八箇所巻く、または上に十九箇所、下に九箇所巻くのが正式だとされているようです。
を滋く(しげく=沢山)巻く」のが語源とも言われているようです。
「しげどうのゆみ」とも言い、「滋籐弓」とも書きます。
矢籠(しこ) 矢を盛(も)って腰に差すための簡単な容器のことで、武士だけでなく猟師(りょうし)なども使っていたそうです。
「矢壺(しこ)」「尻籠(しこ)」とも書きます。
弓台を使えば弓とともに運ぶことが出来ます。
矢を入れる容器には他に空穂などがあります。
獅子(しし) ライオンをもとに作られたとされる想像上の動物です。
高麗犬と対(つい)にして神社の入口などの左側に置かれました。
古くは頭に角(つの)があるのは高麗犬として区別していたようですが、後には混同されるようになりました。
「唐獅子(からじし)」とも言います。
獅子頭形兜(ししがしらなりかぶと) 獅子の頭(あたま)を象(かたど)った変わり兜のことです。
自身指物(じしんさしもの) 武将個人が自分の好(この)む意匠(いしょう=デザイン)で作らせた指物のことを言います。
指物によって個人が特定されるため、武勇に優れた者でないと使用が許されず、使えるのも本人の一代限(いちだいかぎ)りで代々継承するものではないとされています。
「別指物(べつさしもの)」とも言います。
歯槽間縁(しそうかんえん) 馬の口の中で前歯(まえば)と奥歯(おくば)の間にある、歯の生えてこない隙間のことを言います。
この隙間があるおかげでを用いて馬を操(あやつ)る事が出来ます。
歯朶(しだ) 蕨(わらび)・薇(ぜんまい)・裏白(うらじろ)などのシダ植物の総称(そうしょう)ですが、古くは特に裏白(うらじろ)のことを指したようです。
花も種(たね)もつけないのに増える・次々と葉が出る様子や、歳(とし)を重ねる意味の「齢垂(しだ)る」・「齢足(しだ)る」に当てて子孫繁栄(しそんはんえい)や長寿(ちょうじゅ)の縁起物とされ、正月飾り(しょうがつかざり)や紋様などに使われています。
また裏白(うらじろ)と言う呼び名は葉の裏が白いことに因(ちな)んでいるようですが、そこから「裏が白い=二心(ふたごころ)が無い」と解釈(かいしゃく)する説もあるようです。
「羊歯」とも書き、「勝草(かちぐさ)」「貫衆(かんじゅう)」の別名もあるようです。
下縅(したがらみ) を重ねて横に連結し、札板を作ることを言います。
連結には牛や馬の皮、あるいは犬の皮を細く切った紐(ひも)が使われたようです。
「したからみ」とも読み、「横縅(よこからみ)」「横縫(よこぬい)」とも言います。
古くは「揺札(ゆるぎざね)」と言って紐(ひも)で連結したままでしたが、中世からは連結した上に漆(うるし)を塗って固める「塗固め(ぬりかため)」となり、さらに近世ではを一緒に縫い込むようになりました。
を用いない切付札などでも行われることがあったようです。
歯朶韋威(しだがわおどし) 韋威の一つで、歯朶の文様を紺地(こんじ)に白で抜き出したを使って威したものを言います。
下鞍(したぐら) 「鞍下(くらした)」とも言い、鞍橋の下に敷いて馬の両脇に当てる馬具のことです。
馬の背中や両脇の保護のために使用します。
通常は二枚重ねにして用い、上側を切付、下側を肌付と言います。
下ジコロ(したじころ) 重ジコロで内側にあるシコロのことを言います。
兜鉢の下縁(したべり)に付けられ、鎖ジコロ板物伊予札などを家地に仕付(しつ)けた簡単な割ジコロが一般的です。
舌長鐙(したながあぶみ) の形式の一つで、足を置く「舌(した)」と呼ばれる部分が半舌鐙よりさらに長くなり、踵(かかと)まで載(の)せられるようになった物を言います。
鎌倉時代以降の形式とされます。
下髭(したひげ) 目下頬で唇(くちびる)の下、顎(あご)の所に植えられた髭のことを言います。
「さげひげ」とも言います。
繻珍(しちん) 中国明代に始まったと言われる、繻子織の布地に絵緯(えぬき)と呼ばれる緯糸(よこいと)を使って文様を織り出した織物のことです。
「繻珎」「朱珍」とも書き、「しゅちん」とも言います。
また、七色以上の絵緯を用いたので「七糸緞(しちしたん)」「七彩(しちさい)」とも言われたようです。
執加緒(しっかのお) 冠板裏側中央に設けられた緒(お)のことです。
革紐(かわひも)が一般的ですが、古くは組紐(くみひも)が用いられ、組紐の場合は肩上中央の茱萸金物四方手結びにしていた様ですが、革紐の場合は蝶々結びで結わえ付ける様です。
を固定する最も重要な緒で、「中緒(なかのお)」とも言います。
仕付襟(しつけえり) の鉄地(てつじ)を盛り上げて、と一体化させた襟廻のことです。
南蛮胴によく見られます。
仕付籠手(しつけごて) 仕付袖が付いた籠手の事です。
毘沙門籠手(びしゃもんごて)」「仁王籠手(におうごて)」とも言います。
仕付袖(しつけそで) 籠手に綴(と)じ付け、取り外しが出来ない形式のの事です。
小型の折冠を設け、の下段前方を斜めに切り欠いたものが一般的で、腕(うで)になじませるため蝶番(ちょうつがい)で縦(たて)に分割したり、腕(うで)に沿って湾曲(わんきょく)させたものなどがあります。
このようなの付いた籠手仕付籠手と言います。
後輪(しづわ) 鞍橋の後部で、山形に高くなっている板状の部分を言います。
居木によって前輪とつながれています。
「尻輪(しりわ)」とも書き、「あとわ」とも言います。
紙垂(しで) 注連縄(しめなわ)や御幣などにつけて垂(た)らす、段々折(だんだんお)りに連(つら)なった紙のことです。
古くは木綿が使われていましたが、今では白い紙で作られるのが一般的です。
また、紙の切り方・折り方・垂(た)らす数などは流派によって異なるようです。
稲穂(いなほ)が実る頃に雷(かみなり)が多く、雷(かみなり)が稲穂(いなほ)を実らせると信じられていたことから「稲妻(いなづま=稲の夫)」を表しているとされます。
「四手」「垂」とも書きます。
四天王(してんのう) 仏教で東西南北(とうざいなんぼく)の方向を守るとされる四柱の守護神(しゅごしん)のことで、東の「持国天(じこくてん)」、西の「広目天(こうもくてん)」、南の「増長天(ぞうちょうてん)」、北の「多聞天(たもんてん)」のことを言います。
甲冑を着て小鬼(こおに)を踏(ふ)みつけて立っている姿(すがた)が一般的です。
また四柱の中で一番強いとされる「多聞天(たもんてん)」は別名を「毘沙門天(びしゃもんてん)」と言い、戦(いくさ)や勝負(しょうぶ)の神として単独で信仰されています。
四天の鋲(してんのびょう) 筋兜で、兜鉢の前後それぞれ斜め方向に二個、合計四個ある鋲(びょう)のことで、響の孔の上に打(う)たれています。
響の孔に通した忍緒が切られるのを防ぐ目的で打たれているとされ、四個あるところから四天王に例えたのが名前の由来(ゆらい)とされます。
「四天の座(してんのざ)」「四天の星(してんのほし)」とも言います。
鵐(しとど) アオジ・ノジコ・ホオジロ・ホオアカなどの小鳥の古い総称です。
「巫鳥」とも書きます。
鵐目(しとどめ) 穴の縁(ふち)を装飾するための金具のことで、栗形のように紐(ひも)を通すための穴にも使われています。
形がの目に似ているのが語源とされます。
撓い(しない) 旗の縦辺(たてへん)のみを竿(さお)に通した旗指物のことを言います。
風を受けると「撓う(しなう=まがる)」のが語源のようですが、との明確な区別は難しいとされます。
「志奈伊」とも書きます。
品韋威(しながわおどし) 韋威の一つで、歯朶韋威がなまったものとされ、「科韋威」とも書きます。
信濃先方衆(しなのさきかたしゅう) 武田家(たけだけ)の家臣団の一つで、信濃(しなの=長野県)の武将で構成された軍団のことです。
神人(じにん) 中世、神社に仕える代わりにその保護を受け、税(ぜい)を免除(めんじょ)されるなど、宗教的・身分的な特権を与えられた人のことです。
芸能者・商工業者・武士・百姓出身の者もいたようです。
「じんにん」とも言い、「神民(じんみん/しんみん)」とも言います。
篠(しの) 籠手臑当佩楯などに使われた長細く四角い板棒状の部品を言い、大きさによって「大篠(おおしの)」「小篠(こしの)」に分けられます。
表面の平らな物を「平篠(ひらしの)」を立てた物を「角篠(かくしの)」、ふくらみのある物を「丸篠(まるしの)」あるいは「馬刀殻篠(まてがらしの)」と言い、江戸時代にはさらに表面に細い打出し「麦藁篠(むぎわらしの)」、胡麻(ごま)の殻(から)に似た「胡麻殻(ごまがらしの)」なども現れました。
板所の一つとされます。
鎬(しのぎ) @:板を「∧」字型に折り曲げて作られた、山状(やまじょう)の筋(すじ)のことを言います。
南蛮胴などでは正面中央部分に高く打出され、当った矢弾槍刃(やだまそうじん)を貫通させず左右に逸(そ)らせる働きがあります。
この手法はだけではなく、兜などでも見られます。
A:刀身(とうしん)で最も厚い部分で、刃(は)と棟(むね)の間にある線のところを言います。
ここが削れるほど激しく戦う様子から「鎬を削る(しのぎをけずる)=激しく争(あらそ)う」と言う言葉が生まれたようです。
篠垂(しのだれ) 兜の天辺の座から、前・前後・前後左右などに垂(た)らした筋金のことです。
もとは兜鉢の補強材であったと考えられていますが、後には装飾の意味合いが強くなりました。
時代によって筋金の幅や長さ、本数が異なります。
また先端(せんたん)の形も花先形(はなさきがた)・片花先形(かたはなさきがた)などがあり、素材も鉄・金銅・銀・白鑞(しろめ)などがあります。
星兜の場合は星鋲を打ち、筋兜の場合は星鋲を打たないのが一般的です。
下に地板を敷く場合もあります。
「鎬垂」とも書き、「しなだり」「しなだれ」とも言います。
忍緒(しのびのお) 兜を頭に固定するために顎(あご)の所で結ぶ紐(ひも)の事です。
古くは響の孔に紐(ひも)を取り付けていましたが、後には兜の腰巻板の裏に付けた環(わ)に紐(ひも)を通す方式になりました。
紐(ひも)には組紐丸絎けなどが使われたようです。
「兜の緒(かぶとのお)」「勝ち緒(かちお)」とも言い、「しめお」と読む場合も有るようです。
芝引(しばひき) @:太刀石突から口金の方に向かって施された覆輪のことで、太刀を佩(は)いた(=着けた)時に下側に来る方のことです。
反対側は雨覆と言い、一般に雨覆の方が長さが短いようです。
「芝引金(しばひきがね)」とも言います。
A:火縄銃の台木の後端(こうたん)のことを言います。
四半(しはん) 指物の一つで、幅と長さの比率が2:3の旗のことを言います。
通常、「Г」字型をした竿(さお)などで2辺を固定し、受筒に差して用います。
さまざまな色や図案(ずあん)の物があり、合印として用いたり、特に武勇(ぶゆう)に優(すぐ)れた者は自身指物を使うことが許されていたため種類が沢山あります。
また、竿(さお)で固定していない辺(へん)にフリル状の飾りをつけた「綺羅(きら)」、三角形の切り込みを連続して入れた「幡連(ばれん)」、上の片隅(かたすみ)を切り落とした「角切(すみきり)」、下から斜め上に切り落としたような「丁杖(つえつき)」などと呼ばれる形もあります。
「幟半」とも書き、大きな物は特に「大四半(おおしはん)」とも言うようです。
これと似た物に四方があります。
四分一(しぶいち) 銅3に対して銀1を加えた金属で、「四分一銀(しぶいちぎん)」「朧銀(おぼろぎん)」とも言います。
四方(しほう) 指物の一つで、幅と長さの比率が1:1の正方形をした旗のことを言います。
さまざまな色や図案の物があり、合印として用いたり、特に武勇に優れた者は自身指物を使うことが許されていたため種類が沢山あります。
これと似た物に四半があります。
四方白(しほうじろ) 兜鉢の前後左右に地板篠垂がある兜のことです。
皺韋(しぼかわ) 「しわがわ」とも読み、馬韋・牛韋などに漆(うるし)をかけて表面に皺(しわ)を立てた物のことです。
蟇蛙(ひきがえる)の肌に似ているので、「蟇肌(ひきはだ)」「引肌(ひきはだ)」とも言います。
四方手(しほで) 前輪後輪の左右に二箇所づつ、合計四箇所についている、金物(かなもの)の輪を付けた革紐(かわひも)のことをいいます。
胸懸尻懸を結びつける部分で、「しおで」とも言い、「四緒手」とも書きます。
四方手結び(しほでむすび) 受緒執加緒懸緒水呑緒を結ぶのに多く用いられた結び方で、緒(お)を「α(アルファ)」字型に交差させた結び方を言います。
「しおでむすび」とも言います。
地蒔き(じまき) 蒔絵で、文様以外の部分に金・銀・錫(すず)などの粉を蒔(ま)くこと、または蒔(ま)いた所のことを言います。
沃懸地梨子地平目地などがあります。
標返鎖(しめかえしくさり) 鎖(くさり)を構成する輪を引き違えにして二周巻いた鎖(くさり)のことです。
「二重鎖(ふたえぐさり)」とも言います。
赤銅(しゃくどう) 銅に金を数%加えた金属で、緑青(ろくしょう=塩基性炭酸銅)・胆礬(たんばん=硫酸銅)・明礬(みょうばん=硫酸カリウムアルミニウム)などを混ぜた液で煮る「煮色上げ(にいろあげ)」・「煮色仕上げ(にいろしあげ)」・「色上げ(いろあげ)」・「煮色(にいろ)」などと呼ばれる工程によって表面に膜(まく)を付けて発色させたものです。
銅100%を「素銅(すあか)」と呼び、煮色上げ後の色は「小豆色(あずきいろ)」、銅99%+金1%を「一分挿し(いちぶさし)」と呼び、煮色上げ後の色は「墨色(すみいろ)」、銅97%+金3%を「三分挿し」と呼び「少し青みがかった黒」、銅95%+金5%を「五分挿し」と呼び「青みがかった黒」、銅92%+金8%を「八分挿し」と呼び「紫がかった黒」となります。
金が7〜10%の割合になると紫がかった黒となり、「紫金(むらさきがね)」とも呼ばれます。
なお、銀を数%加える場合も有ったようです。
光沢(こうたく)が美しいので装飾に使われました。
「烏金(うきん)」とも言います。
赤熊(しゃぐま) ヤクの毛を赤く染めた物のことを言います。
鯱(しゃち) 想像上の動物で、魚に似た海獣(かいじゅう)のことです。
頭は虎に似て背に鋭(するど)いとげがあり、尾をそらした姿で現されます。
勇猛な動物とされ、その意匠(いしょう=デザイン)が武家に好まれて使われたようです。
また水に係(かか)わる動物であることから防火(ぼうか)の力があるとされ、城の屋根の両側に飾りとして用いられています。
「しゃちほこ」とも言います。
鯱兜(しゃちかぶと) を象(かたど)った変わり兜のことを言います。
「鯱形兜(しゃちなりかぶと)」とも言います。
蛇腹(じゃばら) 山折り(やまおり)と谷折り(たにおり)が交互になり、伸縮(しんしゅく)や自由に曲げることができる構造(こうぞう)を言います。
形状が蛇(へび)の腹(はら)に似ているのでこう呼ばれます。
最近では「フレキシブル構造」「アコーディオン構造」などとも呼ばれるようです。
蛇腹伏(じゃばらぶせ) 伏縫に見えるよう二本の撚糸(よりいと)を絵韋小縁韋の合わせ目に荒く縫い付ける方法のことを言います。
撚糸(よりいと)は二色か三色のものを用い、色を合わせて二本を並べるので伏縫のように見え、伏縫の手間を省くことが出来ます。
まれに「茶・萌黄・紫・白・紺」の撚糸(よりいと)を用いた例もあるようです。
江戸時代に行われたとされ、「寛政縫(かんぜぬい)」「観世縫(かんぜぬい)」とも言います。
髑髏(しゃれこうべ) もとは「曝(さ)れ頭(こうべ)」の意味で、雨風(あめかぜ)にさらされて白骨化した頭蓋骨(ずがいこつ)のことです。
戦場(いくさば)に骨(ほね)をさらす覚悟(かくご)で戦いに臨(のぞ)む、人はいずれ死ぬものと覚悟(かくご)する、などと言った意味から武士に好(この)まれ、甲冑・兜・立物旗指物陣羽織拵えの意匠(いしょう=デザイン)として用いられました。
「されこうべ」「しゃりこうべ」「どくろ」「野晒し(のざらし)」とも言います。
十王(じゅうおう) あの世で死者を裁(さば)く、秦広(しんこう)・初江(しょこう)・宋帝(そうてい)・伍官(ごかん)・閻魔(えんま)・変成(へんせい)・泰山(たいざん)・平等(びょうどう)・都市(とし)・五道転輪(ごどうてんりん)の10人の王のことです。
死者は初七日(しょなのか=死後7日目)から七七日(なななぬか=7日×7回=49日)まで7日ごとの7回と、百箇日(ひゃっかにち=死後100日)・一周忌(いっしゅうき=死後1年)・三回忌(さんかいき=死後2年)の3回、合計10回それぞれの王のもとを順番に訪(おとず)れ、次に生まれ変わるべき世界が決められるとされています。
この考えは中国で唐(とう)時代末期に成立し、日本へは平安時代中期以降もたらされたようです。
十王頭(じゅうおうがしら) 臑当で、亀甲金を包(つつ)んで作られた立挙の部分が3分割された形式のことで、十王が被(かぶ)っている冠(かんむり)に似ていることからこう呼ばれます。
十王頭兜(じゅうおうがしらかぶと) 十王が被(かぶ)っている冠(かんむり)を真似(まね)て作られた変わり兜のことを言います。
「冥冠(みょうかん)」とも言います。
銃床(じゅうしょう) 銃などで銃身(じゅうしん)を支える部分のことを言います。
狙(ねら)いを安定させたり、発射時の反動(はんどう)を抑(おさ)えるために肩などにあてがいます。
一般的には木製で、「ストック」とも言います。
愁猴(しゅうこう) 手の短い猿(さる)のことです。
他に猿猴があります。
朱漆(しゅうるし) 漆(うるし)に朱(赤色硫化水銀:せきしょくりゅうかすいぎん)を混ぜた朱色の赤色漆(あかいろうるし)のことです。
赤色漆(あかいろうるし)には「弁柄」と呼ばれる物もあります。
繻子織(しゅすおり) 織物の三原組織の一つで、平織のように縦糸(たていと)と緯糸(よこいと)が規則正しく連続して交差するのではなく、縦糸(たていと)または緯糸(よこいと)だけが一定間隔で表に現れるような織り方のことや、その方法で織った織物のことを言います。
糸が浮いている個所が多いので、綾織より光沢(こうたく)がある反面、浮き糸が多いため織物としての耐久力は弱くなっています。
「朱子織」とも書き、「サテン」とも言います。
棕櫚(しゅろ) 中国大陸原産のヤシ科ヤシ属の常緑樹で、枝がなくまっすぐに伸びた幹(みき)の天辺(てっぺん)に、天狗(てんぐ)の羽団扇(はうちわ)のような形の葉が何枚か付いています。
この葉を意匠(いしょう=デザイン)とした家紋(かもん)は、駿河(するが=静岡県)の富士山本宮浅間大社(ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ)の大宮司(だいぐうじ)だった富士氏(ふじし)の家紋(かもん)として有名だったようです。
また繊維(せんい)が裾板などへの植毛(しょくもう)の材料として使われたようです。
「椶櫚」「棕梠」とも書きます。
笙(しょう) 雅楽で用いられる楽器の一つで、直径3〜4cmくらいの竹の管(かん)を17本、椀型(わんがた)の吹き口(くち)の上に円形に配置したものを言います。
竹の内部が湿(しめ)りやすいので、演奏前や演奏の合間に火鉢(ひばち)やコンロなどで楽器を暖めながら使います。
並んだ竹の様子を鳳凰の翼(つばさ)に例えて「鳳笙(ほうしょう)」とも言い、その音は「天から差し込む光」を表しているとされます。
尉髪(じょうがみ) 能(のう)で老翁(ろうおう=おじいさん)を演じる時に、演者(えんじゃ)がかぶる仮髪(かはつ=かつら)のことをいいます。
白髪(しらが)を表現する黄色味の強い、バスと呼ばれる馬の尻尾(しっぽ)の毛が使われ、仮髪(かはつ=かつら)と言っても毎回手作業で髷(まげ)を結(ゆ)います。
頭上(ずじょう)で束(たば)ねた毛を後頭部(こうとうぶ)で前に折り返し、折り返した毛で前頭部(ぜんとうぶ)を覆うような大きな髷(まげ)を結(ゆ)います。
主に尉面をかける前に使われるようですが、尉面をかけたときは髷(まげ)の毛先(けさき)がの鬢(びん=頭の左右側面の毛)の植毛(しょくもう)部分を覆うようにします。
鍾馗(しょうき) 中国から伝わった神様で、疫病神(やくびょうがみ)を追い払い、魔を除くと言われています。
睨(にら)みつける大きな目、長い髭(ひげ)、緑色の中国の役人の服、黒い冠(かんむり)、長い靴(くつ)、剣を持った姿で書かれ、疫病神(やくびょうがみ)をつかんでいる場合もあるようです。
唐(とう)の玄宗皇帝(げんそうこうてい)の夢の中で小鬼(こおに)を退治(たいじ)し、皇帝の病気を治したという伝説に由来します。
その勇壮な姿と、魔除けの意味も込めて旗指物陣羽織に描(えが)かれました。
今でも端午(たんご)の節句(せっく)に絵や人形を飾る風習があるほか、鬼瓦として使われることもあるようです。
床机(しょうぎ) 陣中(じんちゅう)で使われた椅子(いす)のことです。
古くは小型の机(つくえ)状をしており、身分に応じて高さに差がありました。
使用時は上に虎・豹(ひょう)・熊などの毛皮を敷きましたが、この毛皮も身分に応じて使い分けていたようです。
近世になると二つの「U」字型の脚を交差させて組み合わせ、折り畳みでがきるようにした「畳床几(たたみしょうぎ)」と呼ばれるものが使われるようになりました。
勝軍地蔵(しょうぐんじぞう) 愛宕権現本地仏とされ、信仰する者は戦で勝利を得るといわれました。
一説に「普賢菩薩(ふげんぼさつ)」の生まれ変わりともされているようです。
上下結(じょうげゆい) 臑当を臑(すね)に固定する方法のことで、それまでの千鳥掛に代わって鎌倉時代中期頃から行われ、それ以降は広く一般的にこの方法が使われました。
文字通り臑当の上と下に取り付けられた2本の紐(ひも)を結んで臑(すね)に固定する方法を言います。
江戸時代には上側の紐(ひも)を「芝突の緒(しばつきのお)」、下側の紐(ひも)を「沓縹の緒(くつじるしのお)」と呼んでいたようです。
障子板(しょうじのいた) 金具廻りの一つで、肩上の中央に立てられた三日月型の板のことを言います。
飛んでくる矢や刀などから首の側面を守る目的で付けられ、時代によって板の形が異なります。
基本的には大鎧に付けられたものですが、南北朝時代〜室町時代前期頃の胴丸や江戸時代の当世具足に付けられた例や、きわめて稀(まれ)な例として腹巻に付けられたものもあるようです。
「月型板(つきがたのいた)」矢止冠とも言うようです。
猩猩(しょうじょう) @:人間によく似た姿をし、人間の言葉を理解し、赤い顔と赤い毛と持ち、お酒が好物(こうぶつ)とされる想像上の動物です。
その血はとても赤い緋色で、この血で布を染めるとどんなに時間が経っても色が変わらないとされ、この緋色を特に猩猩緋と呼びます。
A:オランウータンのことです。
「猩々」とも書きます。
猩猩緋(しょうじょうひ) @:猩猩の血のように濃く鮮(あざ)やかな緋色のことを言います。
A:緋色羅紗で作った陣羽織のことを言います。
「猩々緋」とも書きます。
硝石(しょうせき) 黒色火薬・マッチ・釉(うわぐすり)・肥料・医薬・食肉の保存料などに利用される物質で、天然の物はチリの砂漠地帯やアメリカ西部などの乾燥地帯から産出されます。
炭酸カリウムを硝酸(しょうさん)に溶かして得ることも出来ます。
「煙硝(えんしょう)」「硝酸(しょうさん)カリウム」とも言います。
装束の綰(しょうぞくのわな) 響の孔から出ている綰(わな=輪っか)のことです。
「引通しの締(ひきどおしのてい)」引廻しの締(ひきまわしのてい)」赤熊付の締(しゃぐまつけのてい)」とも言うようです。
正中(しょうちゅう) 真ん中のことです。
「せいちゅう」とも読み、正面の真ん中を「前正中(まえしょうちゅう)」、後(うし)ろの真ん中を「後正中(うしろしょうちゅう)」と言います。
尉頭形兜(じょうとうなりかぶと) 「尉(じょう)」とは老翁(ろうおう=おじいさん)のことで、文字通り白髪頭(しらがあたま)を模した変わり兜のことです。
通常、兜鉢の前方を肉色塗とし、後方に白っぽい毛を植(う)えて髷(まげ)や髻(もとどり=たばねた髪)を結(ゆ)ってあります。
老頭と似ていますが、こちらは特に能(のう)の尉面尉髪を意識していると思われます。
「じょうかしらなりかぶと」とも言います。
菖蒲韋(しょうぶがわ) 化粧板を包むのことで、藍(あい)染めで菖蒲(しょうぶ)の模様を白く染め抜いた物を言います。
菖蒲の形によって「薄菖蒲(すすきしょうぶ)」「立杉(たちすぎ)菖蒲/杉立(すぎたち)菖蒲」「爪形菖蒲(つまがたしょうぶ)」などと呼ばれます。
また鹿や紅葉、騎馬人物のような菖蒲以外の図案が白抜きされていてもこう呼ぶようです。
室町時代頃からは小縁韋にも用いられるようになりました。
正平革(しょうへいがわ) 藻獅子韋の一種で、金具廻りを包むに、白地に藍(あい)と赤で獅子・牡丹(ぼたん)の文様を染め、柄(がら)の隙間に五星紋と「正平六年六月一日」の日付を藍(あい)で染め出したもののことを言います。
正平六年(1351年)征西将軍(せいせいしょうぐん)懐良親王(かねよししんのう/かねながしんのう)が、肥後(ひご=熊本県)の八代(やつしろ)の革職人に命じて染め出したものと言われています。
「八代革(やつしろがわ)」「正平御免革(しょうへいごめんがわ)」御免革とも言います。
尉面(じょうめん) 能(のう)で用いられる面の中で、老翁(ろうおう=おじいさん)の顔を表現(ひょうげん)するものを言います。
「小尉(こじょう)」・「阿古父尉(あこぶじょう)」・「朝倉尉(あさくらじょう)」・「三光尉(さんこうじょう)」・「笑尉(わらいじょう)」など、鬢(びん=頭の左右側面の毛)と上髭下髭の両方もしくはどちらか一方に毛を植えた面のことを指し、鬢(びん=頭の左右側面の毛)に植え毛のない「翁(おきな)」と「悪尉(あくじょう)」の面はこれに含まないとされます。
鬢(びん=頭の左右側面の毛)の部分には尉髪の毛先(けさき)がかぶさります。
植え毛には黄色っぽい白や灰色(はいいろ)をした馬のたてがみ、またはバスと呼ばれる馬の尻尾(しっぽ)の毛を用います。
定紋(じょうもん) その家で決まっている正式な家紋(かもん)のことで、公式の場で用いられます。
「表紋(おもてもん)」「本紋(ほんもん)」「正紋(せいもん)」などとも言います。
なお、非公式な場で用いられる家紋(かもん)は替紋と言います。
尻懸(しりがい) @:三懸の一つで、馬の尾の下から後輪四方手にかけて取り回す紐(ひも)のことです。
A:三懸のことです。
B:牛車(ぎっしゃ=牛が牽(ひ)く車)などで、車の轅(ながえ=前方に突き出た2本の棒)を固定するための紐(ひも)のことです。
尻鞘(しりざや) 太刀にかぶせ、紐(ひも)で結びつけて用いた毛皮の袋のことです。
その人の官位(かんい)・身分によって豹皮(ひょうがわ)・虎皮(とらがわ)・海豹皮(あざらしがわ)などの規定があったようです。
「しりけさや」とも読み、「箒鞘(ほうきさや)」とも言います。
白漆(しろうるし) 透漆に二酸化チタニウムなどの顔料(がんりょう=絵具)を混ぜて作られた白色の漆(うるし)です。
白毛(しろげ) 馬の毛色の一つで、文字通り全身の毛の大半(たいはん)が白く、肌がピンク色の馬のことを言い、毛色の中で最も白い毛色とされます。
白鑞(しろめ) @:錫(すず)または錫(すず)に鉛(なまり)を混ぜた合金(ごうきん)のことで、錫細工(すずざいく)などの接合剤、銅(どう)の錆止(さびど)めなどに使われたようです。
A:白銅のことです。
「白目」とも書き、「はくろう」「しろみ」「しろなまり」とも言います。
陣笠(じんがさ) 室町時代以後、陣中で主として足軽・雑兵(ぞうひよう)など下級の兵士が兜(かぶと)の代わりに頭にかぶっていた笠のことで、薄い鉄・漆塗り(うるしぬり)の革・和紙などで作られていました。
江戸時代になると上級武士が使用する物も現れ、縁(ふち)を反(そ)らせた塗り笠が一般的となり、主に武士の外出用として使われました。
陣太鼓(じんだいこ) 戦場(せんじょう)で軍勢の進退(しんたい)を指示したり、士気(しき)を高めるために打った太鼓のことです。
背負(せお)ったまま打つタイプなど、大きさや形はいろいろあったようです。
「軍鼓(ぐんこ)」とも言います。
真鍮(しんちゅう) 銅(どう)と亜鉛(あえん)の合金(ごうきん)で、加工性が良く広い用途があります。
色が黄色いので別名を「黄銅(おうどう)」とも言い、桃山時代には金と同じ価値で扱われるほどの貴重品でした。
陣羽織(じんばおり) 古くは「胴服(どうふく)」と呼ばれ、始めは防寒などの目的で甲冑の上から羽織った服でしたが、次第に自己表示の目的が強くなり、様々な素材・意匠(いしょう=デザイン)の物が作られました。
袖ありと袖無しの両方があり、幕末期のものは肩に肩章(かたしょう=エポレット)と呼ばれる帯(おび)が付いています。
緋色羅紗で出来たものは特に猩猩緋とも言います。
神馬(しんめ) 神様の乗り物とされ、神社に奉納(ほうのう)されたり神社の祭りの時に使用される馬のことです。
古くは実際に生きた馬を奉納(ほうのう)していましたが、高価(こうか)で世話も大変なことから、今では馬の像や絵馬(えま=馬の絵)を奉納(ほうのう)するのが一般的になりました。
雨乞(あまご)いには黒い馬、晴れを願うときには白い馬を奉納(ほうのう)すると記(しる)された例や、武士が戦(いくさ)の勝利を願って奉納(ほうのう)した例などが知られています。
またこの名残(なごり)として古い神社には、馬がいてもいなくても「神馬舎(しんめしゃ)」・「神厩舎(しんきゅうしゃ)」などと言われる馬小屋(うまごや)があることが多いようです。
「じんめ」とも言います。
新羅形(しんらなり) 江戸時代の兜で、吹返の中央にある絵韋の周囲を菱縫で囲ったもののことです。
水干(すいかん) @:糊(のり)を使わないで、水張りにして干(ほ)した布のことです。
A:狩衣の一種で、襟(えり)を懸(か)け合わせの組紐で結び留めるのが特徴です。
胸と袖付けに二つずつの菊綴が付き、もともとは下級官吏(かきゅうかんり)・地方武士・庶民(しょみん)の平服(へいふく)でしたが、のちに武家(ぶけ)の礼服(れいふく)となり、公家(くげ)や元服前の少年も着用しました。
なお、襟(えり)を内側に折り込んで着ることを「垂領(たりくび)」と言います。
もともとは「@」の布で作られたのでこう呼ばれますが、のちには絹(きぬ)・でも作られるようになりました。
瑞獣(ずいじゅう) めでたいことが起きる前兆(ぜんちょう)として現れる獣(けもの)のことで、麒麟や龍(りゅう)などを言います。
似たものに瑞鳥があります。
瑞鳥(ずいちょう) めでたいことが起きる前兆(ぜんちょう)として現(あらわ)れる鳥のことで、鳳凰や鶴(つる)などを言います。
似たものに瑞獣があります。
水簸(すいひ) 粒(つぶ)の大きさによって水中で沈(しず)む速度が異なることを利用して、粒(つぶ)を大きさ別に分ける方法を言います。
据文金物(すえもんかなもの) 「据紋」「居文」とも書きます。
眉庇吹返栴檀板鳩尾板菱縫板金具廻りなどに付けた金具のことで、通常は菊座や家紋(かもん)などの文様が彫られています。
素襖(すおう) 裏地(うらじ)を付けない布製で、菊綴や胸紐(むねひも)に革(かわ)を用いた直垂の一種です。
もともと庶民(しょみん)の平服(へいふく)でしたが、のちには武家(ぶけ)の常服(じょうふく)、下級武士の礼服(れいふく)となりました。
「素袍」とも書きます。
素懸威(すがけおどし) 威しの手法の一つで、二本の糸を用い、間をあけて所々を下段へ縦取威のように垂直(すいちょく)に威して行く手法を言います。
「所懸(ところがけ)」とも言います。
透漆(すきうるし) 生漆を「なやし(=かき混ぜ)」や「くろめ(=加熱)」と呼ばれる方法で精製(せいせい)し、水分量を調整した透明度のある漆(うるし)のことで、溜色もしくは飴色をしています。
また、色付きの漆(うるし)はこの漆(うるし)に各種の素材を練(ね)り込んで作成されます。
杉形シコロ(すぎなりしころ) 平安時代の星兜に見られるシコロのことで、杉の木のような裾広がりの形状をしたシコロのことを言います。
頭巾形兜(ずきんなりかぶと) 頭や顔を覆う布製(ぬのせい)の被(かぶ)りものを模した変わり兜のことで、形状によって角頭巾形兜投頭巾形兜大黒頭巾形兜などの種類があります。
直眉庇(すぐまびさし) 付眉庇の中で、兜鉢から水平(すいへい)に前方へ突き出した眉庇のことを言います。
「棚眉庇(たなまびさし)」「天草眉庇(あまくさまびさし)」とも言い、中には板に「うねり」を持たせた装飾的な物もあります。
多くの場合内眉庇をともないます。
筋兜(すじかぶと) 兜鉢を構成する天辺から腰巻板までの縦板同士を留めるのに用いた星鋲が小型化した物を、さらに叩き潰して平滑(へいかつ)化した手法で、捻返(ひねりかえ)した矧目(はぎめ=筋)のみが見えるのでこう呼ばれています。
矧目(はぎめ=筋)と矧目(はぎめ=筋)の間を文字通り「間(けん)」と言い、この数によって「三十二間(さんじゅうにけん)」「六十二間(ろくじゅうにけん)」「二百間(にひゃくけん)」などの名称が付けられます。
筋金(すじがね) 物をより丈夫にするため、内側にはめ込んだり表面に貼りつけたりする細長い金属のことです。
これが入っているととても丈夫になることから、何かに対して強い意志のある人のことを「筋金入り(すじがねいり)」と言うようになったそうです。
筋伏(すじぶせ) 篠垂の先端(せんたん)に花先形(はなさきがた)を作らずに筋(すじ)とし、腰巻板まで垂(た)らしたものを言います。
裾板(すそいた) 兜のシコロ草摺の最下段のことを言います。
当世具足シコロについては肩摺板とも言います。
裾濃威(すそごおどし) 色目の一つで、シコロ草摺の一番上の段を白とし、下に行くにつれて色を濃くして一番下の段(=裾(すそ))が最も濃い色になるように威す形式を言います。
「紫裾濃(むらさきすそご)」「紅裾濃(くれないすそご)」「紺裾濃(こんすそご)」「萌黄裾濃(もえぎすそご)」などがあります。
匂威の一種だとする説もあるようです。
「下濃威」とも書きます。
裾取威(すそどりおどし) 色目の一つで、下部の段を他とは違う色で威した形式を言います。
頭形兜(ずなりかぶと) 頭の形に合わせたシンプルな形の兜を指します。
広い意味では筋兜なども含まれ、古くはま筋兜もこう呼んでいたようです。
現在では一般的に室町時代末期から登場する三枚張五枚張の兜の事とされ、で、筋兜とは異なる新しい形式の兜鉢を指す用語として使われます。
特に「日根野頭形兜」と「越中頭形兜」の二系列をもって定義することが多いようですが、双方の特徴を持っていたり、どちらとも言い難い場合も有るようです。
洲浜紋(すはまもん) 洲浜(すはま)とは河川(かせん)や海岸などに土砂(どしゃ)が自然に積(つ)もってできる島のことで、この形をした脚付き(あしつき)の台のことを「洲浜台(すはまだい)」と言い、結婚式やお祝いなどの飾りを乗せるのに使われました。
このことから縁起の良い形として図案化され、家紋(かもん)に用いられたようです。
「州浜紋」とも書きます。
角切袖(すみきりそで) 当世袖で、足掻(あが)きを良くするためにの下方二段程度の前方を、斜めに切り欠いたようにしたのことです。
「角取袖(すみとりそで)」とも言うようです。
角頭巾形兜(すみずきんなりかぶと) 頭巾形兜の一つで、紙袋を頭にかぶったような形の頭巾(ずきん)を模した兜のことです。
頭巾(ずきん)を被(かぶ)ったとき両耳の上に角ができることからこう呼ばれます。
隅取紙(すみとりがみ) 四角い紙の一隅(ひとすみ)をつかんだ形で、「束紙(つかね)」とも言います。
紙の枚数や束(たば)ね方にはいろいろな種類(しゅるい)があるようです。
前立指物馬標などに使われました。
紙を束(たば)ねた姿が似ていることから、これが「スミレ」の語源だとする説(せつ)もあるようです。
「角取紙」とも書きます。
摺り漆(すりうるし) 生漆を布や綿などで木地(きじ)に摺(す)り込み、余分な漆(うるし)を拭き取って乾燥させることを言います。
この作業は何回か繰り返され、その回数と使われた漆(うるし)の質、摺(す)り込みの仕方で仕上がりが変わってくるそうです。
青海波(せいがいは) @:重なり合う波を規則的に並べた文様のことを言います。
「青海波(せいがいは)」と言う名前の雅楽で着用される衣装(いしょう)にこの文様が使われているのが名前の由来とされます。
A:八重鎖のことです。
見た目が「@」に似ていることからそう呼ばれます。
制札(せいさつ) 禁止事項や伝達事項を書いた木製(もくせい)の立札(たてふだ)のことを言います。
道端(みちばた)や寺社(じしゃ)の境内(けいだい)などに立てて人々に知らせました。
禁止事項(きんしじこう)を書いたものは「禁札(きんさつ)」とも呼ばれます。
青漆(せいしつ) 黄漆黒漆、或いは黄漆紺青を混ぜ合わせたり、 藍染(あいぞ)めの汁を作る時に生じる藍の泡(あわ)を乾かした藍蝋(あいろう)を加えて作られた漆(うるし)のことで、「あおうるし」とも言います。
「青」の字を用いますが実際の色味は「濃い緑色」です。
背板指(せいたざし) 合当理待受が付いた板のことで、背中に背負って紐(ひも)で固定して使うようです。
怪我(けが)などの理由でを着られない場合でも指物を付けられるように用いると言われています。
背板付けの鞐(せいたつけのこはぜ) 腹巻臆病板を付けるために、肩上の後方(こうほう)に付けられたのことです。
青銅(せいどう) 銅合金(どうごうきん)のことをまとめてこう呼ぶ場合もありますが、正確には銅(どう)と錫(すず)との合金のことで、人類が最も古くから使用した合金とされます。
加工しやすく錆(さび)や腐食(ふしょく)に強い特徴があります。
中国から伝わったので「唐金(からかね)」とも呼ばれます。
蒸籠鎖(せいろうぐさり) 鎖(くさり)を構成する輪を引き違えにして三周巻いた鎖(くさり)のことです。
「螺鈿鎖(らでんぐさり)」とも言います。
石黄(せきおう) 硫化砒素(りゅうかひそ)と呼ばれる物質で、古くから黄色を出すための材料として使われてきました。
関弦(せきづる) 弓に用いる弦(つる)で、弦(つる)に黒く漆(うるし)を塗った上に縒糸(よりいと)を一面に巻きつめ、さらにその上から薄く漆を塗って堅固にこしらえたもののことを言います。
伊勢国の関(=三重県亀山市)で作られたのが名前の由来とも、「せきとめ防ぐ」と言う意味が名前の由来とも言われているようです。
セリシン(せりしん) 絹(きぬ)の繊維の周りを覆っている蛋白質(たんぱくしつ)のことで、繊維同士をくっつきやすくする働きがあるようです。
「絹膠(けんこう)」とも言われ、この蛋白質(たんぱくしつ)には保湿(ほしつ)、美肌効果、老化を防ぐ抗酸化作用(こうさんかさよう)があるとされているようです。
背撓(せため) 体の背骨の部分が凹(へこ)んでいるのに合わせての背中につけられた凹(へこ)みのことを言います。
南北朝時代頃の胴丸から見られ始め、それ以降のでは一般的となったようですが、一部の大鎧にも見られます。
「背溝(せみぞ)」とも言います。
切羽(せっぱ) の上下に有ってを挟(はさ)んで固定するための金具です。
特に太刀拵では何枚か重ねるため、ここが隙間なくキッチリと詰まってしまって刀身(とうしん)が抜けなくなることを指す「切羽詰まる(せっぱつまる)」が「どうにも身動(みうご)きが取れなくなる」の語源になったと言われています。
責金(せめがね) 太刀二ノ足金物石突の間に付けられた、を一周するリング状の金具のことです。
柏(かしわ)の葉のような装飾があることから「柏葉(かしわば)」とも言います。
背割具足(せわりぐそく) 腹巻のように背中で引合せるようにした桶側胴御貸具足で、背中の合わせ目には別に用意した太い受筒を付けます。
普通の指物よりも大きな指物を背負うためのだと言われています。
前勝山形兜(ぜんしょうざんなりかぶと) 天谷山形兜などで、兜鉢の前方のコブを特に大きく張り出した形式のものを言います。
「前王山」「前星山」とも書きます。
なお、これと反対のものは後勝山形兜と言います。
栴檀板(せんだんのいた) 大鎧に附属し、右手を動かした時に右脇に出来る隙間を防ぐために使われたとされていますが、その他にも高紐を切られないための防具ではないかとする説などもあり、実際の所はよく分かっていません。
長方形をした小型の状の物で、鳩尾板と一対で用いられます。
一般的に、鳩尾板のように一枚の鉄板で作られていないのは、弓を引いた時に弦(つる)がかかりにくくするためだと言われています。
戦袍(せんぽう) 戦闘の際に、鎧の上から着る衣服のことを言います。
「袍(ほう)」とは上着(うわぎ)のことで、身分によって色や布地に決まりのある「位袍(いほう)」とそれ以外の「雑袍(ざっぽう)」に分けられ、さらに文官(ぶんかん)用の「縫腋(ほうえき=両わきの下を縫い合わせた服)」と、武官(ぶかん)・幼年者(ようねんしゃ)用の「闕腋(けってき=両わきの下を縫わずに開けはなした服)」に分けられます。
象眼(ぞうがん) 地金に模様を刻み、そこに別の素材をはめ込んで模様を描き出す技法です。
金象眼銀象眼などがあるほか、技法によって布目象眼などの種類があります。
「象嵌」とも書きます。
総髪(そうごう) 兜鉢麦漆などで動物の毛を植え付けた兜の一つで、後ろに撫(な)で付けた髪型(=オールバック)をした物のことを言います。
僧頭巾形兜(そうずきんなりかぶと) 仏教の僧侶(そうりょ)がかぶる頭巾(ずきん)を模した変わり兜のことを言います。
「僧侶頭巾形兜(そうりょずきんなりかぶと)」とも言います。
似たものに帽子形兜があります。
象形兜(ぞうなりかぶと) 象(ぞう)の頭(あたま)や鼻(はな)を模した変わり兜のことです。
「象鼻形兜(ぞうはななりかぶと)」とも言います。
総覆輪(そうふくりん) 筋兜で、全ての筋(すじ)に覆輪を施し、かつ兜鉢全周(ぜんしゅう)を斎垣で覆うことを言います。
またはそのように装飾された筋兜のことを言います。
僧兵(そうへい) 僧侶でありながら武芸を修練し、戦闘に従事した寺院の私兵(しへい=自前の兵士)のことです。
裹頭して薙刀を持った武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)のイメージが良く知られているかと思います。
平安時代中期から戦国時代にかけて見られ、平安時代中期の最盛期には興福寺・東大寺・延暦寺・園城寺などがその兵力の強大さで知られていました。
中世では高野山・根来寺・石山寺などが有名です。
「悪僧(あくそう)」とも言います。
総面(そうめん) 面頬の一つで、文字通りお面のように顔全体を防御する物を言います。
実際には視界(しかい)が狭(せま)くなり、鉄製の物は重さもあるので実戦向きではないと言われています。
添脇曳(そえわきびき) 釦(ぼたん)または籠手に取り付けられるようにした脇曳のことです。
袖裏の鐶(そでうらのかん) 文字通り袖の緒を結び付けておくためにの裏に設けられた鐶(かん=輪)のことで、受緒の鐶(うけおのかん)」執加緒の鐶(しっかのおのかん)」懸緒の鐶(かけおのかん)」のことです。
袖印(そでじるし) 戦場(せんじょう)で敵味方を見分けるため、に付けた合印のことです。
多くは布(ぬの)で作られた小さな旗のような形状をしています。
「袖標」とも書き、「袖の笠標とも言うそうです。
袖の緒(そでのお) に付いている受緒執加緒懸緒水呑緒のことです。
「四つの緒(よつのお)」「管の緒(くだのお)」とも言います。
袖袋(そでぶくろ) 籠手家地のことです。
卒塔婆(そとば) サンスクリット語(=古代インドで使われた言葉)の「ストゥーパ」を漢字で書いたもので「塔婆(とうば)」とも言い、もともとはお釈迦様(おしゃかさま)の骨(ほね)を安置(あんち)した建物のことを言いました。
現在では墓の脇(わき)に立てる木製の板のことを指(さ)すのが一般的で、「板塔婆(いたとうば)」とも呼びます。
五輪塔を表すために板の両側(りょうがわ)に切り込みが入れてあります。
板ではなく柱状(はしらじょう)の物もあるようです。
染羽(そめは) 白い羽を好みの色で染めた矢羽のことを言います。
「そめば」とも言います。
征矢(そや) 戦(いくさ)で一般的に使われた先の尖(とが)った矢の総称です。
中差の矢として用いられ、三立羽が一般的です。
反領(そりおとがい) 目下頬で、突き出して反っている顎(あご)のことを言います。
た行 解説
大円高盛山(だいえんこうせいざん) 天辺がやや高くなっている大円山のことです。
大円山(だいえんざん) 兜鉢の形の一つで、前後左右の径に差がほとんどない、半球状(はんきゅうじょう)のものを言います。
大円平頂山(だいえんへいちょうざん) 天辺が平らになっている大円山のことです。
台木(だいぎ) 火縄銃の銃身(じゅうしん)を入れて支えるいわゆる銃床のことです。
大黒頭巾形兜(だいこくずきんなりかぶと) 頭巾形兜の一つで、七福神(しちふくじん)の一人である大黒天(だいこくてん)が被(かぶ)っている頭巾(ずきん)ににているためこう呼ばれます。
「丸頭巾形兜(まるずきんなりかぶと)」「焙烙頭巾(ほうろくずきんなりかぶと)」とも言います。
太鼓櫃(たいこびつ) 箱の中央が膨らみ、上下が窄(すぼ)まったような形をした鎧櫃のことです。
和太鼓(わだいこ)を横から見た様子に似ているのでこう呼ばれます。
太白(たいはく) 「宵の明星(よいのみょうじょう=夕方に西の空に輝く金星)」のことで、長庚とも言います。
朝方は啓明と言います。
金(きん)の気(き)が刃物(はもの)に通じることから、この星の神は「太白神(たいはくじん)」「金神(こんじん)」「大将軍(だいしょうぐん)」などと言われ、いずれも武人(ぶじん)の姿をした荒ぶる神として軍事を司(つかさど)るとされたようです。
高紐(たかひも) 肩上前立挙または胸板を連結するための紐(ひも)のことです。
この紐(ひも)の先に取り付けられたを懸(か)け外(はず)しすることによって、を着脱(ちゃくだつ)します。
大鎧胴丸腹巻など近世より前の時代は肩上から出る紐(ひも)に笠鞐胸板の紐(ひも)に責鞐が付くのが原則で、近世以降の当世具足ではその逆になったようです。
「相引緒(あいびきのお)」とも呼ばれます。
抱花(だきばな) 天辺の座に使われる金具の一つで、中央を刳り抜いた花弁(はなびら)が、玉縁を抱(かか)えるように垂直に立っていることからこう呼ばれます。
「返花(かえりばな)」とも言います。
竹割(たけわり) 室町時代頃から見られる、草摺の撓(たわ)みの曲線が、竹を割った時の断面のように深いもののことです。
啄木威(たくぼくおどし) 啄木組の糸を使って威した物を言います。
啄木組(たくぼくぐみ) 紐(ひも)の組み方の一つで、白・萌黄・紫などの糸を交(まじ)えて「まだら模様」に組んだものを言います。
啄木鳥(きつつき)がついばんだ木の模様に似ていることからこう呼ばれます。
紺・ 白・萌黄・紫の四色(よんしょく)の色糸(いろいと)を取り合わせて組んだものは特に「四色啄木(ししきたくぼく)」と呼ばれます。
出し(だし) 指物馬標の竿(さお)の先端(せんたん)に付ける、小さな飾(かざ)りや旗のことです。
「割出し(わりだし)」とも言います。
叩塗(たたきぬり) 木屎などを混ぜて流動性を無くした漆(うるし)を、絹(きぬ)でつつんだ「たんぽ」と呼ばれる道具を使って叩き、表面に皺(しわ)模様を作って行く塗り方を言います。
畳兜(たたみかぶと) @:兜鉢が数段の輪切(わぎ)り状態の板を威したもので構成されている兜のことで、シコロ一段分の高さまで全体を畳(たた)むことができるものを言います。
中でもバケツの取っ手のような可動式の外枠(そとわく)を付け、天辺の金具で留(と)める形式のものは様子が提灯に似ているため、「提灯兜(ちょうちんかぶと)」とも呼ばれます。
A:骨牌金亀甲金などを鎖(くさり)でつなぎ、家地に縫いつけてつくられた兜のことです。
どちらも折り畳(たた)めるのでこう呼ばれます。
畳胴(たたみどう) @:当世具足立胴に対して、置くと兜のシコロのように一段分の高さまで全体を畳(たた)むことのできるを言います。
A:亀甲金などを鎖(くさり)でつないだ亀甲総鎖胴や、骨牌金を鎖(くさり)でつないだもの、鎖(くさり)のみを家地に縫いつけてつくられたのことです。
折り畳(たた)むことができるのでこう呼ばれ、「畳具足(たたみぐそく)」「鎖具足(くさりぐそく)」とも言われます。
太刀(たち) 刀(かたな)の様式の一つです。
一般的には長さが大体60cm以上の長い物で、腰(こし)に佩(は)いた(=着けた)時に刃が下を向くよう、二箇所の足金物足の緒帯執を使って腰(こし)から吊(つ)るす形式のものをこう呼んでいます。
もともと馬上(ばじょう)での戦いを想定して作られたとされ、徒歩による戦いが主流になり始めた室町時代中期頃からは、これに代わって打刀と呼ばれる様式が多くなりました。
太刀拵(たちごしらえ) 文字通り太刀に使われる拵えのことで、兜金猿手目貫口金一ノ足金物二ノ足金物雨覆責金芝引石突長覆輪帯執等を指します。
立胴(たちどう) 「たてどう」とも言います。
などを貼って各段の伸縮(しんしゅく)を止めてしまった物を言います。
仏胴桶側胴がこの様式です。
橘(たちばな) @:ミカン科の常緑小高木で日本原産唯一の柑橘類(かんきつるい=ミカン類)とされますが実は小さく、熟(じゅく)しても酸味(さんみ)が強いので食用には向きません。
A:古くより食用とされた柑橘類(かんきつるい=ミカン類)の総称で、「非時香菓(ときじくのかくのこのみ=香りの消えない木の実)」とも言います。
龍頭(たつがしら) 文字通り龍の頭、或いは龍全体を模した立物です。
「りゅうず」とも読みます。
手綱(たづな) @:の左右に結び付け、馬を操(あやつ)る綱(つな)のことを言います。
和鞍の場合は長さ 2.5〜3.5mの絹(きぬ)や麻(あさ)の布(ぬの)を手綱染にしたものを四つ折りして用いたようです。 A:烏帽子の上に締めた鉢巻(はちまき)のことです。
手綱染(たづなぞめ) 赤と白、紫と白などの色で同じ間隔に染め分けた太い縞模様(しまもよう)や、紫・浅葱(あさぎ)・紅(くれない)などで幅3cmくらいの斜めの線で染め分けた縞模様(しまもよう)のことを言います。
手綱に多くみられる染め方のため、この名称が付いたようです。
「だんだら染め(だんだらぞめ)」とも言います。
立挙(たてあげ) @:の上部で、胸板押付板長側をつなぐ部分のことです。
前側を「前立挙(まえたてあげ)」、後側を「後立挙(うしろたてあげ)」と言います。
A:臑当の上部で膝頭(ひざがしら)を守るように付けられた部分で、様式によって「大立挙(おおたてあげ)」「中立挙(ちゅうたてあげ)」「立挙」と分けられます。
立烏帽子(たてえぼし) 烏帽子の一つで、文字通り頭部の峰(みね)を高く立てたままにしたもののことです。
「たちえぼし」とも読みます。
縦取威(たてどりおどし) 小札の一段目と二段目の孔(あな)の表に威毛を縦(たて)に通し、垂直に威していく手法で、おもに古墳時代から平安時代末期まで使われていました。
楯無(たてなし) 源氏八領の内の一領で、楯(たて)が不要なくらい頑丈(がんじょう)であると言われたのが名前の由来とされます。
一説に、平治の乱で源義朝(みなもとよしとも)が着用し、敗走の際に脱ぎ捨てられていたものを武田信光(たけだのぶみつ)が拾って甲斐(かい=山梨県)に持ち帰ったと言われています。
今は菅田天神社(かんだてんじんしゃ)に納められており、源氏八領の内で唯一、今に残っている鎧とされていますが、
@:平治の乱当時、武田信光は幼児であった。
A:武田家では平治の乱より前の新羅三郎義光(しんらさぶろうよしみつ)から受け継いだ鎧だと伝えている。
B:「平治物語」では黒糸としているが、武田家の鎧は小桜韋黄返威である。
などの点から、源氏八領の楯無と武田家の楯無は別の物ではないかとする説もあるようです。
縦矧(たてはぎ) 板札を縦に矧(は)ぎ合わせることを言います。
立涌(たてわく) 模様の一つで、向かい合った二本の波線(なみせん)の山と谷の部分が、お互いに離れたり近づいたりを繰(く)り返す電波波形のようなパターンのことを言います。
この二本の波線で雲(くも)や水蒸気(すいじょうき)が涌(わ)き立つ様子をあらわしているそうです。
「たてわき」「たちわく」「たちわき」とも言い、「立枠」とも書きます。
似たものに山道があります。
立涌威(たてわくおどし) 威毛立涌を描(えが)いて威す手法です。
「たてわきおどし」とも言います。
玉入れ(たまいれ) 火縄銃の玉を入れておくための容器です。
玉の取り出し口が嘴(くちばし)のようになっている物を特に「烏口(からすくち)」と言います。
玉型(たまがた) 火縄銃の玉を作るための道具で、ペンチ状になった左右の内側に半球(はんきゅう)状の溝(みぞ)が彫ってあります。
ペンチを閉じた状態でこの溝(みぞ)に溶かした鉛(なまり)を鉛柄杓で流し込み、鉛(なまり)が冷えてから開くと球状に固まった鉛(なまり)の玉ができる仕組みです。
玉縁(たまぶち) 天辺の座の最上段に使われる、中央が筒状になっている金具です。
この筒部分に小刻座菊座などの座金(ざがね)を通します。
筒の下端は割りピン状に分割されており、ここを兜鉢の中で広げることで天辺の座を固定します。
「たまべり」とも読みます。
溜色(ためいろ) 黒味がかった暗い赤色のことで、別名を「栗色(くりいろ)」または「小豆色(あずきいろ)」とも言います。
溜塗(ためぬり) 朱漆黄漆などの彩漆を塗った上に溜色透漆をかける技法です。
下地の彩漆によって色味が変わります。
試し撃ち(ためしうち) 兜やを実際に鉄砲で射撃してみて、その強度を試すことを言います。
甲冑の強度を証明するのはもちろんですが、未貫通の弾痕(だんこん)がある甲冑を着用することで敵には恐れを、味方には安心感を抱かせる効果や、縁起的な意味もあったのではないかと言われます。
鉄砲以外に刀槍による試験もあったようですが、このようにして試験された甲冑はいずれも「様具足(ためしぐそく)」「仕寄具足(しよりぐそく)」などと呼ばれます。
様兜(ためしかぶと) 試し撃ちをして強度を測った兜のことです。
別名を「仕寄兜(しよりかぶと)」とも言い、攻城戦などに縁起の良い物とされたようです。
段威(だんおどし) 色目の一つで、二色を使って一段おきに交互に威す方法を言います。
なお二色のうちの一色は白が原則とされます。
段替胴(だんがえどう) を統一した様式ではなく、異なった様式で作った物です。
の上部を毛引威とした場合を「胸取(むなとり)」、下部が毛引威の場合を「腰取(こしとり)」、上下が毛引威で中間を別の手法で行った物を「胸腰取(むなこしとり)」と言います。
短筒(たんづつ) 文字通り銃身(じゅうしん)が短い火縄銃のことです。
長さ30cm程度の物が多いようで、片手で扱います。
説によっては片手で扱うものを短筒、それよりやや銃身(じゅうしん)が長く両手で扱うものを馬上筒、として区別しているようですが、両者は馬上筒として一緒にされることが多いようです。
乳(ち) 指物に旗を用いる時、竿(さお)やを通すために付けられた帯状(おびじょう)の布(ぬの)のことを言います。
力韋(ちからがわ) @:佩楯家地に縦(たて)に縫い付けられた絵韋のことを言います。
家地が伸びるのを防いだり、布を補強(ほきょう)する目的で付けられました。
鞭差穴の縁(へり)も含みます。
A:兜の浮張の裏に十文字(じゅうもんじ)にあてた細長いのことを言います。
浮張が伸びるのを防ぐ目的で江戸時代から行われ、「十文字韋(じゅうもんじがわ)」とも言います。
B:の裏側に上段から下段にかけて貼られた細長いのことです。
平安時代後期から鎌倉時代前期にかけては馬手袖の裏側後方のみに貼られ、の矢がに引っ掛かるのを防いでいたので「矢摺韋(やずりのかわ・やずりがわ)」とも言います。
南北朝時代以降になると左右のの裏側中央に貼られるようになり、腕(うで)が引っ掛かるのも防ぐようになったため、「籠手摺韋(こてずりがわ)」「籠手摺(こてずり)」「袖摺韋(そでずりがわ)」とも呼ぶようになりました。
C:水緒韋のことです。
D:革製ののことです。
滕形(ちぎりがた) 佩楯阿伊佐で、鼓(つづみ)を寝かせたように中央部分の幅がやや狭くなった形のものを言います。
千切り踏込(ちぎりふんごみ) 踏込佩楯阿伊佐を左右に分割せず、一続(ひとつづ)きの帯状(おびじょう)にした「一文字(いちもんじ)」形式の物を言います。
知多懸鐙(ちたがけあぶみ) 尾張(おわり=愛知県)知多半島(ちたはんとう)の大野谷(おおのや)にいた鍜冶(かじ)集団、「大野鍜冶(おおのかじ)」が作っていたと言われるのことです。
鉄地(てつじ)に象眼をし、刺鉄が左右どちら側にも倒れるようにに切り込みが作ってあります。
そのため左右の区別なくを使えるというのが特徴です。
単に「知多懸(ちたがけ)」「知多掛(ちたがけ)」とも言い、「大野鐙(おおのあぶみ)」「日野懸(ひのがけ)」「佐々木懸(ささきがけ)」「無双鐙(むそうあぶみ)」とも呼ばれているようです。
千鳥掛(ちどりがけ) @:平安時代から鎌倉時代頃まで行われた臑当を固定する古式(こしき)の方法です。
ふくらはぎの所で紐(ひも)を下から左右ジグザグに通して上で結ぶ方法を言います。
手間のかかる結び方なので鎌倉時代中期頃からは次第に上下結が使われるようになりました。
紐(ひも)を単純に左右交互に通して「w」字状のジグザグにした結び方を「千鳥カガリ(ちどりかがり)」、現代のスニーカーや編み上げブーツのように真ん中で「×」字状に交差するようにした結び方を「本カガリ(ほんかがり)」と区別して呼ぶ場合もあるようです。
A:籠手連糸を単純に左右の家地に交互に通して「w」字状のジグザグにした形式のことです。
B:@のような紐(ひも)のかけ方のことを言います。
いずれも千鳥(ちどり)の歩き方にたとえてこう呼ばれます。
「鵆掛」とも書きます。
茶入(ちゃいれ) 抹茶の粉末を入れる容器のことですが、特に濃茶用の粉末を入れる陶磁器製のものを指す場合に使われ、などを指すのには使われないようです。
「小壺(こつぼ)」「擂茶壺(すりちゃつぼ)」「濃茶器(こいちゃき)」とも言います。
中小姓(ちゅうごしょう) 江戸時代の諸藩の職名の一つで、小姓組と徒士(かち)衆の中間の身分の者を言います。
主君に近侍する小姓組に対し、主君外出の際供奉し、また祝日に配膳・酌役等を務めたようです。
「中小性」「中扈従」とも書き、「御中小姓(ごちゅうごしょう)」とも言います。
長庚(ちょうこう) 太白のことです。
「ゆうずつ」「ゆふづつ」「ゆうつず」とも読み、「夕星」とも書きます。
丁子紋(ちょうじもん) 丁子(ちょうじ)とはインドネシアのモルッカ諸島原産の香辛料(こうしんりょう=スパイス)であるクローブのことで、日本では奈良時代にはすでに輸入され、薬や香料(こうりょう)として珍重(ちんちょう)されていたようです。
その貴重さから図案化されたと考えられています。
「丁字紋」とも書き、使われる本数やその配置などによっていくつかの種類があります。
提灯(ちょうちん) 昔の照明器具の一つで、古くは木の枠(わく)や籠(かご)に紙を張り中に蝋燭(ろうそく)を立てていましたが、後には細い竹ひごの輪を重ねて骨としたものに紙を張り、折り畳(たた)みができるようになりました。
形や用途によって「小田原提灯兜(おだわらぢょうちん)」「箱提灯(はこぢょうちん)」「高張り提灯兜(たかはりぢょうちん)」などがあります。
数える時は「一張(ひとはり)」と数えます。
縮緬(ちりめん) 元々は絹(きぬ)を平織にして作った織物のことで、縦糸(たていと)に無撚糸、緯糸(よこいと)に強撚糸を使うことで「皺(しぼ)」と呼ばれる独特の凹凸(おうとつ)が出来ます。
現在は絹(きぬ)以外でもこう呼びます。
洋服の場合は「クレープ織(くれーぷおり)」と言います。
柄(つか) 刀剣(とうけん)の手で握(にぎ)る部分のことを言います。
番頭(つがいがしら) 十王頭のように、三つに分割された臑当立挙の合わせ目を菱綴で留めたもののことです。
使番(つかいばん) 戦闘時に各隊へ命令を伝えたり、巡察(じゅんさつ)などを行う役目の兵士のことです。
単なる伝令役ではなく、必要に応じてその場にとどまり各部隊の指揮をとったりすることもあったようで、それなりの器量を持った人物が任命されました。
特別に決められた指物母衣の使用を許される場合が多かったようで、憧(あこが)れの役職の一つだったようです。
柄頭(つかがしら) 刀(かたな)ので、刀身(とうしん)と反対側(の先端(せんたん)部分のことを言います。
「把頭」とも書きます。
柄巻(つかまき) 文字通りに巻(ま)いた糸や革の紐(ひも)のことで、いろいろな巻き方があります。
連糸(つがりいと) 籠手の内側で左右の家地を引き合わせて筒状(つつじょう)にするための千鳥掛雙カガリに用いられる太い紐(ひも)や組紐のことを言います。
月数(つきかず) 源氏八領の内の一領で、朽葉色唐綾威とされています。
名前の由来は色々威で12段あったから、兜鉢の矧板(はぎいた)が12枚だったから、星兜の星の数が12個だったから、などと言われています。
保元の乱で源頼賢(みなもとよりかた)が着用したとされていますが、その後どうなったかについては不明です。
月形(つきがた) 喉輪に使われる三日月型の板のことで、漆塗り(うるしぬり)の鉄やネリ革で作られています。
この板に蝙蝠付を用いてを付け、両端から出した紐を首の後で縛って使います。
「喉巻(のどまき)」「領取廻し金(えりとりまわしがね)」とも言います。
月毛(つきげ) 馬の毛色の一つで、クリーム色から淡(あわ)い黄白色(おうはくしょく)の毛色を言います。
「鴾毛」とも書きます。
継籠手(つぎごて) 手甲小手二の腕のそれぞれが別になっており、を掛(か)けたり紐(ひも)を結(むす)んだりすることによって連結できるようにした籠手のことを言います。
ツク(つく) @:番(つが)えた矢が弓から外れ落ちないように、弓の握(にぎ)り部分に取り付けた「折れ釘(おれくぎ)」のような金具のことを言います。
A:弓弭の別名(べつめい)です。
B:弓弭にかぶせる金属や角製(つのせい)の器具(きぐ)のことです。
ツク腹帯(つくはるび) 室町時代末期頃から用いられたとされる腹帯の形式で、麻(あさ)の捻紐(よりひも)を折り並べて幅約10cm・長さ約80cmの帯状(おびじょう)にして横縫(よこぬ)いし、帯(おび)の一方には鉄または銅の環(わ)を付け、もう一方には2.5m程度の力縄(ちからなわ)と1.5m程度の待緒(まちお)と呼ばれる紐(ひも)を付けます。
帯(おび)の部分を馬の腹にまわして両端(りょうはじ)を切付から外に出し、居木の下を通して反対側に持ってきた力縄(ちからなわ)を環(わ)にくぐらせてから折り返し、待緒(まちお)と結(むす)んで固定します。
付総(つけぶさ) 総角水呑緒などの緒(お)の端(はじ)に、別で作っておいた房(ふさ)を取り付けたもののことを言います。
近世(きんせい)以降に行われ、それより前は切総が一般的だったと考えられています。
「付房」とも書きます。
付眉庇(つけまびさし) 兜鉢とは別に作って腰巻板に鋲(びょう)などで取り付けた眉庇のことを言います。
形状によって伏眉庇出眉庇直眉庇に分けられます。
附物(つけもの) 兜蓑引廻しなど、雨湿乾燥防止と相手への威嚇(いかく)効果・装飾効果をかねて兜につけられた付属物のことを言います。
筒籠手(つつごて) 籠手の古い形式で、筒(つつ)を縦(たて)に割ったような縦長(たてなが)の座盤を三枚または五枚連結したものを言います。
それぞれを「三枚筒(さんまいづつ)」「五枚筒(ごまいづつ)」と言い、糸・・蝶番(ちょうつがい)などで連結されています。
筒臑当(つつすねあて) 臑当の古い形式で、筒(つつ)を縦(たて)に割ったような縦長(たてなが)の板を連結したものを言います。
一枚板だけのものや五枚板のものもありますが、たいていは中央の板の両脇に蝶番(ちょうつがい)で板を一枚ずつ連結した三枚板の形式です。
南北朝の頃から上部に立挙が付くようになったほか、下部には甲懸を取り付けたと思われる穴が残っているものもあります。
板の連結には糸・なども使われました。
包仏胴(つつみほとけどう) 桶側胴伊予札で構成されたの表面に漆(うるし)を厚く塗って平らにし、全体を一枚のや織物(おりもの)で包んであたかも一枚板の仏胴のように見せたものを言います。
包みの場合には天人胴のように表面に蒔絵が施されることもありました。
さらに、見た目の単調さを無くすために菱綴畦目綴としたものもあります。
似たものに桶側仏胴と呼ばれる形式もあります。
葛藤(つづらふじ) ツヅラフジ科の蔓(つる)植物で、蔓(つる)は籠(かご)などを編む材料として使われるほか、根や茎(くき)はリュウマチなどの薬として使われます。
角本(つのもと) 兜の立物を付ける為の突起(とっき)です。
立物が大きい時は二本並べて「並び角本(ならびつのもと)」と称する物もあります。
鍔(つば) 刀剣(とうけん)のと刀身(とうしん)の間にある板状(いたじょう)の部分を言います。
を握(にぎ)る手を保護(ほご)するための部品で、鉄や銅などで作られています。
古くは「つみは」「つみば」とも言い、「鐔」と書く場合もあります。
お互いにここを当てて押し合う様子から、「鍔迫り合い(つばぜりあい)=激しく争(あらそ)う」と言う言葉が生まれたようです。
燕頬(つばくろぼお) 顎(あご)から両頬(りょうほほ)のラインを覆う「V」字型の半頬のことです。
「V」字型が燕(つばめ)の尾に似ていることからこう呼ばれます。
壷鐙(つぼあぶみ) の形式の一つで、金属製で、足のつまさき部分のみを覆うような形のものを言います。
平安時代以前の形式とされます。
壷板(つぼいた) 大鎧の右側面を防御する脇楯の上部を構成する鉄板のことで、金具廻りの一つです。
形が壷(つぼ)に似ているのが名前の由来と言われ、この板の下に蝙蝠付馬手草摺が連結されます。
壷袖(つぼそで) の形式の一つで、下に行くほど幅が狭くなる形式を言います。
室町時代後期頃に発生し、主に腹巻に添えて使われました。
「窄袖(つぼみそで)」の当て字か、あるいは呼び方が変化したのが名前の由来ではないかという説があるようです。
これと逆の形式を広袖と言います。
爪折(つまおり) 草摺の両端に撓(た)めをつけることを言います。
「褄折」とも書きます。
褄取威(つまどりおどし) 色目の一つで、「褄(つま)」は「端(つま)」、すなわち「端(はじ)」の意味で、鎌倉時代後期以降に行われた草摺の一方の端(はじ)を四〜六色の威糸を用いて威す形式を言います。
は下に行くほど幅が狭くなる下向きの直角三角形、草摺では下に行くほど幅が広くなる上向きの直角三角形となります。
一般的には前草摺引敷草摺馬手側の端(はじ)に、馬手草摺射向草摺は前方の端(はじ)に施したようです。
「妻取威」とも書き、「肩異色威(かたいいろおどし)」とも言います。
摘(つまみ) 籠手手甲で、手甲の先にさらに一枚板を取り付け、指の第二関節(親指は第一関節)部分までを覆ったもののことを言います。
親指は大指の摘(おおゆびのつまみ)」と言います。
摘手甲(つまみてこう) 近世の籠手で、手甲の先にが付いているものを言います。
「本手甲(ほんてこう)」とも言います。
露落しの穴(つゆおとしのあな) @:待受の底に開けられた穴のことです。
A:汗流しの穴のことです。
貫(つらぬき) 踝(くるぶし)の下くらいまでを覆う丈(たけ)の短い毛皮製の沓(くつ)のことです。
猪(いのしし)・鹿・熊の毛などで作られ、身分の高い人は虎や豹(ひょう)などを使う場合もあったようです。
この他に馬上沓と呼ばれる沓(くつ)もあります。
貫臑当(つらぬきすねあて) 三枚ほどの板で構成された筒臑当で、板同士を鎖(くさり)でつなぎ合わせたものを言います。
弦走韋(つるばしりがわ) 大鎧前方から左前方にかけて貼られた絵韋のことです。
弓の弦(つる)がの頭に引っかかるのを防ぐ目的で貼られたと言われています。
このが貼られている場合に限っての前方を「弦走(つるばしり)」と言います。
鶴斑毛(つるぶちげ) 白と黒の斑毛の馬で、日本固有の馬だったようですが、今では絶滅してしまったそうです。
弦巻(つるまき) 文字通り予備用の弓の弦(つる)を巻いておくための道具で、中心に穴の開いたドーナツ状の輪(わ)の形をしており、輪(わ)の中央には弦(つる)を巻くための溝があります。
麻(あさ)に天鼠を塗って作られている弦(つる)は折り目が付くとそこから切れやすくなるため、この溝に巻いた状態で持ち運びました。
牛の皮や葛藤などで作られ、の腰紐(こしひも)などにかけて左腰に下げたようです。
「弦袋(つるぶくろ)」「弓弦袋(ゆみづるぶくろ)」とも言います。
出総角(であげまき) 総角を結(むす)んだ時に、結び目が「人(ひと)」の字になるものを言います。
「人型(ひとがた)」とも言い、これと逆の結(むす)びは入総角と言います。
手首の緒(てくびのお) 籠手の手首のところにある紐(ひも)のことで、の位置を調節するための紐(ひも)と言われます。
手首の表に緒(お)を二個所で留めてあり、緒(お)の両端は責鞐笠鞐になっていて手首の内側で掛け合わせます。
緒(お)が長い物は手首に巻いて笠鞐をその重なりにからげて留めてようです。
「標緒(しめお)」手甲の緒(てこうのお)」「手先の緒(てさきのお)」「手占の緒(てじめのお)」「手首巻(てくびまき)」とも言います。
手甲(てこう) 「指番(ゆびつがい)」とも言います。
籠手の一部で、手首から先の部分を覆う金物(かなもの)の名称です。
古くは先が丸い一枚板で手の甲(こう)だけを覆う「鯰手甲(なまずてこう)」と呼ばれる形式でしたが、室町時代末期頃から手の甲(こう)に加えて大指と残りの四本指を覆う板が追加され、それぞれを鎖(くさり)でつなぐ形式となりました。さらに江戸末期頃にはガントレット形式のもの見られます。
「鉄蓋(てつがい)」とも言います。
鉄漿(てっしょう) @:御歯黒のことです。
A:鉄を水・茶・酢・酒などの液体に長く浸(ひた)して作った褐色の液体のことで、御歯黒や染物(そめもの)などに使われました。
「おはぐろ」「かね」とも読みます。
鉄媒染(てつばいせん) 鉄分(てつぶん)を含んだ泥水(どろみず)や鉄漿に木綿(もめん)や絹(きぬ)を浸(ひた)して、黒などに染める方法を言います。
鉄砲筒(てっぽうづつ) 鉄砲を入れる筒状のケースです。
表面は漆塗り(うるしぬり)や蒔絵螺鈿などで装飾されることが多いようです。
また、形は似ていますが刀(かたな)を入れる物は刀筒と呼びます。
手抜緒(てぬきお) 猿手手抜緒孔に通す紐(ひも)のことで、この紐(ひも)に手首を通し、戦闘中(せんとうちゅう)に誤(あやま)って刀が手から落ちるのを防止したとされます。
古くは紐(ひも)の色で身分を表していたようです。
「たぬきお」とも読み、「腕抜緒(うでぬきのお)」「腕貫緒(うでぬきのお)」とも言います。
手抜緒孔(てぬきおのあな) 手抜緒を通すためにに開けられた孔(あな)のことです。
「たぬきおのあな」とも読み、「手抜緒穴」とも書きます。
手拭付鐶(てぬぐいづけのかん) 両乳鐶の一つで、江戸時代になって当世具足、またはその時代に作られた胴丸腹巻の装飾として前立挙左側に付けられた鐶(かん=輪)のことを言います。
この鐶(かん=輪)に、戦場での息切(いきぎ)れを防ぐため濡(ぬ)れ手拭(てぬぐい)を付けて時々口にくわえた、あるいは背中の指物が抜け落ちるのを防ぐための紐(ひも)を結びつけた、などと言われていますが、実際その様に使われたのかは不明です。
また軍配の紐(ひも)を結ぶための鐶(かん=輪)だとも言われ、「団扇納めの鐶(だんせんおさめのかん/うちわおさめのかん)」とも言われているようです。
出八双(ではっそう) 入八双の逆で、ジグソーパズルの凸状に中央が張り出した形を言います。
張り出した部分は宝珠のような輪郭(りんかく)になっていることが多いようです。
天辺(てへん) 兜鉢の頂上のことです。
古くは天辺の穴天辺の座を意味していました。
ちなみに、「てっぺん」と言うのはこの言葉が転化した物だとする説もあるようです。
天辺の穴(てへんのあな) 天辺に開いた穴のことで、古くは兜を着用する際にこの穴から烏帽子で包んだ髻(もとどり=たばねた髪)を出して兜を固定するために使われていましたが、時代が下がると次第に縮小され、換気用の穴と解釈されるようになりました。
「天空の穴(てんくうのあな)」「手返(てへん)」「息出(いきだ)し」「息才(そくさい)」とも呼ばれます。
天辺の座(てへんのざ) 天辺の穴の周りを飾る金物(かなもの)のことを言い、真鍮金銅赤銅四分一などが使われています。
もともとは天辺の穴を補強(ほきょう)するための金物(かなもの)でしたが、次第に装飾の目的が強くなり、上から玉縁小刻座上玉抱花菊座浪座縄目座葵座などの部品を七重から九重に重ねる場合もあったようです。
江戸時代にはこの場所に神が宿(やど)るとされ、「八幡座(はちまんざ)」「神宿(かんやどり)」「須弥座(しゅみざ)」とも呼ばれました。
出眉庇(でまびさし) 付眉庇の中で、兜鉢からやや斜め前方に突き出すように取り付けられた眉庇のことを言います。
天冠(てんかん) @:幼い天皇が即位(そくい=天皇になる)する時に着ける冠(かんむり)のことです。
A:仏や天人などが着けている宝石で飾った冠(かんむり)のことです。
B:騎射(きしゃ・うまゆみ=馬に乗って矢を射る)や舞などの時に子供が額(ひたい)に着ける飾りのことです。
C:葬式のときに、死者または親族が額に当てる三角形の白い紙のことです。
「てんがん」とも言います。
天狗頬(てんぐぼお) @:鳶頬のことです。
A:鼻の長い天狗(てんぐ)の面を模した目下頬のことで、江戸時代に作られました。
天谷山形兜(てんこくざんなりかぶと) 阿古陀形兜の変形と言われ、縦長(たてなが)の兜鉢天辺をよりくぼませて、前後に二つのコブ山を作った兜のことを言います。
また、これが後世になっていずれかのコブを強調する、前勝山形兜後勝山形兜のもとになったとも考えられているようです。
天神差し(てんじんざし) 打刀の差し方の一つで、それまでの太刀のように刀(かたな)の刃を下に向けた差し方のことです。
馬に乗る際や鉄砲隊の兵士は、が馬や地面に当たらないようにこの差し方にしたと言われます。
「陣中差し(じんちゅうざし)」とも言うようです。
天衝(てんつき) 長大な「U」字型のことで、立物指物の意匠(いしょう=デザイン)として使われました。
天人胴(てんにんどう) 包仏胴の表面に、高台寺蒔絵で天人(てんにん=天に住む人)の絵を描(えが)いたのことです。
加藤嘉明(かとうよしあき/よしあきら)が所有していたとして知られています。
天風(てんぷう) 指物の一つで、鍬形天衝に似た「U」字型をしていますが、先端の部分を外側に向けて尖(とが)らせたものをいいます。
雁股に似ています。
「転風」とも書き、「箕手(みので)」とも言います。
籐(とう) ヤシ科の蔓(つる)植物の総称です。
茎(くき)は弾力(だんりょく)があって強靭(きようじん)で、籐細工(とうざいく)などに使用されます。
これをに用いた例として網代胴籐伏胴があります。
「ラタン」とも言います。
唐冠形兜(とうかんなりかぶと) 冠形兜で、中国の役人(やくにん)の冠(かんむり)を模した物を言います。
冠(かんむり)から左右に張り出す展角立物として付く場合が多いようです。
「とうかんむりなりかぶと」とも言います。
ちなみに日本の冠(かんむり)の場合は和冠形兜と言います。
唐人笠兜(とうじんがさかぶと) 唐人(とうじん)が被(かぶ)る笠(かさ)を真似て作られた兜で、兜鉢を高くとがらせ、そのまわりにつばを一周廻(めぐ)らせた形式がよく見られます。
唐人(とうじん)とはもともと中国人や韓国人のことを言いましたが、後には広く外国人一般を指すようになりました。
「唐笠兜(とうがさかぶと)」とも言います。
胴火(どうび) 「胴の火(どうのひ)」とも言います。
@:火縄の火を消さずに持ち運びが出来るようにした道具のことです。
A:銅の筒(つつ)に和紙(わし)や植物繊維などを蒸(む)し焼きにして黒く炭化(たんか)させたものをつめたもので、火をつけると長い時間をかけてゆっくりと燃えるので、ライターやカイロの代わりとして使われていたようです。
籐伏胴(とうぶせどう) ネリ革で作られた仏胴の表面に、二つに割(わ)りにしたを隙間無く並べて漆(うるし)を塗ったのことを言います。
軽くて強靭(きょうじん)なのは網代胴と同じか、こちらの方がより頑丈(がんじょう)だとも言われます。
唐丸(とうまる) 鶏(にわとり)の品種の一つで、東天紅(とうてんこう)・声良(こえよし)とともに日本三大長鳴鶏(にほんさんだいながなきどり)に数えられています。
現在は天然記念物に指定されています。
「蜀鶏」とも書きます。
胴丸(どうまる) 右側に引合せがあり、前立挙は二段、後立挙は三段、草摺は八間五段下りの形式を普通としたのことです。
当初は軽武装用でしたが、鎌倉時代以降には通常の軍装として流行しました。
胴丸具足(どうまるぐそく) 胴丸の形式を持った当世具足という意味でこう呼ばれますが、本来は丸胴具足の名称の方がより正確だと思われます。
胴乱(どうらん) 火縄銃の玉・早合火薬などを入れて腰(こし)につける入れ物の事です。
一般的には皮または布製の四角の袋で、1603年刊行の「日葡辞書」に掲載されていることからその頃には一般的に使われていたと思われます。
後(のち)には印・薬・銭・煙草(たばこ)入れとして用いられるようになりました。
「胴卵」とも書きます。
研ぎ出し(とぎだし) 漆(うるし)を塗った表面を磨(みが)いて艶(つや)を出したり、漆(うるし)に塗り込んだ下地(したじ)の文様などを磨(みが)き出す技法のことを言います。
磨(みが)きには木炭(もくたん)が使用されます。
木炭(もくたん)は材質によって硬さが異なるので、摺り漆を繰り返す度に使う木炭(もくたん)を変えて仕上げていく場合もあるようです。
鍍金(ときん) 「めっき」のことです。
材料の表面を金属の皮膜(ひまく)で覆う金属表面処理の技法で、その歴史は古く、今から3500年前までさかのぼると言われます。
古代は水銀(すいぎん)に金や銀を混ぜ合わせた物質(アマルガム)を地に塗りつけ、それを火であぶって水銀(すいぎん)だけを蒸発(じょうはつ)させ、金属皮膜(ひまく)を形成する方法が行なわれていました。
なお、日本で最初の電気を用いた「電気めっき」は、1885年に薩摩藩主(さつまはんしゅ):島津斉彬(しまづなりあきら)公が鎧の金具に施した物だそうです。
兜巾(ときん) @:山伏(やまぶし)が被(かぶ)る、丸くて上部が尖(とが)った黒い小さな冠(かんむり)のことを言います。
黒い色が無明(むみよう)を、円形(えんけい)が仏(ほとけ)の徳(とく)の完全性を、一二のひだが一二因縁(じゅうにいんねん)を表しているそうです。
「五智宝冠(ごちほうかん)」とも言います。
A:山伏(やまぶし)が頭を覆う、白く長い布(ぬの)のことを言います。
一般(いっぱん)に布(ぬの)の両端(りょうはじ)はそれぞれ頭の左右(さゆう)で結(むす)び垂(た)らします。
「裹頭襟(つつみときん)」とも言います。
兜巾形兜(ときんなりかぶと) 兜巾を模した変わり兜のことです。
全体で兜巾を表(あらわ)す場合と、打出しなどで兜巾を被(かぶ)っている様子を表(あらわ)した場合があるようです。
禿頭形兜(とくとうなりかぶと) 禿(は)げ頭を模した変わり兜のことです。
通常、坊主頭(ぼうずあたま)のような丸い形をした兜鉢目下頬が取り付けられ、頭と顔全体を覆うような作りになっています。
「入道頭形兜(にゅうどうがしらなりかぶと/にゅうどうずなりかぶと)」とも言います。
所毛引(ところけびき) 毛引威の途中に一定の間隔をあけ、再び毛引威を行うしかたのことです。
寄懸威「吹寄威(ふきよせおどし)」とも言います。
所毛引間素懸(ところけびきあいだすがけ) 間隔をあけて毛引威素懸威を交互に行ったしかたのことです。
所籐弓(ところとうのゆみ) 日本の弓は木と竹をで貼り合わせ、固定の為に上から糸を巻いて漆で固め、更に補強と装飾を兼ねてを巻き付けますが、この巻き付け個所が弓全体に狭い間隔で沢山ある弓の事を言います。
二所籐弓三所籐弓があります。
土佐頬(とさぼお) 土佐(とさ=高知県)では錆地(さびじ)の面頬が好まれたと言われることから、錆地(さびじ)の面頬のことを言います。
兎耳形(とじなり) 文字通り兎(うさぎ)の耳を象(かたど)った意匠(いしょう=デザイン)のことです。
「うさぎのみみなり」とも読みます。
栃栗毛(とちくりげ) 馬の毛色の一つで、黒味(くろみ)を帯びた栗毛で、こげ茶色のような毛色のことです。
また、たてがみ・尾などの長い毛は全身と同じ色か、その色を帯びた白色になるようです。
独鈷剣(どっこけん) 剣(けん)のの部分が独鈷杵の形をしたものをこう呼びます。
独鈷杵(どっこしょ) 金剛杵の中で、柄(え)の両端(りょうはじ)に槍状(やりじょう)の刃が一つずつ付いた形状の物のことを言います。
「とっこしょ」とも読みます。
突パイ(とっぱい) 「パイ」は兜の意味で、天辺が尖(とが)って突き出た形の兜の総称です。
「突パイ形兜(とっぱいなりかぶと)」と言う場合もあります。
「錐形(きりなり)」「椎実形(しいのみなり)」「柿形(かきなり)」「筆形(ふでなり)」などの種類があります。
砥の粉(とのこ) 砥石(といし)や焼いた粘土(ねんど)を粉(こな)にしたもののことです。
鳶色(とびいろ) 名の通り鳶(とび)の羽の色に似た、赤味がかった暗い茶色のことを言います。
江戸時代には大変流行し、様々な種類の色が作り出されたようです。
鳶頬(とびぼお) 鼻の部分を鳶(とび)の嘴(くちばし)状にした目下頬のことで、「とんびぼお」とも読みます。
見た目が烏天狗に似ているところから、天狗頬とも言い、皺(しわ)を強く打出したものは迦楼羅頬と言います。
土俵空穂(どひょううつぼ) 矢羽を護る穂(ほ)の部分を特に大形に作った空穂のことで、普通の物より多くの矢が盛(も)れます。
穂(ほ)の形が土をつめた俵(たわら)に似ているところからこう呼ばれます。
矢を入れる容器には他に矢籠などがあります。
共糸(ともいと) 別の場所で使っている糸と同じ糸であることを言い、例えば耳糸威糸と同じ威糸にした場合などにこう言います。
共鉄(ともがね) 同じ母材(ぼざい)・同じ成分組成(せいぶんそせい)を持った金属同士をこう呼ぶようです。
「共金」「友金」とも書きます。
鳥毛(とりげ) 鳥の羽毛(うもう)のことで、指物などの飾(かざ)りに用いられました。
兜羅綿(とろめん) 綿糸にウサギの毛を混ぜて織り上げた織物のことを言います。
幅は一尺五寸(約50cm)で、色はネズミ色、藤色、薄柿色(うすがきいろ)などが多く、元々は海外からの輸入品でしたが、後にウサギの毛を混ぜないで織った国産の織物も出来ました。
ちなみに「兜羅」は綿花を意味するサンスクリット語(=古代インドで使われた言葉)に漢字を当てたものです。
「とらめん」とも言います。
な行 解説
長側(ながかわ) 立挙の下から草摺の上までのの部分のことで、衝胴とも言います。
茎(なかご) 刀身(とうしん)での中に入れる部分や、の中に入れる部分のことを言います。
「中子」「中心」とも書きます。
中差(なかざし) に矢を盛(も)る時に、上差に対して一般戦闘用に使用される最も大切な征矢のことです。
ただし身分のある者を打ち取るのは上差の矢でなければならず、この矢で敵を打ち取っても「流れ矢に中(あた)って討ち死に」とされ、矢を射た人も手柄(てがら)にはならなかったようです。
中白威(なかじろおどし) 中取威で、白で威した物のことを言います。
中取威(なかどりおどし) 色目の一つで、長側から草摺の上部にかけてを他とは違う色で威した形式を言います。
違う色で威した範囲が腰取威よりも広く、こちらの方が遅れて現れた形式だと考えられています。
白で威した場合は中白威と言います。
長覆輪(ながふくりん) 太刀柄頭から石突まで、全周に渡って覆輪をかけ通すことを言い、そのような太刀「長覆輪太刀(ながふくりんのたち)」と言います。
「ながぶくりん」とも読みます。
薙刀(なぎなた) 長い柄(え)の先に、刀(かたな)のような刃(は)をつけた武器のことです。
通常、柄(え)の長さは90〜180cm、刃(は)は30〜60cm程度で、刀(かたな)と同じ形状をし、小さめのが付いているのが一般的です。
刀(かたな)の部分の幅が細く反りが少ないものを「静型(しずかがた)」、幅が広く反りが大きなものを「巴型(ともえがた)」と呼び、刃(は)の長さが60cmを超え、柄(え)の長さが210cmを超えるようなものは「大薙刀(おおなぎなた)」と呼ばれます。
平安時代から南北朝時代には盛(さか)んに使われましたが、室町時代以後は槍(やり)に取って代わられました。
江戸時代になると、武家(ぶけ)の女性がたしなむ武道として再び盛(さか)んになったようです。
「長刀」とも書きます。
投頭巾形兜(なげずきんなりかぶと) 頭巾形兜の一つで、長い頭巾(ずきん)が頭の後方へ垂(た)れ、なびいている様子を模した兜のことを言います。
置手拭形兜から変形したものとも考えられているそうで、素材も鉄・ネリ革張懸などがあります。
梨子地(なしじ) 蒔絵地蒔きの一つで、漆(うるし)を塗った上に梨子地粉を蒔(ま)き、乾燥後、梨子地漆を塗って漆(うるし)を透(す)かして下の梨子地粉が見えるように研ぎ出したもののことです。
その様子が梨(なし)の皮(かわ)のブツブツのように見えることからこう呼ばれます。
梨子地漆(なしじうるし) 梨子地に使う黄色味(きいろみ)を帯(お)びた透漆のことです。
透明度の高い生漆に、梔子(くちなし)から採った黄色い染料や、草雌黄(くさしおう)から採った「藤黄(とうおう)」と呼ばれる黄色い染料(せんりょう)を加えたもので、金粉の発色が良くなるそうです。
梨子地粉(なしじふん) 梨子地に用いる金・銀を鑢(やすり)で細かくした粉(こな)のことで、平目粉をさらに平らに薄く細かくしたもののことを言います。
棗(なつめ) 茶入に対して薄茶用の抹茶の粉末(ふんまつ)を入れる蓋(ふた)つきの容器のことです。
木製が一般的で、その形が植物のナツメの実に似ているのが名前の由来(ゆらい)と言われています。
魚々子(ななこ) 先端が小さい輪状の刃になった魚々子鏨(ななこたがね)を用いて、金属に小さな粒(つぶ)の模様を一面に連続して彫り込む技法のことです。
粒(つぶ)を敷き詰めたような見た目が魚の卵に似ていることからこう呼ばれます。
普通は文様部以外の地(じ)の部分に打たれ、これを「魚々子地(ななこじ)」と言います。
「魚子」「七子」とも書き、奈良時代にはすでに専門の職人が居たようです。
靡(なびき) 旗の縦辺(たてへん)のみを竿(さお)に通した旗指物で風に靡(なび)く作りのものとされますが、撓いとの明確な区別は難しいとされます。
本によっては切裂のように深く細かい切り込みが入ったものの図を載(の)せている場合もあります。
「綺」とも書きます。
鯰尾形兜(なまずおなりかぶと) 長烏帽子形兜と似ていますが、兜の頂上が鯰(なまず)の尾鰭(おびれ)のように丸くひらたい形をした物を言います。
江戸時代には眉庇あたりに鯰(なまず)の目や髭(ひげ)を表現した物も現れました。
地震を起こすと信じられていたその力を象徴して作られたとの説もあるようです。
鯰籠手(なまずごて) 鯰(なまず)の頭に形が似ている手甲を備えた古式(こしき)の籠手のことで、平安時代後期頃に発生したと考えられています。
鉛柄杓(なまりびしゃく) 火縄銃の玉を作るための道具で、材料となる鉛(なまり)を火にかけて溶かす時に使います。
溶けた鉛(なまり)は玉型に流し込みます。
波兎(なみうさぎ) 波の上を飛び跳(は)ねる兎(うさぎ)をあしらった意匠(いしょう=デザイン)のことです。
能(のう)の「竹生島(ちくぶしま)」の一節(いっせつ)にある「月、海上に浮かんでは、兎(うさぎ)も波を奔(はし)るか、面白(おもしろ)の島の景色(けしき)や」を題材にした図案とされ、縁起の良い紋様として使われたようです。
「波に兎(なみにうさぎ)」「波に走り兎(なみにはしりうさぎ)」「波乗り兎(なみのりうさぎ)」とも言うそうです。
波頭(なみがしら) 文字通り、波の先端(せんたん)のことです。
波はその荒々しさと、様々に形を変え、寄せては返す様子が戦(いくさ)の駆け引きに例えられ、武具や家紋(かもん)の意匠(いしょう=デザイン)として用いられました。
「浪頭」と書く場合もあります。
波頭兜(なみがしらかぶと) 波頭を象(かたど)った変わり兜のことを言います。
いろいろな形がありますが明確な分類は難しいようです。
鳴門形兜と呼ばれる物もあります。
「波頭形兜(なみがしらなりかぶと)」とも言い、「浪頭兜」と書く場合もあります。
浪座(なみざ) 江戸時代の重ねの多い天辺の座によく見られる金具の一つで、外周部が波のように上下にうねっているものを言います。
「ウネリ座(うねりざ)」とも言います。
韋(なめしがわ) 毛と脂肪を取り除いて柔らかくした革のことを言います。
並札(ならびざね) 三目札より幅が細く、下縅威しのための穴が縦に二列開けられたです。
同士を半分ずつ重ねて連結します。
鳴門兜(なるとかぶと) 波頭兜の中で、特に頭のところで大きな渦巻(うずま)きを作っている物のことを言いますが、明確な分類は難しいようです。
有名な鳴門海峡(なるとかいきょう)の「鳴門の渦潮(なるとのうずしお)」が名前の由来と考えられます。
「鳴門形兜(なるとなりかぶと)」とも言い、「鳴渡」と書く場合もあります。
縄目縅(なわめがらみ) もともとは最上段に位置する小札札頭に施した威しの手法を言います。
威毛を左側の小札の下穴から表に出し、右側に並んだ小札の上穴から裏に抜きいて下におろし、再(ふたた)び下穴から表に出して次の小札の上穴へ、と続けていく手法を言います。
こうすると表に見える威毛の並び方が「////////」のようになり、これが縄(なわ)を縒(よ)ったように見えることからこう呼ばれます。
「琴搦(ことがらみ)」とも言います。
この手法で最上段のみでなく全体をす手法を「縄目威(なわめおどし)」と言い、甲冑には最も多く見られる威しの手法です。
縄目韋(なわめがわ) 斜めの筋(すじ)または波形(なみがた)の横筋(よこすじ)を色替(いろがわ)りの段(だん)で染めたのことです。
「縄目の色韋(なわめのいろかわ)」とも言います。
縄目座(なわめざ) 天辺の座に使われる金具の一つで、円の外周部に縄を撚(よ)ったような模様が付いたものを言います。
南蛮肩(なんばんがた) 南蛮胴に見られるような、押付板無しに肩上を伸ばしている形式の物を言います。
南蛮兜(なんばんかぶと) 輸入された西洋甲冑の兜鉢(モリオン兜やキャバセット兜など)を利用して製作された兜のことを言います。
中央に立てたが矢弾槍刃(やだまそうじん)を逸(そ)らせるのに良く、またそのデザインも好まれました。
これを真似たものに和製南蛮兜があります。
南蛮鎖(なんばんぐさり) 鎖(くさり)を構成する輪の切れ目の双方先端を平らに潰して重ね合わせ、鋲(びょう)で閉じた鎖(くさり)のことです。
南蛮胴(なんばんどう) 輸入された西洋甲冑のを利用して製作された物で、前中央に立てたが矢弾槍刃(やだまそうじん)を逸(そ)らせるのに良く、またそのデザインも好まれました。
前胴後胴のそれぞれが別々になった両引合せで、前胴発手が「V」字型になっているのが特徴です。
これを真似たものに和製南蛮胴があります。
また、このようにを立てた一般を鳩胸胴とも呼んでいます。
南蛮胴具足(なんばんどうぐそく) 南蛮兜南蛮胴を伴った具足のことを言います。
匂威(においおどし) 色目の一つで、同じ色で濃いものから淡(あわ)いものへとぼかして威す形式を言います。
裾濃威の反対で上を濃(こ)く下を淡(あわ)く威す形式のことだとも言われますが、実際にはシコロ草摺でぼかしの方向を逆にしたり、上下方向ではなく左右方向に色をぼかしたり、裾濃威と同じように下に行くほど濃くぼかしたり(ただし萌黄色黄櫨色にかぎる)する場合もあるようで、ぼかしの方向は必ずしも一定ではないようです。
萌葱匂黄櫨匂などがあります。
また、上段が白で下に行くほど濃(こ)い色になるものを「匂肩白(においかたじろ)」と呼ぶ場合もあるようです。
仁王胴(におうどう) 仏胴の中で、特に筋肉や骨の様子を隆々と打出し朱漆塗りや肉色塗などにした物を言います。
助骨(あばら)の様子を特に強く打出した物を「助骨胴(あばらどう)」とも言うようです。
膠(にかわ) 獣(けもの)や魚の骨・皮などを石灰水(せっかいすい)に浸(ひた)してから煮つめた液体を濃縮して冷やし、固めた物を言います。
接着剤(せっちゃくざい)や染色(せんしょく)などの用途(ようと)で使われました。
握り革(にぎりがわ) ユヅカに巻く革(かわ)や布のことです。
柔(やわ)らかく吸湿性のある鹿革(しかがわ)を巻くことが多いようです。
肉色塗(にくいろぬり) 肉の色を表した薄橙色(うすだいだいいろ)で塗ることを言います。
江戸時代以前は獣(けもの)の肉の事を指す「宍(しし)」に因(ちな)んで「宍色(ししいろ)」とも呼ばれていたようです。
なお漆(うるし)に西洋(せいよう)の油絵(あぶらえ)で使われる顔料(がんりょう=絵具)などを練り込んでこの色を作り出した例(125)も確認されています。
錦革(にしきがわ) 織物の錦(にしき)に似せた文様を染め出した鹿革のことを言います。
蜷結(になむすび) 押付板から肩上懸通した高紐の長さを調節するために、途中で結ぶことを言います。
二の腕(にのうで) 「上膊(じようはく)」「上腕(じようわん)」とも言い、肩から肘(ひじ)までの腕(うで)の部分を言います。
ニの谷形兜(にのたになりかぶと) 一の谷形兜に似て兜鉢に屏風(びょうぶ)を立てたような板が付いた兜のことですが、板の中央に窪(くぼ)みがあり、正面から見ると「M」字型に二つの峰(みね)があるものを「二の谷」と呼ぶようです。
「ニの谷」は兵庫県にある源平合戦の古戦場で「一の谷」の隣(となり)にあります。
「ニの谷兜(にのたにかぶと)」とも言います。
二方白(にほうじろ) 兜鉢の前後に地板篠垂がある兜のことです。
二枚胴(にまいどう) を前後に二分して、左側を蝶番(ちょうつがい)付とした形式です。
蝶番(ちょうつがい)を「・」で表すと、「前胴後胴」の一箇所蝶番(ちょうつがい)二枚分割となります。
縫いくるみ(ぬいくるみ) 指物に旗を用いる時、竿(さお)を通す部分にを使わず、布(ぬの)全体でくるむようにして竿(さお)を通す形式のものを言います。
「袋乳(ふくろち)」とも言います。
縫延胴(ぬいのべどう) 伊予札の端(はじ)をわずかに重ねて革などで横縫(よこぬい)して札板にし、更に札板が崩(くず)れるのを防ぐために表に薄いを平(たい)らに貼って漆(うるし)で固めたものを一段とし、その段を重ねて構成されたのことです。
実際に伊予札を用いて作ったものを「本縫延(ほんぬいのべ)」切付札を用いて「本縫延(ほんぬいのべ)」のように見せたものを単に「縫延(ぬいのべ)」と言います。
表面を見ただけではどちらの手法であるかの判断は難しいですが、「本縫延(ほんぬいのべ)」引合せが楽なので丸胴形式が多く、「縫延(ぬいのべ)」は鉄板でかたいので二枚胴五枚胴形式が多いようです。
布腹帯(ぬのはるび) 中世まで使われた、一反(いったん=10m程度)の布(ぬの)を用いた腹帯の形式のことです。
布(ぬの)を畳(たた)んで帯状(おびじょう)にしたものを馬の背中から腹に垂(た)らして下で引っかけ合い、切付を通して引き上げてから一結(ひとむす)びし、残りを前輪に結(むす)び付けました。
布目象眼(ぬのめぞうがん) 地金に鑿(のみ)などで縦横の細かな溝(みぞ)を彫り、そこに金や銀などの金属を打ち込んでいく、象眼の技法の一つです。
細かな溝(みぞ)が布(ぬの)の織目(おりめ)に見えることからこう呼ばれます。
金属を用いた装飾としては、「暈(ぼか)し」を表現することの出来る唯一の技法とも言われているようです。
塗籠籐弓(ぬりごめとうのゆみ) 重籐弓の上にさらに漆(うるし)を塗った弓の事を言います。
根付(ねつけ) 提げ物の紐(ひも)の端(はし)に取り付け、提げ物が帯(おび)から抜け落ちるのを防ぐための小さな装飾品のことです。
根本(ねもと)に結(ゆ)わえ付けたので「根付(ねつけ)」と呼ばれるようになったと言われています。
数cmほどの大きさの柘植(つげ)・一位(いちい)・黒檀(こくたん)などの木や象牙(ぞうげ)を彫(ほ)って作られたものが多く、単純(たんじゅん)な形状のものから、動物・人物などを非常に緻密(ちみつ)に彫り上げたものなどがあります。
「根附」とも書き、「ねづけ」とも言います。
練糸(ねりいと) 灰汁(あく)や石鹸(せっけん)等を使ってセリシンを取り除いた生糸の事で、それによって柔らかく光沢のある絹糸(きぬいと)となります。
セリシンを取り除く程度によって「半練糸(はんねりいと)」「本練糸(ほんねりいと)」に分けられるようです。
ネリ革(ねりかわ) 牛の生革(なまがわ)を火であぶり、またはを溶(と)いた水に浸して柔らかくした後、複数枚重ねて鉄の槌(つち)で叩き互いに密着させ、それを乾燥させて作った革のことを言います。
などに用いられ、「責革(せめかわ)」「撓革(いためがわ)」とも言います。
練貫(ねりぬき) 経糸(たていと)に生糸、緯糸(よこいと)に練糸を用いた平織の絹織物(きぬおりもの)のことです。
「練貫織(ねりぬきおり)」「練(ね)り」とも言います。
篦(の) 矢の柄(え)の部分を指し、通常は竹が使われます。
「矢篦(やがら)」とも言います。
喉輪(のどわ) 「咽輪」とも書き、月形蝙蝠付を用いてを取り付けた防具のことです。
首元から胸上部までを防御し、「首鎧(くびよろい)」「喉鎧(のどよろい)」「涎懸(よだれかけ)」「涎金(よだれがね)」とも言います。
曲輪と呼ばれる様式の物もあります。
熨斗(のし) 正式には熨斗鮑と言い、祝い事などの進物(しんもつ)や贈答品(ぞうとうひん)に添える飾りで、四角形の色紙を細長く六角形にひだをつけて折りたたみ、熨斗鮑を細く切って包んだもののことを言います。
熨斗鮑の代わりに昆布(こんぶ)や黄色の紙を用いたりする場合もあります。
現在の祝儀袋(しゅうぎぶくろ)でも、表面右上に菱形(ひしがた)のような飾りとして印刷されています。
熨斗鮑(のしあわび) 鮑(あわび)の肉を薄く削(そ)ぎ、干(ほ)して生乾(なまがわ)きになったところを竹筒(たけづつ)で押し伸ばし、水洗い・乾燥・押し伸ばしを何度も繰り返して作ったもののことを言います。
鮑(あわび)は長寿(ちょうじゅ)をもたらす食べ物とされ、伸ばすこと(伸し=のし)も長寿(ちょうじゅ)につながることから、古くは儀式(ぎしき)用の肴(さかな)に用いられ、のちに祝い事の進物(しんもつ)や贈答品(ぞうとうひん)に添える風習となりました。
単(たん)に熨斗とも呼ばれ、「打鮑(うちあわび)」とも言います。
は行 解説
佩緒(はきお) 太刀を佩(は)く(=着ける)時に帯執に通して腰(こし)に巻(ま)いて結ぶ紐(ひも)のことを言います。
長さは一丈(いちじょう=3m)位で、組み紐(ひも)や革紐(かわひも)が使われました。
「太刀緒(たちお)」とも言い、打刀拵下げ緒に相当(そうとう)します。
拍車(はくしゃ) 乗り手の足の踵(かかと)に着け、馬の腹(はら)に刺激(しげき)を与えて馬が走る速度(そくど)をコントロールする金具のことです。
先端(せんたん)が棒状(ぼうじょう)のものを「棒拍(ぼうばく)」、西部劇のカウボーイでお馴染(なじ)みの「☆」形の円盤(えんばん)などが付いたものを「輪拍(りんぱく)」 と言います。
中世ヨーロッパでは騎士叙任式で授けられたことから、騎士の象徴の一つとされていたようです。
ちなみに、物事(ものごと)が一段と早まることを意味する「拍車をかける」はこれが語源といわれます。
白銅(はくどう) 銅(どう)にニッケルを10〜30%混ぜた合金のことです。
白熊(はぐま) ヤクの毛の白い物のことを言います。
黄櫨色(はじいろ) 「くすんだ黄茶色(きちゃいろ)」、「わずかに赤みのさしたにぶい黄色」などと言われる色で、ハゼノキを煎(せん)じた汁(しる)で染めることからこう呼ばれます。「櫨色」とも書き、「はぜいろ」とも言います。
姜合当理(はじかみがったり) 受筒を差し込む中央の穴のところで二つ折り出来るようにした合当理のことです。
受筒が入っていない時は折り畳(たた)めるので、からの取り外しも可能です。
黄櫨匂(はじにおい) 匂威黄櫨色を用いた物のことを言います。
「はじのにおい」とも言います。
馬上沓(ばじょうぐつ) 臑(すね)の中ほどまでを覆う、丈(たけ)の長い毛皮製の沓(くつ)のことです。
猪(いのしし)・鹿・熊の毛などで作られ、身分の高い人は虎や豹(ひょう)などを使う場合もあったようです。
この他にと呼ばれる沓(くつ)もあります。
馬上筒(ばじょうづつ) 文字通り馬に乗っていても使用できるよう、銃身(じゅうしん)の短い火縄銃のことです。
銃身(じゅうしん)がやや長く両手で扱うものが馬上筒、より銃身(じゅうしん)が短く片手で扱えるものが短筒、と区別する説もあるようですが、一緒にされるケースも多いようです。
弭(はず) @:弓弭のことです。
A:矢弭のことです。
「筈」とも書きます。
端裾濃威(はたすそごおどし) 色目の一つで、中央を淡(あわ)く、両端(りょうはじ)に向かって色を濃(こ)く威した物を言います。
「耳坐滋威」とも書きます。
肌付(はだつけ) 二枚重ねの下鞍のうち、下の物を言います。
「膚付」とも書きます。
鉢付板(はちつけのいた) 兜にシコロを付ける時、兜の腰巻板と重なるシコロの最上段のことを言います。
鉢付鋲(はちつけびょう) 兜にシコロを付ける時、兜の腰巻板シコロ鉢付板をとめる鋲(びょう)のことを言います。
八龍(はちりょう/はちりゅう) @:源氏八領の内の一領で、八大龍王(はちだいりゅうおう)を表す8匹の龍の飾りを全身に付けた鎧、もしくは八大龍王(はちだいりゅうおう)の姿を象った飾りを付けた鎧とされます。
平治の乱で源義平(みなもとよしひら)が着用し、敗走中に美濃(みの=岐阜県)の山の中に脱ぎ捨てられて失われたとされています。
「源平盛衰記(げんぺいじょうすいき/げんぺいせいすいき)」ではその後、源義経(みなもとよしつね)の手に渡り、手柄(てがら)のあった家臣に与えられたとされていますが、それ以降はどうなったのか不明です。
A:「@」に因(ちな)んで、後世では龍の飾りを付けた鎧のことをこう呼ぶことがあったようです。
八卦(はっけ) 「乾(けん=天)・兌(だ=沢)・離(り=火)・震(しん=雷)・巽(そん=風)・坎(かん=水)・艮(ごん=山)・坤(こん=地)」の八種類で自然界(しぜんかい)に存在する全てのものを表せるとされ、この八種類と「−」陽(よう)・「- -」陰(いん)の組み合わせ八種類の合計六十四種類の図形を使った占(うらな)いのことです。
図形を表すのに算木を用います。
占(うらな)いは当たることもあれば外れることもあるという意味のことわざである、「当たるも八卦、当たらぬも八卦(あたるもはっけ、あたらぬもはっけ)」はここからきています。
また、相撲(すもう)の「はっけよい」は「八卦良い」が語源だとする説もあるようです。
「はっか」とも言います。
八双金物(はっそうかなもの) 兜の鉢付板化粧板に打つ八双鋲の下に敷く細長い装飾用の金物(かなもの)のことを言います。
形により入八双出八双に分けられます。
「八相金物」とも書きます。
八双鋲(はっそうびょう) 化粧板などに打つ鋲(びょう)のことで、菊の花や家紋(かもん)などの意匠(いしょう=デザイン)が使われています。
半首(はつぷり) 額(ひたい)と両頬(りょうほほ)を防御する、「∩」字型をした面具です。
面具の中では最も古くから用いられていましたが、面頬の発達によって廃(すた)れていきました。
「はつむり」「はっぷり」とも読み、「半頭」とも書きます。
猿頬とも言います。
八方白(はっぽうじろ) 兜鉢の八方向に地板篠垂がある兜のことです。
鳩胸胴(はとむねどう) 鳩の胸を思わせる形状からこう呼ばれ、「面高胴(おもだかどう)」沢瀉胴(おもだかどう)」などとも言います。
南蛮胴和製南蛮胴など、の中央にが立って盛り上がっている形式全般を指す場合と、特に仏胴の立てられた物を指す場合があるようです。
を立てる手法は稀(まれ)に小札を用いたでも行われました。
鼻紙袋(はながみぶくろ) の前下方に付けられた蓋(ふた)付の袋のことです。
袋の材質は毛織物やなど様々で、鼻紙を入れる袋とされますが、薬品・小物・金銭などを入れることもあり、当(つばあて)」「薬入れ」「弦(つる)入れ」などの名称もあるようです。
見栄(みば)えがしないので江戸時代の具足では付けていない物が多いようです。
花緘(はながらみ) 小札金具廻りを綴(と)じるのに用いた菱綴のことを、特にこう言います。
縹糸威(はなだいとおどし) 縹色威毛を使って威した物を言います。
縹色(はなだいろ) 紺(こん)より薄く、浅葱色より濃い、露草(つゆくさ)の花のような青色とされます。「花田色」とも書き、「花色(はないろ)」とも言います。
脛巾(はばき) 脚(あし)の脛(すね)に巻く服装品のことです。
脛(すね)の保護、袴(はかま=ズボン)の裾(すそ)を束(たば)ねて動きやすくする、脛(すね)を締(し)め付けることで鬱血(うっけつ)を防ぎ疲れにくくするなどの目的で使われました。
室町時代以降は「脚絆(きゃはん)」と言う呼び方が一般的になりました。
藁(わら)などの植物を編んで作ったものを「脛巾(はばき)」、布製(ぬのせい)のものを「脚絆(きゃはん)」と呼び分けている地方もあるようです。
ハバキ(はばき) 鯉口に刀身(とうしん)を固定し、刀が勝手に抜けて来ないようにするための部品のことです。
を挟(はさ)んでと反対側のに付けられます。
銅製(どうせい)が一般的ですが、金や銀のものもあり、二重になったものは「二重ハバキ(ふたえはばき)」と言います。
脛巾を付けたような様子からこの名称が付いたとも言われているようです。
喰合鎖(はみわせぐさり) 鎖(くさり)を構成する輪の切れ目と切れ目を合わせて閉じた鎖(くさり)のことです。
イメージ的には「C」字の切れ目をくっつけてぴったり閉じた感じの輪です。
馬面(ばめん) 馬につける面具のことです。
唐鞍などの装飾用に使われる「銀面(ぎんめん)」と、武装用に使われる「龍面(りょうめん)」があります。
「銀面(ぎんめん)」は馬の額(ひたい)から鼻にかけてを覆うのが一般的ですが、「龍面(りょうめん)」は馬の額(ひたい)から鼻、さらに顔の両側を覆い、龍の顔などを模したものが多く見られ、通常は馬鎧と共に用いられました。
また、額(ひたい)の部分と両顎(りょうあご)部分のみを覆う物を「半馬面(はんばめん)」と言います。
早合(はやごう) 「早具(はやご)」とも言い、火縄銃の発射準備時間を短縮する目的で、あらかじめ一発分の上薬を竹・紙・角(つの)などの筒(つつ)に入れたもののことをいいます。
鉄砲玉一個を一緒に入れておく場合もあります。
これを10〜15発分、紐(ひも)でつないで肩からかけられるようにしたものを「襷早合(たすきはやごう)」と言います。
腹当(はらあて) の正面と左右の脇のみを守る最小の鎧で、鎌倉時代頃に軽武装用、下級者用の防具として用いられました。
草摺は三間の場合が多い様です。
祓立(はらいだて) 正しくは「祓立台(はらいだてだい)」と言います。
前立を差し込むための四角い筒状の台で、鎌倉時代末期頃は鍬形台の中央に付けられていましたが、室町時代には鍬形台に限らず眉庇中央に設けられるようになりました。
腹巻(はらまき) 背中で引合せる形式ののことを指しますが、古くは胴丸も含んでこう呼ぶ場合もあったようです。
南北朝時代頃の初期の形式には腹当から発展したことを示す共通点が多く見られます。
その後、室町時代になると臆病板を備え、兜やを伴った完全武装用の装備として用いられました。
張懸(はりかけ) 木や粘土(ねんど)で作った型に紙を重ねて張り、糊(のり)が乾いてから型を抜き取ったものや、木や竹などを編んで形を作った枠(わく)の上に紙を重ねて張ったものに漆(うるし)などを塗ったもののことを言います。
型を外すと中が空洞(くうどう)となり、しかも紙なので重量が少なく、様々な形を自由に作ることが出来ます。
「張懸鉢(はりかけばち)」とも言います。
張出板(はりだしいた) 脇張出後張出などで、矧(は)ぎ留めを開始する起点となる板のことです。
この板の両端から上重ねに矧ぎ留めを始めていきます。
張止板(はりとめいた) 脇張出後張出で矧(は)ぎ止めた矧板(はぎいた)の終点で、上から重ねる板のことを言います。
この板が前正中だけに有る場合は「前張止(まえはりどめ)」、前正中と後正中の両方に有る場合は「前後張止(ぜんごはりどめ)」と言うようです。
馬藺(ばりん) アヤメ科の多年草である「捩菖蒲(ねじあやめ)」の事です。
高さは約1メートルほどで、ねじれた剣状(けんじょう)の葉を持っています。
「ばれん」とも言います。
腹帯(はるび) 鞍橋を馬の背中に取り付けるために、馬の腹(はら)にまわしてしめた帯(おび)のことで、時代によって布腹帯ツク腹帯などの形態があります。
馬の帯径に取り付けます。
「はろび」とも言います。
這せ糸(はわせいと) 亀甲金を包んだ時に、亀甲金の周囲六辺を縫い付けることを言います。
「亀甲の絲(きっこうのいと)」「谷糸(たにいと)」とも言います。
蛮絵(ばんえ) @:鳥獣・草花などの形を丸く図案化した文様のことです。
A:西洋絵画を指す「南蛮絵(なんばんえ)」の略語です。
「盤絵」とも書きます。
半籠手(はんごて) 腕(うで)の外側になる部分だけを鎖(くさり)で覆う、最も一般的な籠手の形式を言います。
このほかに打廻籠手と呼ばれる形式があります。
番指物(ばんさしもの) 足軽使番など特定の集団や役職に属する者に与えられた、同じ意匠(いしょう=デザイン)で統一された指物のことを言います。
「ばんのさしもの」とも言います。
半舌鐙(はんじたあぶみ) の形式の一つで、壷鐙に足の土踏(つちふ)まずくらいまでを置くことができる「舌(した)」と呼ばれる部分を付けた物を言います。
平安時代の形式とされます。
半頬(はんぼお) 面頬の一つで半首を逆さまにしたような「U」または「V」字型をし、両頬(りょうほほ)と顎(あご)を防御します。
古くは「頬当(ほおあて)」とも呼ばれ、南北朝時代には使われていたようです。
古くはが付いていなかったようですが、室町時代に入るとが付いている物が一般的になったようです。
火穴(ひあな) 火皿に点火(てんか)された火を火縄銃の筒内(つつない)に伝えるために開けられた小さな穴のことです。
柊(ひいらぎ) 木犀(もくせい)科の常緑樹(じょうりょくじゅ)で、葉の縁が鋭い棘(とげ)になっています。
「日本書記(にほんしょき)」にはこの木から矛(ほこ)を作ったことが記され、現在でも節分(せつぶん)に魔除(まよ)けとして用いられることからも分かるように、破魔(はま)の力があると信じられていたようです。
緋色(ひいろ) 濃く明るい赤色、または赤く鮮(あざ)やかな鳶色のことを言います。
「深紅色(しんこうしょく)」「スカーレット」とも呼ばれ、古くは「あけ」とも言ったようです。
火色篦(ひいろの) 炭火にくぐらせて焼き色を付けたのことで、色の濃さによって名称が異なるようです。
檜扇(ひおうぎ) 平安時代に使われた扇(おうぎ)で、薄い檜(ひのき)の板を糸で連結したものを言います。
メモ代わりに檜(ひのき)の板を束(たば)ねていたのが起源ではないかとも言われているようです。
女性用のものは特に「袙扇(あこめおうぎ)」と呼びます。
控緒(ひかえのお) 鳩尾板の側面に有る大きな綰(わな)状の緒(お)のことで、ここに脇鞐の紐を通すことで、板が跳ね上がったり裏返ったりするのを防ぐとされます。
檜垣(ひがき) 斎垣のことで、「檜板(ひいた)」とも言います。
日数(ひかず) 源氏八領の内の一領で、星兜の星の数が360個あったのが名前の由来とされます。
星の数がひと月の日数くらいと言うのであればまだ理解できる気がしますが、平安時代にたくさんの星を打った小星兜のような物があったかどうかは不明です。
保元の乱で源頼仲(みなもとよりなか)が着用したとされていますが、その後どうなったかについては分かっていません。
引上綰(ひきあげわな) 小猿革に付けられた輪のことで、佩楯が下がるのを防ぐためにこの輪に紐(ひも)くぐらせ、その紐(ひも)を肩から斜めにかけていたようです。
「小猿締(こさるしめ)」「壺の緒(つぼのお)」とも言います。
緒留革と呼ばれる形式もあるようです。
引合せ(ひきあわせ) の合せ目のこと、またはの合せ目を留(と)めることを言います。
別名を「打合せ(うちあわせ)」とも言い、当世具足では「相引(あいびき)」「合引(あいびき)」とも言います。
引合緒(ひきあわせのお) 前後(ぜんご)の引合せて結ぶ紐(ひも)のことです。
一般的にはの右側面に付いていますが、腹巻では肩上の背中側に付いています。
「相引緒(あいびきのお)」とも言います。
引廻し(ひきまわし) 兜の附物の一つでシコロに沿って取り付けられた装飾のことを言います。
白熊黒熊赤熊などの他に、馬の毛や鳥の羽などを使って作られました。
「シコロ蓑(しころみの)」とも呼ばれます。
これと似た物に兜蓑があります。
肥後五鶏 (ひごごけい) 肥後(ひご=熊本県)で育てられていた「肥後ちゃぼ(ひごちゃぼ)」・「久連子鶏」・「熊本種(くまもとしゅ)」・「地すり(じすり)」・「天草大王(あまくさだいおう)」の5種類の鶏(にわとり)のことです。
一部は絶滅していましたが、近年、復元(ふくげん)の取り組みが行われ、5種類とも復活しています。
膝丸(ひざまる) 源氏八領の内の一領で、牛1000頭の膝の皮を集めて作られ、非常に頑丈(がんじょう)だとされた鎧です。
この鎧がその後どうなったかについては不明です。
火皿(ひざら) 火縄銃の筒(つつ)後部右側面に張(は)り出した皿状(さらじょう)の部分のことです。
火蓋が付いていおり、ここに口薬をのせます。
「ひさら」とも言います。
臂金(ひじがね) 籠手の臂(ひじ)の所に付けられた座盤のことです。
「臂溜の金(ひじたまりのかね)」とも言います。
備前筒(びぜんづつ) 備前(びぜん=岡山県)で作られていた火縄銃で、火挟を動かすカラクリと呼ばれる機構のバネが外側に付いているほか、丸い銃身(じゅうしん)で台木が黒色の物が多く、用心鉄が無いと言う特徴もあります。
菱綴(ひしとじ) を連結するときに威毛が「×」字状になるように綴(と)じていく手法のことを言います。
表側は「×」字状ですが、外から見えない裏側は畦目綴とし、それによって紐(ひも)の長さを節約するなど実用を主とした手法です。
菱綴胴(ひしとじどう) 桶側胴で板を矧(は)ぎ留(ど)めするときに菱綴としたものを言います。
また、で綴じた場合には漆(うるし)をかけて塗り固めました。
この他に鋲綴胴胸目綴胴があり、鋲綴胴の中には菱綴鋲を使って菱綴胴のように見せたものもあります。
菱綴鋲(ひしとじびょう) 桶側胴などを矧(は)ぎ留めるのに使う鋲(びょう)で、鋲(びょう)の頭が菱綴のようにクロスした十文字の形をしているものを言います。
「十文字鋲(じゅうもんじびょう)」とも言います。
菱縫(ひしぬい) 特に装飾効果を目的として裾板に施される菱綴のことを言います。
しかしながら実用性よりも美的効果に重点を置いている点、裏側でも威毛が「×」字状になって綴(と)じられている点が本来の菱綴と異なります。
また、通常は畦目綴と共に紅猿鞣や紅糸(くれないいと)など赤色系の威毛を用いるのが原則とされます。
書菱と呼ばれる形式もあります。
菱縫板(ひしぬいのいた) 札板の最下段のことで、威毛畦目綴菱縫の両手法で装飾している板なのでこの名称で呼ばれます。
室町時代後期以降、板札が主流となるにしたがって衰退(すいたい)し、当世具足では菱縫のない方が一般的となったために裾板の名称の方が広く使われるようになりました。
美女頬(びじょぼお) 皺(しわ)がなく穏(おだ)やかで、口や鼻が小さい女性的な表情をした目下頬を言います。
「女面(おんなめん)」「女顔(おんながお)」とも言います。
直垂(ひたたれ) 前襟(まええり)がなく、襟(えり)を左右で引き合わせ、組紐菊綴・胸紐(むねひも)があり、くくり袖の付いた衣装を言います。
通常は袴(はかま=ズボン)と合わせて着用します。
もともとは庶民(しょみん)の平服(へいふく)だったものが鎌倉時代以後は武家(ぶけ)の礼服(れいふく)となり、公家(くげ)でも常服(じょうふく)として用いられるようになりました。
なお菊綴の下など全体に五ヵ所、大きく家紋(かもん)を染め抜き、袴(はかま=ズボン)にも五ヵ所に家紋(かもん)を付けたものを特に「大紋(だいもん)」と言います。
引敷草摺(ひっしきのくさずり) 後方にある草摺のことを言います。
なお、反対側は前草摺と言います。
火縄(ひなわ) 檜(ひのき)の皮、竹の繊維または木綿糸(もめんいと)などを縄状(なわじょう)にした物の事で、よく燃えるように硝石をしみ込ませた物もあります。
火縄銃やタバコに火をつけるのに用いられました。
火縄銃(ひなわじゅう) 旧式の銃で、まず銃口(じゅうこう)から上薬・玉の順に入れてカルカで軽く突き固め、火皿口薬をのせてそこに火挟に挟(はさ)んだ火縄を使って火をつけて撃つ銃のことを言います。
「火縄筒(ひなわづつ)」「種子島(たねがしま)」とも呼ばれ、使用する玉の重さが30匁(さんじゅうもんめ=112.5g)以上の物を「大筒(おおづつ)」、10匁(じゅうもんめ=37.5g)程度の物を「中筒(ちゅうづつ)」、3匁(さんもんめ=11.3g)以下の物を「小筒(こづつ)」または「細筒(ほそづつ)」と呼ぶほか、生産地や用途(ようと)にちなんだ名称で呼ばれる場合もあります。
銃(じゅう)を撃つ時には先ず火蓋を開けて発射準備(はっしゃじゅんび)をする必要がありますが、この動作を「火蓋を切る(ひぶたをきる)」と言い、現在では物事を始める時の文句として使われています。
火縄通し穴(ひなわどおしのあな) 火縄を通すために火縄銃火挟のやや後方上部の台木に開けられた穴のことです。
無い場合もあり、単に「火縄通し(ひなわどおし)」とも呼ばれます。
日根野ジコロ(ひねのじころ) シコロ肩摺板が、肩に触れる部分は肩に合わせたような曲線で凹(へこ)み、後背部は逆に外側にカーブを描くような独特の曲線をしているのが特徴です。
普通、日根野頭形兜と組で用いられるようです。
後ろから見た姿が螽(いなご)の首のラインに似ているので「螽ジコロ(いなごじころ)」の俗称(ぞくしょう=正式名称ではない、世間での呼び名)があります。
日根野頭形兜(ひねのずなりかぶと) 「日根野形兜(ひねのなりかぶと)」「日根野兜(ひねのかぶと)」とも言います。
五枚張頭形兜で、「天辺を構成する板が、正面で眉庇の下に潜り込んでいる兜」と定義される場合が多いですが、必ずしもそうでない場合も有るようです。
またシコロは通常、日根野ジコロと呼ばれる物が用いられます。
「日根野」の名称は、日根野織部正(ひねのおりべのしょう)が考案したと言われていることに由来しますが、実際はそれ以前の室町時代末期から既に存在していたようです。
火挟(ひばさみ) 火縄銃を撃つ時に火縄を挟(はさ)む金属製の部品のこと言います。
バネを使ったカラクリと呼ばれる機構によって動くようになっており、最初にここを引き起こしてから上部の溝(みぞ)に火のついた火縄を挟(はさ)みます。
この状態で引き金を引くと火縄を挟(はさ)んだままバネの力で仕掛(しか)けが下に落ち、火縄の火が火皿口薬に点火(てんか)されます。
火は火穴を通じて上薬を爆発させ、その力で玉が発射(はっしゃ)されます。
響の孔(ひびきのあな) 兜鉢の左右の側面(そくめん)にある穴のことで、二個の場合と四個の場合があります。
元は忍緒を取るためのものでしたが、後世になって忍緒腰巻板の裏から取るようになってからも形式的(けいしきてき)に穴だけが残りました。
兜への打撃(だげき)の衝撃(しょうげき)をこの穴から逃がすと考えられたのが名前の由来(ゆらい)と言われるほか、穴が四個の場合は「四天の穴(してんのあな)」とも呼ばれ、穴の上に四天の鋲が打(う)たれている場合もあります。
火蓋(ひぶた) 火皿に付いてる蓋(ふた)のことで、口薬がこぼれるのを防(ふせ)ぐほか、火縄の火が誤って口薬に引火(いんか)しないようにする安全装置として使われました。
発射(はっしゃ)の時にはこの蓋(ふた)を開けますが、この動作を「火蓋を切る(ひぶたをきる)」と言い、現在では何か物事が始まる時の文句として使われています。
姫糊(ひめのり) 米をやわらかく炊(た)いたものに水を加えてすりつぶして作った糊(のり)のことを言います。
洗い張りや障子(しょうじ)を貼るのに用いられました。
「続飯(そくい/そっくい)」とも言います。
白檀塗(びゃくだんぬり) 一般に下地に金・銀を用いた上に透漆を塗る方法を言い、金白檀塗銀白檀塗があります。
下地と透漆の種類によって色味はさまざまあるようです。
兵庫鎖(ひょうごぐさり) 金銅などで作られた楕円(だえん)の輪(わ)を交互に通して折り返しつないだ鎖(くさり)のことです。
もとは「兵具(ひょうぐ=武具)鎖(ぐさり)」であったものが変化してこう呼ばれるようになったと言われます。
太刀帯執や馬具などに使われました。
鋲綴胴(びょうとじどう) 桶側胴で板を矧ぎ留めするときに鋲(びょう)を使ったものを言います。
鋲(びょう)は鉄・真鍮金銅などの金属製で、形は笠鋲(かさびょう)・家紋入り丸鋲(かもんいりまるびょう)などがありますが、中には菱綴鋲を使って菱綴胴のように見せたものもあります。
「鋲カガリ胴(びょうかがりどう)」「鋲固胴(びょうかためどう)」「釘綴胴(くぎとじどう)」ともいい、「鋲纈」「鋲閉」とも書きます。
この他に菱綴胴胸目綴胴があります。
平文(ひょうもん) 金・銀などの薄い板を文様に切って漆(うるし)にはり、さらに漆(うるし)で塗り固めてからその部分を研ぎ出して文様を表す装飾の技法を言います。
奈良時代に唐(とう=中国)から伝わり、平安時代に特に盛(さか)んだったようです。
「ひらもん」とも読み、「評文」とも書きます。
これと似た技法に金貝があります。
平織(ひらおり) 織物の三原組織の一つで、縦糸(たていと)と緯糸(よこいと)を一本ずつ交互に交(ま)じえる織り方のことや、その方法で織った織物のことを言います。
表面が平滑(へいかつ)で耐久力があります。
平札(ひらざね) 鎌倉時代末期頃から行われた盛上札と区別するため、それ以前の表面が平らなのことを指して言います。
「平小札(ひらこざね)」とも言います。
平目地(ひらめじ) 蒔絵地蒔きの一つで、漆(うるし)を塗った上に平目粉を蒔(ま)き、上に透漆を塗って研ぎ出したもののことです。
平目粉(ひらめふん) 平目地に使う金・銀・錫(すず)などの粉(こな)のことです。
それぞれの金属を鑢(やすり)で細かくした粉(こな)をたいらに薄く延ばし、ふるいにかけて大きさ別に分けたものを言います。
蛭巻(ひるまき) 補強や装飾のために刀(かたな)の、槍(やり)や薙刀の柄(え)などに細長い金属の板を間をあけて巻き付けることを言います。
蛭(ひる)が巻き付いた様子に似ていることからこう呼ばれます。
「金蛭巻(かねひるまき)」「蛭金物(ひるかなもの)」「蛭金(ひるがね)」とも言います。
天鵞絨(びろーど) 13世紀のイタリアが発祥地と言われ、日本へは16世紀にポルトガル人によってもたらされたようです。
素材は綿・絹(きぬ)・毛などで、細かな毛を立て、滑(なめ)らかでつやのある織り方をした織物のことです。
「ベルベット」とも言います。
広袖(ひろそで) の形式の一つで、下に行くほど幅が広くなる形式を言います。
南北朝時代から室町時代前期に発生し、主に胴丸に添えて使われました。
室町時代後期頃になると腹巻にも用いられるようになったと考えられています。
これと逆の形式を壷袖と言います。
風車紋(ふうしゃもん) 「かざぐるま」とも言い、羽根(はね)に風を受けて回転することから「物事がよく回る」・「まめに動く」縁起の良い物として図案化されたようです。
羽根(はね)の数やその配置などによっていくつかの種類があります。
笛籐弓(ふえとうのゆみ) 黒漆を塗った弓の上に、赤く染めたを巻いたものの事を言います。
瓢籠手(ふくべごて) 瓢(ふくべ=ひょうたん)型の座盤を使った籠手のことで、瓢(ふくべ=ひょうたん)には「皺瓢(しわふくべ)」「平瓢(ひらふくべ)」があります。
「皺瓢(しわふくべ)」は文字通り表面に皺(しわ)があり、当初は瓦(かわら)状の細い板を重ね上下四ヵ所を鋲(びょう)止めした手の込んだものでしたが、後には一枚の板に皺(しわ)を打出したものに変わりました。
「平瓢(ひらふくべ)」は表面が平らで、江戸時代後期には稀(まれ)に皺(ふくべ=ひょうたん)の部分を蝶番(ちょうつがい)で開閉できる蓋(ふた)にし、中に薬や小物を入れられるようにした物もあります。
二の腕にある瓢(ふくべ=ひょうたん)を「一の瓢」「肩の瓢」と言い、小手にある瓢(ふくべ=ひょうたん)を「二の瓢」「手先の瓢」と言うようです。
別名を小田籠手と言います。
覆輪(ふくりん) 多くは刀のなどで行われた、器具の「へり」を縁取(ふちど)り装飾することを言います。
二十夜月(ふけまちづき) 月が満月(まんげつ=15日目)から三十日月(みそかづき=30日目の真っ暗な月)に欠(か)けていく途中の二十日頃の月のことで、「夜が更(ふ)けるまで待(ま)たないと昇(のぼ)ってこない月(つき)」と言う意味でこのように呼ばれ、「更待月」とも書きます。
「二十日月(はつかづき)」、または亥の刻(いのこく)の中間(=今の午後10時頃)に昇(のぼ)ってくるので「亥中月(いなかのつき)」とも言います。
房三懸(ふささんがい) 紐(ひも)などを暖簾(のれん)のように垂(た)らした飾りが付いた三懸のことを言います。
五倍子(ふし) ウルシ科の植物である白膠木(ぬるで)の若芽や若葉などに寄生したアブラムシの一種(ヌルデノミミフシ)が作る虫瘤(むしこぶ)を乾燥したもので、染物(そめもの)やインクの製造に用いるほか、昔は御歯黒に用いられました。
「付子」「附子」とも書き、「ごばいし」とも言います。
富士山形兜(ふじさんなりかぶと) 富士山の形を模した変わり兜のことです。
日本一の霊峰(れいほう=神が宿る山)の力にあやかる、不二(ふじ=二つとない、並ぶ者のない)、不死(ふし=死なない)などの願いを込めたと言われます。
伏縄目威(ふしなわめおどし) 韋威の一つで、白・浅葱・ 紺で斜めの段(だん)や波形(なみがた)に染めた縄目韋を細く切って威したものとされます。
「節縄目威」とも書きます。
熏韋(ふすべがわ) 藁(わら)や松葉(まつば)で燻(いぶ)して茶色くしたのことで、燻(いぶす)すことによって水に強くなるそうです。
特に鹿(しか)革について言うことが多いようです。
色の淡(あわ)い物を「柑子韋(こうじかわ)」と言います。
また、模様によって鶉巻と呼ばれる物もあります。
熏韋威(ふすべがわおどし) 韋威の一つで、 熏韋を使って威したものを言います
伏縫(ふせぬい) 絵韋小縁韋を突合せて、紐(ひも)状に縫付ける装飾を言います。
古くは二〜三色の色糸が使われましたが、時代が下がると五色のものなども現れました。
一本の糸を二〜三色に染めたものを一筋として縫うものを「一本掛縫(いっぽんかけぬい)」、色ごとに針を変えるものを「日本掛縫(にほんかけぬい)」「三本掛縫(さんぼんかけぬい)」などと言います。
通常、「伏組(ふせぐみ)」と呼ばれるのが一般的なようですが、「臥組(ふせぐみ)」「伏革縫(ふせかわぬい)」「薫唐組絲(ふせからくみいと)」とも言います。
伏眉庇(ふせまびさし) 付眉庇の中で、中央部分にふくらみを持たせながらも兜鉢からほぼ垂直に下がるように取り付けられた眉庇のことを言います。
二所籐弓(ふたところとうのゆみ) 所籐弓の一つで、二つ並んだの巻き付け個所が、弓全体に所々(ところどころ)とあるものを言います。
縁(ふち) 側の端(はし)に付けたリング状の部品のことで、中央にはを通す「△」状の穴が開いています。
金属や水牛(すいぎゅう)の角(つの)等で作られました。
「縁金(ふちがね)」とも言います。
とセットにして縁頭と呼ぶようです。
縁頭(ふちがしら) 実際にはのことですが、二つをセットにしてこう呼ぶことが多いようです。
斑毛(ぶちげ) 馬の毛色の一つで、地の色が白く、そこに濃い色の斑点(はんてん)がある毛色のことを言います。
白い部分の面積が広い場合は「斑〜毛(ぶち〜げ)」、逆に白い部分が狭い場合は「〜斑毛(〜ぶちげ)」と呼ぶようです。
「駁毛」とも書きます。
復古調(ふっこちょう) 江戸時代中期以降の平和な時代に、大鎧の様式を再現して作られた(=復古:ふっこ)甲冑のことをいいます。
この時代、甲冑は専(もっぱ)ら飾ることを目的としている場合が多く、実用面よりも古式甲冑の華美(かび)な装飾と外観的な見栄(みば)えの良さが好(この)まれました。
大鎧に似てはいますが完全な模造(もぞう)ではなく、胴丸腹巻の形式にしたものや、細部に当世具足の様式を用いた物などが見られます。
「復古調の甲冑(ふっこちょうのかっちゅう)」「復古鎧(ふっこよろい)」とも呼ばれます。
不動明王(ふどうみょうおう) サンスクリット語(=古代インドで使われた言葉)で「アチャラ・ナータ」といいます。
悪魔を降伏(こうぶく)し、すべての障害を打ち砕(くだ)き、おとなしく従わないものは無理矢理にでも導き救済(きゅうさい)するという仏様です。
一面二臂(=顔が一つに腕が二本)で三鈷剣と羂索(けんじゃく=縄)を持つ姿が一般的で、三鈷剣で悪魔を退散(たいさん)させると同時に人々の煩悩(ぼんのう=欲望)を断(た)ち切り、羂索(けんじゃく=縄)で悪魔を縛(しば)り上げ、また煩悩(ぼんのう=欲望)から抜け出せない人々を縛(しば)ってでも救(すく)い上げるとされます。
船手具足(ふなてぐそく) ネリ革製で比較的大き目の魚鱗札に、きざんだ麻糸(あさいと)を混ぜた漆(うるし)を荒く塗り気泡(きほう)を作らせた物を家地にとじた具足です。
水に入るとこの鱗(うろこ)が逆立って水の抵抗(ていこう)を増し、浮き袋の役目をすると言われています。
これと似た物に鱗具足があります。
ブラフマー神(ぶらふまーしん) ヒンドゥー教の神様で、世界を創造支配する最高神です。
後にヴィシュヌ神シヴァ神とともに三大神(さんだいしん)の一人とされました。
しかしながらヴィシュヌ神シヴァ神がそれぞれ単独でも信仰されているのに対し、この神様だけを信仰する宗派(しゅうは)はないそうです。
この神が宇宙を創造し、ヴィシュヌ神が維持し、シヴァ神が破壊するともされています。
仏教に取り込まれて「梵天(ぼんてん)」と呼ばれています。
振分塗(ふりわけぬり) 振分(ふりわけ)には「全体を二つに分ける」と言う意味があることから、二つの異なる色で塗る、または二つの異なる塗り方で塗ることを指すようです。
踏込佩楯(ふんごみはいだて) 佩楯で、左右の大腿部(だいたいぶ)正面を護(まも)る部分の裏側下方に阿伊佐を設けた形式のものを言います。
これにより佩楯がめくれたり、動いたときに大腿部(だいたいぶ)と干渉(かんしょう)するのを防ぐことができます。
足を踏込むようにして着用する事からこの名称が付いたようです。
「踏込(ふんごみ)」「踏込形(ふんごみがた)」とも呼ばれ、千切り踏込鎖踏込などの形式もあります。
粉本(ふんぽん) @:日本画などの下絵(したえ)のことです。
古くは胡粉を用いて下絵(したえ)を描(えが)き、それから墨(すみ)を施していたのでこう呼ばれます。
A:将来の研究や制作の手本とするために模写(もしゃ=コピー)した絵のことをいいます。
B:絵や文章の手本のことを言います。
圧出(へしだし) 予(あらかじ)め模様をつけた型の上に、薄い金属の板(いた)を置き、上から叩くことで板に型(かた)の模様を打出す技法のことを言います。
金の板(いた)を使ったり表面に金を塗ったものは「金圧出(きんへしだし)」と呼ばれます。
圧出鮫(へしだしざめ) 圧出によって鮫皮を模した金属の薄い板(いた)のことです。
鮫皮圧出(さめがわへしだし)」「打ち鮫(うちざめ)」打出し鮫(うちだしざめ)」とも言います。
また、小さな粒々(つぶつぶ)が打出された様子を霰(あられ)に例(たと)えて、圧出霰(へしだしあられ)」「霰鮫(あられざめ)」とも言い、金の板(いた)を使ったり表面に金を塗ったものは「金圧出霰(きんへしだしあられ)」「金霰鮫(きんあられざめ)」などとも呼ばれるようです。
弁柄(べんがら) 漆(うるし)に弁柄(べんがら=赤色酸化鉄:せきしょくさんかてつ)を混ぜた赤色漆(あかいろうるし)のことを言います。
赤色漆(あかいろうるし)には「朱漆」と呼ばれる物もありますが、弁柄(べんがら)は朱に較(くら)べて色が鈍(にぶ)く茶味(ちゃみ)を帯びているため、通常は区別して呼ばれます。
別名を「赤塗(あかぬり)」とも言います。
鳳凰(ほうおう) 孔雀(くじゃく)に似た伝説上のめでたい鳥で、中国では偉大な皇帝が現れるときの瑞鳥とされていました。
霊泉(れいせん)の水だけを飲み、60〜120年に一度だけ実を付けると言う竹の実を食べ、梧桐(あおぎり)の木にしか止まらないと言われます。
麒麟と同じように「鳳」が雄(オス)、「凰」が雌(メス)のことを指すのだとする説もあるようです。
宝珠(ほうじゅ) 正しくは「如意宝珠(にょいほうじゅ)」と呼ばれ、これを持つと何でも願いが叶うと言う宝の玉のことです。
球体の一部分がとがった、「雫(しずく)」の様な形をしています。
北条五色備(ほうじょうごしきぞなえ) 北条氏康(ほうじょううじやす)の頃に北条家で編成されていたとされる、黄備え(きぞなえ)、赤備え、青備え(あおぞなえ)、白備え(しろぞなえ)、黒備え(くろぞなえ)の五つの備え(そなえ=部隊)のことです。
特に黄備え(きぞなえ)を率いたとされる北条綱成(ほうじょうつななり/つなしげ)の旗指物は、朽葉色に染めた布に「八幡(はちまん)」と書かれた「地黄八幡(じきはちまん)」として有名ですが、その他の備え(そなえ=部隊)については資料が殆んど無く、実際どのようなものであったか詳細は分かっていません。
恐らく旗指物を色ごとに編成した備え(そなえ=部隊)だったのではないかと思われます。
宝幢(ほうどう) 「法幢」とも書きます。
@:大小の輪を数個、小さい輪から順につなげて下に行くほど輪を大きくした荘厳具(しょうごんぐ=飾り)のことです。
お堂などに飾ります。
A:仏教で用いられる幢幡(どうばん=旗)のことです。
通常、旗の下部に数本に分かれた布が垂(た)れ、竿(さお)の先などにつけてお堂に飾ります。
宝幢佩楯(ほうどうはいだて) @:室町時代に行われた形式の佩楯を言います。
膝(ひざ)までの小袴(こばかま=半ズボン)状の家地に、大腿部(だいたいぶ)を包(つつ)むように湾曲(わんきょく)した札板を3段ほど素懸威とし、先端の膝(ひざ)にかかる部分には分割した草摺状の札板威し付けています。
通常、大腿部(だいたいぶ)の札板は表裏逆にされ、足の動きに合わせて曲がりやすいように小札の重ねは通常と逆にし、足の形に合わせて下に行くほど細くしてあります。
A:江戸時代に行われた佩楯の形式で、札板は@のような筒(つつ)状ではなく、ごく一般的な佩楯の形式と同じ平面状ですが、下部が分割された形式のものを言います。
いずれの場合も宝幢に似ていることからこう呼ばれます。
星兜(ほしかぶと) 兜鉢天辺から腰巻板までを分割する縦板同士を留めるのに、星鋲を用いた兜を言い、星鋲が大きい物を「厳星(いかぼし)兜」、小さい物を「小星(こぼし)兜」と言う場合もあります。
星鋲(ほしびょう) 兜鉢を分割する縦板同士をつなぎ留めるのに用いた円錐(えんすい)状の鋲(びょう)のことです。
発手(ほって) の最下端のことです。
「放手」「法手」「堀手」「保天」「発天」とも表記し、「胴尻(どうじり)」「胴先(どうさき)」「草摺附の板(くさずりづけのいた)」「矢腰(やごし)」「箙腰(えびらごし)」「鞍突(くらつき)」とも言います。
解胴(ほどきどう) 雪の下胴の別名で、蝶番(ちょうつがい)に通された栓(せん)を抜くとを分解することができるので付いた名称とされています。
特に伊達家(だてけ)でこの名称が使われたようです。
仏五枚胴(ほとけごまいどう) 五枚胴の形式をした仏胴のことを言います。
「五枚仏胴(ごまいほとけどう)」とも言うようです。
仏胴(ほとけどう) 表面に継ぎ目の無いのことを言い、すっぺりした状態を仏像の胸に例えたのが名前の由来と言われます。
南蛮胴の影響を受けた形式と言われ、二枚胴五枚胴の形式があります。
本来は一枚板で形成された物を言いますが、一枚板は製作が難しいため、実際はほとんどが桶側仏胴包仏胴だそうです。
見た目が単調ななので、仁王胴鳩胸胴段替胴にしたり、文字などを打出しして変化をつけることもあったようです。
五枚胴の物は特に仏五枚胴とも言います。
母衣(ほろ) 鎧の背につけて後ろからの流れ矢を防ぎ、また存在を示す標(しる)しとして使われた幅の広い布のことを言います。
平安時代末期頃は長い布状(ぬのじょう)で「懸母衣(かけぼろ)」と呼ばれ、そのまま背に垂(た)らすか下の端(はし)を腰(こし)に結んで用いました。
この状態で馬を走らせると布が風でなびいたり膨(ふく)らんだりして背面からの流れ矢を防ぐ役目をしたようです。
室町時代頃からは風が無くても常に布が膨(ふく)らんだ状態になるように中に母衣籠を入れ、母衣串によって受筒に差し込むようになったため、指物として用いられるようになりました。
布の色によって「赤母衣(あかほろ)」「黒母衣(くろほろ)」「黄母衣(きほろ)」などと呼ばれます。
これらは特に主君から許可を得た者や使番だけが使用を許される名誉の指物とされ、もし討ち取った相手がつけていた場合は分捕(ぶんど)って証拠(しょうこ)としたり、打ち取った首はそれで包む、と言った慣(なら)わしもあったようです。
「幌」「保侶」「母羅」とも書きます。
母衣籠(ほろかご) 風が無くても常に母衣が膨(ふく)らんだ状態に出来るよう中に入れた籠(かご)状のものを言います。
素材は竹のほか鯨(くじら)の髭(ひげ)や藤(とう)、金属などが使われたようです。
母衣串によって受筒に差し込んで使われます。
「母衣骨(ほろぼね)」とも言うようです。
母衣串(ほろぐし) 母衣籠の端(はし)に取り付けられた、母衣受筒に差し込むための棒(ぼう)のことです。
梵字(ぼんじ) 一般的にはサンスクリット語(=古代インドで使われた言葉)を表すための書体とされています。
日本では「悉曇(しったん)」とも呼ばれ、一文字で色々な神仏を表す場合もあります。
本地仏(ほんじぶつ) 「本地(ほんじ)」は本当の姿という意味で、本来の姿の仏(ほとけ)という意味です。
ま行 解説
前懸具足(まえかけぐそく) 腹当のようにの正面と左右の脇のみを守る具足で、室町時代末期頃からの御貸具足に見られます。
また、上級武士の軽武装用に作られた高級品もあるようです。
前胴(まえどう) 古くは鎧やの前部のことを指しましたが、二枚胴が現れてからは前側ののことを指すようになりました。
前草摺(まえのくさずり) 前方にある草摺のことを言います。
なお、反対側は引敷草摺と言います。
前引合具足(まえひきあわせぐそく) 江戸時代に見られる、引合せの正面に設置した具足のことです。
正面が開くので脱着には便利な反面、防御の面で不安が有るためかあまり流行しなかったようです。
前袋(まえぶくろ) 当世具足鼻紙袋の一種で、正面の草摺の裏側に仕付けられた蓋(ふた)付の袋のことです。
前輪(まえわ) 鞍橋の前部で、山形に高くなっている板状の部分を言います。
居木によって後輪とつながれています。
蒔絵(まきえ) 置目に沿(そ)って漆(うるし)で絵や文様を描き、その漆(うるし)が乾かないうちに上から金や銀の粉を蒔(ま)いて付着させる技法を言います。
金の粉を蒔(ま)いたものを「金蒔絵(きんまきえ)」、銀の粉を蒔(ま)いたものを「銀蒔絵(ぎんまきえ)」と言いい、単純に漆(うるし)の上に金銀粉を蒔(ま)いただけの「蒔放し(まきはなし)」、蒔(ま)いた粉の上にだけ漆(うるし)をかけて粉を固めその表面を磨(みが)く「平蒔絵(ひらまきえ)」、蒔(ま)いた粉を含む全体に漆(うるし)をかけて研ぎ出しする「研出蒔絵(とぎだしまきえ)」、文様の部分を炭(すみ)の粉(こな)で高く盛り上げて段差(だんさ)を付ける「高蒔絵(たかまきえ)」梨子地、金銀の薄い板をいろいろな形に切って嵌(は)め込む「切金(きりかね)」など、沢山の技法があります。
また、京都東山(きょうとひがしやま)にある高台寺(こうだいじ)の調度品に施された様式は特に高台寺蒔絵と呼びます。
抹額(まっこう) 昔、冠(かんむり)がずれ落ちるのを防ぐため下級(かきゅう)の武官(ぶかん)が用いた緋色の絹(きぬ)の鉢巻(はちまき)のことです。
「まっかく」の読みが訛(なま)って「まっこう」になったようです。
「末額」とも書き、「まこう」「もこう」とも言います。
抹頭形兜(まっとうなりかぶと) 変わり兜の一種で、布(ぬの)を頭に巻き付けた形を表現(ひょうげん)した兜のことです。
抹頭(まっとう)の語源は不明ですが、個人的には抹額形兜(まっこうなりかぶと)」と呼んだ方が分かりやすいのではないかと思います。
「包頭兜(つつみがしらのかぶと)」とも言います。
眉庇(まびさし) 兜の腰巻板前面部分に取り付けられた金具廻りで、文字通り庇(ひさし)のことです。
額(ひたい)の防御や、日光や雨をから顔を守ります。
形状によって付眉庇卸眉庇内眉庇などに分けられます。
真向兎(まむきうさぎ) 真正面(ましょうめん)から見た兎(うさぎ)のことで、立物旗指物の文様、家紋(かもん)の意匠(いしょう=デザイン)として用いられました。
「まむかいうさぎ」「まっこううさぎ」とも言います。
眉刳(まゆぐり) 眉庇の下側の縁を実際の眉毛に沿ったような曲線で切り欠くことを言います。
摩利支天(まりしてん) サンスクリット語(=古代インドで使われた言葉)で「マーリーチ」と言い、陽炎(かげろう)を神格化した仏様です。
信仰する者は陽炎(かげろう)のごとく姿が見えず、縛(しば)られず、捉(とら)えられず、能(よ)く敵を破るとされたために、武士や忍者の守護神としてもてはやされました。
その姿は天女(てんにょ)であったり、猪(いのしし)の背に乗った二臂(にび=腕が二本)、あるいは三面六臂(さんめんろっぴ=顔が三つに腕が六本)の男神像であったりします。
丸座(まるざ) @:天辺の座の一番下に配置される円形の金具で、星兜葵座が、南北朝頃の筋兜から丸い形になったのでこう呼ばれます。
透かし彫りや彫刻を施したものもあります。
A:江戸時代の天辺の座に使われる金具の一つで、単純な丸い円盤状をしたもののことです。
「円座」とも書きます。
丸胴(まるどう) の左側に蝶番(ちょうつがい)を設けず、胴丸のようにした形式のもので、高級品に多いようです。
「丸胴具足(まるどうぐそく)」、あるいはかつての胴丸に等(ひと)しいと言う意味で、「昔具足(むかしぐそく)」とも言います。
卍(まんじ) サンスクリット語(=古代インドで使われた言葉)で「スバスティカ」といいます。
もともとはヴィシュヌ神の胸の旋毛(せんもう=つむじ)を幸運の前兆としたもので、これが仏教に取り入れられてからも吉祥(きっしょう=めでたい)の印(しるし)として仏(ほとけ)の体に記(しる)されたり、仏自身(ほとけじしん)を表すものとして使われました。
「万字」とも書きます。
饅頭ジコロ(まんじゅうじころ) 少し膨(ふく)らみのある一の板をほぼ水平に張り出し、二の板以下にも膨(ふく)らみを付け、全体に丸いカーブを描くように作られた当世ジコロのことを言います。
中世の笠ジコロの影響を受けていると思われ、「満仲ジコロ」とも言います。
満智羅(まんちら) @:肩の周囲を護るため、西洋甲冑の肩甲(かたよろい=パウルドロン、ゴージュなど)を取り入れた小具足の一つで、鉄製の大型なものは西洋甲冑の肩甲(かたよろい)をそのまま流用したものと、それを真似て日本で作ったものがあり、これらはの上に着用するのが原則なので「上満智羅(うわまんちら)」と呼ばれます。
A:布製のものは家地の中に亀甲金や鎖(くさり)を縫い込んだり、家地の表に鎖(くさり)を仕付(しつ)けたりしたもので、の上から羽織(はお)る場合と、の下に着込(きこ)む場合があったようです。
上から羽織(はお)るものは背中(せなか)に切れ目(きれめ)を設け、合当理を付けたままでも着られるようになっています。
下に着込(きこ)むものは「下満智羅(したまんちら)」と呼ばれ、一般的には襟廻肩当脇曳などを合わせたチョッキのような形をしています。
「満散」「満知羅」「満乳羅」「摩牟知羅」「饅頭輪」とも書きます。
見上(みあげ) 出眉庇の内側のことを言います。
「眉上」「観上」とも書きます。
見上皺(みあげしわ) 眉庇を額(ひたい)に見立て、そこに打出した皺(しわ)のことです。
室町時代末期頃から行われたようです。
このほかに打眉と呼ばれる物もあります。
三日月板(みかづきいた) 押付板の上と左右の肩上の間にできる隙間を塞(ふさ)ぎ守るための板です。
三日月(みかづき)のように見えるのでこう呼ばれます。
「襟板(えりいた)」三日月形とも言います。
三日月形(みかづきがた) @:前方に突き出た眉庇で、形が三日月に似ているもののことです。
A:三日月板のことです。
水浅葱(みずあさぎ) 薄い浅葱色のことで、水色(みずいろ)のことです。
水緒革(みずおがわ) から垂(た)らしてをつる革帯(かわおび)のことです。
力韋「逆靼(げきそ)」とも言います。
三筋懸(みすじがけ) 当世具足に見られる威しの手法の一つで、素懸威が二本の糸を並べているのに対し、文字通り三本の糸を並べ、間をあけて所々を下段へ縦取威のように垂直(すいちょく)に威して行く手法を言います。
水呑緒(みずのみのお) の後方中段に設けられた水呑鐶総角を結ぶ紐(ひも)のことで、体を前方に傾(かたむ)けた時にが前へ垂れ下がってくるのを防ぎます。
水を飲む時に体を前に傾けることからこの名がついたとされます。
総角中央の結び目付近、あるいは総角の台座の輪(わ)に四方手結びにします。
「扣の緒(ひかえのお)」とも言います。
古くは水呑鐶に結び留めていましたが、室町時代末期頃から紐の先端を輪(わ)にし、現代のストラップのようにその輪(わ)に緒を通して水呑鐶に留めるようになったようです。
この輪(わ)の部分を「蛇口(へびくち)」「壺付(つぼつき)」と言います。
水呑鐶(みずのみのかん) の3段目か4段目の後方に設けられた、水呑緒を結ぶための輪(わ)のことを言います。
古くはの裏側に付けられていましたが、鎌倉時代後期以降はの表側に笄金物を伴って付けられることが一般的となったようです。
「扣の鐶(ひかえのかん)」とも言います。
水走穴(みずはしりのあな) 江戸時代の甲冑で、草摺裾板菱縫板の両端に開けた猪目の穴のことです。
三立羽(みたてば) 矢羽の付け方で、羽を上・左斜め下・右斜め下の三箇所に付ける形式を言います。
三箇所に付けた羽の裾(すそ)が僅(わず)かによじれているため、矢が回転しながら飛び、対象物により深く突き刺さります。
征矢に多く用いられました。
この他、四立羽と呼ばれる形式もあります。
乱星文様(みだれぼしもんよう) 大小様々な丸を散りばめた、いわゆる水玉模様(みずたまもよう)のような意匠(いしょう=デザイン)のことを言います。
丸の色は赤(朱)・金(黄)・銀(白)・青・緑などがあり、単色または異なる色を組み合わせて使います。
佩楯陣羽織旗指物・革足袋(かわたび=かわのくつした)などに意匠(いしょう=デザイン)として用いられています。「らんせいもんよう」とも読みます。
三鍬形(みつくわがた) 鍬形台の中央に祓立を一つ追加し、そこに剣形(けんがた)の立物を差し込んで、全体が「山」の字型に見える立物のことをこう言います。
特に室町時代に好(この)んで行われたようです。
三目札(みつめざね) 幅(はば)の広いやや大きめので、下縅威しのための穴が縦に三列開けられているものを言います。
それぞれのを2/3ずつ重ね合わせるため、厚くて丈夫になりますが、その分、使われるの数も多くなり、手間がかかります。
三輪菊(みつわぎく) 据文金物の一つで、三つの菊の花を枝葉が抱える様子を図案化した円形の彫金物(ほりかなもの)のことです。
「三盛枝菊(みつもりえだぎく/さんせいえだぎく)」とも言います。
三所籐弓(みところとうのゆみ) 所籐弓の一つで、三つ並んだの巻き付け個所が、弓全体に所々(ところどころ)とあるものを言います。
美濃紙(みのがみ) 美濃(みの=岐阜県)で作られる和紙(わし)のことです。
耳糸(みみいと) 「耳絲」とも書き、各札板の両端(りょうはじ)を縦(たて)に威している威糸のことです。
古くは普通の威糸よりも厚い「二重打(ふたえうち)」を用いましたが、後世では単なる「平打(ひらうち)」となりました。
また畦目綴と同じ柄(がら)にするのが原則のようです。
「両傍(りょうぼう)」「祝いの絲(いわいのいと)」「匂いの絲(においのいと)」とも言います。
威した場合でも「耳糸」と呼びます。
冥加(みょうが) 自分では気がつかないうちに授(さず)かっている、神仏の加護(かご)や恩恵(おんけい)のことです。
茗荷紋(みょうがもん) 茗荷(みょうが)の花を図案化した家紋(かもん)です。
杏葉から変化したものとも言われており、形がとてもよく似ています。
意匠(いしょう=デザイン)によっていくつかの種類があります。
「みょうが」の発音が「冥加」と同じことから、縁起の良い紋(もん)として用いられました。
向板(むかいいた) 兜鉢の前正中の板のことです。
蜈蚣(むかで) 唇脚類(しんきゃくるい)と言われる、脚をたくさん持った節足動物(せっそくどうぶつ)の総称です。
体長は小さい物で数o、大きい物は約30cmもあります。
平らで細長い体はいくつかの節(ふし)に分かれており、各節に一対の足が付いています。
「百足」とも書きますが、節の数はどの種でも必ず奇数だそうで、きっかり100本の脚を持つ蜈蚣と言うのはいないそうです。
708年に秩父(ちちぶ)で銅が発見された際には朝廷が神社を建てて銅製の蜈蚣を奉納したり、複雑に広がる鉱山の採掘穴(さいくつあな)を「百足穴(むかであな)」と呼んだり、鉱脈(こうみゃく)の様子を蜈蚣に例えたりするなど、鉱山(こうざん)を司(つかさど)る神様の眷属(けんぞく=お使い)とされています。
また毘沙門天の眷属(けんぞく=お使い)であるともされ、攻撃性が強く相手と接触した瞬間に毒のある牙(きば)で咬みつく、絶対に後ろに下がらない、子供を多く生むので子孫繁栄、などの理由から武将にも好まれ、立物指物などの意匠(いしょう=デザイン)として用いられました。
足が多く動きも素早いことから、特に武田家では使番や、採掘の技術を生かして穴掘りなどを行う工兵部隊(こうへいぶたい)を「蜈蚣衆(むかでしゅう)」、「金掘衆(かなほりしゅう)」、「金山衆(かなやましゅう)」などと呼び、蜈蚣の指物を使用していたと言われます。
麦漆(むぎうるし) 生漆姫糊・小麦粉(こむぎこ)を混ぜ合わせたもので、接着剤(せっちゃくざい)や凹(へこ)んだ部分を盛り上げるための充填剤(じゅうてんざい=パテ)として使われました。
割れたお椀(わん)などの修復に用いられます。
骸持(むくろもち) 「腰枕(こしまくら)」「枕(まくら)」「鼠尾(ねずお)」「鼠(ねずみ)」「根津敷(ねずし)」とも言い、3cm角くらいの小さな座布団(ざぶとん)状の物を言います。
座布団(ざぶとん)の中央から紐(ひも)が出ており、待受の金具がある場合は金具の下部に開いた穴にその紐(ひも)を結び留め、待受の金具との間のクッションとしたようです。
また、待受の金具が付いていない座布団と紐のみの形式は「土竜付(もぐらつけ)」と言い、座布団の上に受筒を紐で直接結び留めていたようです。
鞭差穴(むちさしのあな) 佩楯家地正面部分左右に一箇所づつ開けられた、縦切り込みのことです。
乗馬用の鞭(むち)を使わない時に差すための穴と言われています。
胸板(むないた) 前立挙上部に接続する金具廻りのことです。
覆輪した鉄板などで作られ、左右の端(はし)に肩上と連結する為の高紐が付きます。
当世具足では鬼会と呼ばれます。
胸懸(むながい) 三懸の一つで、鞍橋を固定するために馬の胸から前輪四方手にかけて取り回す紐(ひも)のことです。
古式の三懸では一方の端(はじ)が房(ふさ)でもう一方が輪になった1本の紐(ひも)も用いるで、の右側だけに房(ふさ)付きの紐(ひも)が垂(た)れます。
近世の四懸では両端(りょうはじ)が輪になった紐(ひも)と両端(りょうはじ)が房(ふさ)になった2本の紐(ひも)を用いるので、の両側に房(ふさ)付きの紐(ひも)が垂(た)れます。
胸目綴胴(むなめとじどう) 「畦目綴胴(うなめとじどう)」ともいい、桶側胴で板を矧(は)ぎ留めするときに畦目綴としたものを言います。
越中流具足で良く見られ、で綴じた場合には漆(うるし)をかけて塗り固めました。
この他に鋲綴胴菱綴胴があります。
胸当(むねあて) 火縄銃の訓練などをする際に、着物の合わせ目から火の粉が入らないように着用した前掛(まえか)けです。
通常、正面に家紋(かもん)が付けられていますが、これは着ている人物が誰であるか遠くから見ても分かるようにするための工夫だと言われています。
このほか火事装束としても用いられたようです。
無撚糸(むねんし) 撚(よ)らずに作られた糸のことです。
村濃威(むらごおどし) 色目の一つで、「群濃威」「斑濃威」「叢濃威」とも書き、基本的には同系色の濃い色の部分と淡(あわ)い色の部分をところどころに配置して威す形式を言います。
銘の板(めいのいた) @:向板の裏のことで、ここに作者の銘(めい=サイン)を鐫(き)ったりするのでこう呼ばれます。
A:三社の板のことです。
目釘(めくぎ) を固定するための釘状(くぎじょう)の部品のことを言います。
水牛(すいぎゅう)の角(つの)・竹・金属などで作られ、古くは目貫の一部であったものが、後には目貫と別の部品になったようです。
廻鉢(めぐりばち) 「まわりばち」とも言います。
兜鉢内側と外側の二重構造とし、外側の兜鉢天辺を中心に360°回転する仕掛けとなった物を言います。
矢弾槍刃(やだまそうじん)が当たった場合、兜鉢が回転することで衝撃を和(やわ)らげる効果があるとされています。
召替用具足(めしかえようぐそく) 文字通り着替え用の具足で、一説には予備の具足だとも言われます。
「召替具足(めしかえぐそく)」「替具足(かえぐそく)」とも言います。
馬手(めて) @:右側のことを言います。
手綱を握(にぎ)るのが右手であることから付いた名称です。
また、矢を引くところから「引手(ひきで)」とも言われます。
反対側は射向と言います。
A:馬手差しのことです。
馬手草摺(めてのくさずり) 馬手側の草摺のことを言います。
大鎧では右側の脇楯に取り付けられた一枚、腹当などで草摺が三枚の場合には右端の一枚、その他の場合では引合せの前後二間の草摺を言います。
当世具足では「馬手先(めてさき)」とも言います。
なお、反対側は射向草摺と言います。
馬手袖(めてのそで) 馬手側ののことを言います。
平安時代後期から鎌倉時代前期にかけて、こちらのの裏だけに矢摺韋を貼った形式の物も見られます。
なお、反対側の射向袖と言います。
目貫(めぬき) 古くは目釘のことを指しましたが、後に目釘の頭(かしら)や座(ざ)が装飾化されるとその部分を指すようになり、さらに目釘を覆う飾り金物(かなもの)として別の部品になりました。
打刀では表目貫裏目貫の区別があるようです。
の中央にあって凝(こ)った装飾が目立つことから、「目貫通り(めぬきどおり)=町の中心となる大通り」の語源になったとの説もあるようです。
目下頬(めのしたぼお) 面頬の一つで、半頬に鼻を守る部分を付け足し、目から下の顔半分を防御する物を言います。
鼻の部分を脱着式にして、半頬としても使えるようにした物もあります。
面頬(めんぽお) 面具である半頬目下頬総面の総称です。
「面肪」とも書き、「めんぼお」とも言います。
蒙古鉢(もうこばち) 兜鉢の形状が、蒙古(もうこ=モンゴル)や中央アジア辺りで使われていた兜に似ている物を言います。
帽子(もうす) 「帽子」と書いて「もうす」と読みます。
文字通り、仏教の僧侶(そうりょ)がかぶる帽子(ぼうし)や頭巾(ずきん)のことを言います。
宗派(しゅうは)によっていろいろな形があるようです。
帽子形兜(もうすなりかぶと) 鉄・ネリ革張懸などで帽子を模した兜のことを言います。
似たものに僧頭巾形兜があります。
萌黄色(もえぎいろ) 緑色のことです。
「萌木」「萌葱」とも書き、一般的には「萌黄」と書くことが多いですが、「黄」の字を用いた場合は春になって萌え出た若葉のように冴(さ)えた黄緑色、「木」の字を用いた場合は新緑の草木のように青みが増した黄緑色、「葱」の字を用いた場合は「葱(ねぎ)」のような濃い緑色を指すとされているようです。
萌葱匂(もえぎにおい) 匂威萌黄色を用いた物のことを言います。
「もえぎのにおい」とも言い、「萌黄匂」とも書きます。
最上胴(もがみどう) @:革製または鉄製の板札を、
A:素懸威または毛引威とした、
B:五枚胴形式の
のことを言います。
さらに、背中で引合せる形式なら「最上腹巻(もがみはらまき)」、右側引合せなら「最上胴丸(もがみどうまる)」と言います。
腰韋附にした物などもあり、一説に出羽(でわ=秋田県・山形県)の最上地方(もがみちほう)で作られたのが名前の由来と言われています。
古くは「金胴(かなどう)」「鉄胴(かなどう)」とも呼ばれていたようです。
藻獅子韋(もじしがわ) 藻(も=水草)・獅子・牡丹(ぼたん)を描(えが)いた図案の絵韋のことで、南北朝時代頃から使われたとされています。
木瓜(もっこう) 紋所(もんどころ)の一つで、4枚の花弁を持った十文字のような形をしています。
卵が入った鳥の巣を図案化したものとも、瓜(うり)を輪切りにした断面の模様を図案化したものとも言われているようです。
木瓜結び(もっこうむすび) 籠手手首の緒手甲の親指の指掛の綰鉢付板に出す兜の緒の綰(わな=輪っか)を、木瓜の形に結ぶことを言います。
本重籐弓(もとしげとうのゆみ) 日本の弓は木と竹をで貼り合わせ、固定の為に上から糸を巻いて漆で固め、更に補強と装飾を兼ねてを巻き付けますが、この巻き付けがユヅカより上を所籐弓形式、下を重籐弓形式とした弓の事を言います。
「本滋籐弓」とも書き、「もとしげどうのゆみ」とも言います。
百重刺(ももえざし) 重ねた布を螺旋(らせん)状に糸で細かく縫って、帽子型の浮張に仕立てる技法のことです。
桃形兜(ももなりかぶと) 文字通り、桃の実に似た形の兜のことです。
西洋甲冑の手法から生じたと言われる日本製の兜で、古い形式では兜の中心で張り合わせた筋が前から後まで状となっていますが、時代が下ると前方だけにを設けるようになりました。
盛上札(もりあげざね) 札頭が鋸(のこぎり)の歯のような三角形をしており、右半分に木屎などを混(ま)ぜた漆(うるし)を盛上げて、あたかも厚みがあるように見せたのことを言います。
下縅威しのための穴が縦に二列開けられています。
は半分ずつ重ねて連結し、見た目が良いのと丈夫になるので鎌倉時代末期以降から流行しました。
「盛上小札(もりあげこざね)」とも言い、切付札でも盛上げが行われるようになってからは「盛上本小札(もりあげほんこざね)」「本小札(ほんこざね)」とも呼ばれます。
諸籠手(もろごて) 文字通り、籠手を両手に着用する事を言います。
鎌倉時代末期以降、戦(いくさ)の方法が徒歩(とほ)による集団接近戦に変わると、防御力をより高める必要が生じ、両手に籠手を着用したのでこう呼ばれます。
「双籠手」「両籠手」とも書きます。
なお、片方の手にだけ着用する場合は片籠手と言います。
雙カガリ(もろかがり) 籠手連糸を現代のスニーカーや編み上げブーツのように左右の家地に外から内に通し、引き合わせの真ん中で「×」字状に交差するようにした形式のことです。
「諸カガリ」「双カガリ」とも書き、「もろがかり」とも言うようです。
諸差縄(もろさしなわ) 馬の左右の差縄を付けることを言います。
身分が四位(よい)以下の者は片差縄とされたようです。
両肌脱胴(もろはだぬぎどう) 着物の上半身を脱いで肌を見せている様子を表したのことです。
仁王胴との違いは、の腰(こし)の所に脱いだ着物の装飾が見られる点です。
似たものに肩脱胴があります。
紋柄威(もんがらおどし) 威糸を使って家紋(かもん)や文様などを描く威しの手法を言います。
文様には「日の丸」・「」・「三日月」・「巴(ともえ)」・「菊」・「文字」など色々あります。
や行 解説
八重鎖(やえぐさり) 重鎖の中で、一つの輪に四つの輪を組んで編まれた鎖(くさり)のことを言います。
西洋からもたらされた技法で、これの非常に細かいものは縮緬南蛮(ちりめんなんばん)」と呼ばれます。
別名を青海波とも言います。
ヤク(やく) チベット原産の牛の仲間で、体は高地に適応して長い体毛で覆われています。
毛が武具などに使われ、毛の色によって白熊黒熊赤熊の呼び名があります。
野蚕(やさん) 繭(まゆ)から絹糸(きぬいと)が取れる野生の昆虫のことで、クワコ、ヤママユ、ウスタビガなどが知られています。
家蚕の絹糸(きぬいと)より丈夫(じょうぶ)で光沢(こうたく)があり、簡単には染められないという特性がありますが、一つの繭(まゆ)から取れる糸の量が家蚕の1/3〜1/2程度と少ないため、希少品とされています。
鏃(やじり) 矢の先端に付け、あたった時に突き刺さる部分を言います。
普通は鉄製ですが、古くは石・骨・銅・木などが用いられることもありました。
いろいろな形と種類がありますが、大きくは「尖り矢(とがりや)」「平根(ひらね)」雁股に分けられます。
「尖り矢(とがりや)」は貫通(かんつう)用、「平根(ひらね)」腸繰と呼ばれる形式に代表される、より殺傷力のある物、雁股は実用よりも儀礼的な意味が強いとされているようです。
「矢尻」「矢の根(やのね)」とも言います。
矢摺(やずり) 弓に矢を番(つが)える部分のことで、ユヅカのすぐ上に当たる部分です。
矢を放つ時に矢が弓と擦れる部分なので矢摺籐が巻かれます。
矢摺重籐弓(やずりしげとうのゆみ) 日本の弓は木と竹をで貼り合わせ、固定の為に上から糸を巻いて漆で固め、更に補強と装飾を兼ねてを巻き付けますが、この巻き付けが矢摺籐重籐弓形式、それ以外の部分を所籐弓形式とした弓の事を言います。
矢摺籐(やずりどう・やずりとう) 弓の矢摺に巻くのことです。
矢を射る時、矢が弓を直接擦(す)らないよう保護のために巻かれますが、狙(ねら)いの目安(めやす)を付ける部分でもあります。
使用するの形状によって数種類あります。
矢が接する最下段(さいかだん)の部分を特に「籐頭(とがしら)」と言います。
なおは徐々に擦り減るので定期的な巻き替えが必要だそうです。
矢留冠(やどまりのかんむり) @:仕付袖冠板置袖の一番上の板を折冠のように「L」字型に外へ低く小さく折り返した形式の物を言います。
A:障子板の別名です。
いずれの場合も、側面から飛んでくる矢を止める防具という意味でこう呼ばれます。
「矢止冠」とも書きます。
矢弭(やはず) 矢の端(はじ)で、弓の弦(つる)に番(つが)えるための切り込みがある部分のことを言います。
「矢筈」とも書きます。
矢羽(やばね) 矢に用いる羽のことで、鳥の羽が使われます。
色々な鳥の羽が使われたようですが、特に鷲(わし)と鷹(たか)の羽が珍重(ちんちょう)されました。
羽の模様によって百以上もの名称があり、尾羽(おばね=しっぽのはね)の場所によってもそれぞれ名称があります。
山形紋(やまがたもん) 家紋(かもん)の一つで、山を図案化したものです。
「Λ」字型が基本で、これを単純に二つ重ねた「違い山形(ちがいやまがた)」、重ねた部分の足を短くした「入り山形(いりやまがた)」などがあります。
また、山形が連続したものを山道と言います。
山銅(やまがね) 鉱山より採掘(さいくつ)されたままの粗製の銅材のことです。
不純物が多く含まれており、その組成もまちまちなところから色合いも様々で、古い時代にはごく一般的な材料として多用されていたようです。
江戸時代には銅の精錬技術が進歩し、純度の高い銅が素材として主流となる一方で、素朴な味わいがあるところから金工材料として癈(すた)れることなく使われたようです。
山勢形(やませなり) 「山勢」は「さんせい」とも読み、山の姿形やようすを表現したものを言います。
大和鞍(やまとぐら) 飾り鞍の中でも唐鞍に対して和風(わふう=日本風)の馬具のことを言います。
前輪後輪居木先をはめて構成された鞍橋、二枚重ねの下鞍泥障などが特徴です。
「倭鞍」とも書き、「和鞍(わぐら)」とも言います。
山道(やまみち) 文字通り、山道(やまみち)のようなジグザグ線のパターンを言います。
もともとは旗指物に使われた図案(ずあん)が家紋(かもん)としても使われるようになったとされ、線の本数や配置などによっていくつかの種類があります。
似たものに立涌があります。
薬籠(やろう) 印籠蓋で、蓋(ふた)と本体の位置合わせのガイドとなる部分のことを言います。
蓋(ふた)側にこれが付いているものは「蓋薬籠(ふたやろう)」と言います。
野郎頭(やろうとう) 兜鉢麦漆などで動物の毛を植え付けた兜の一つで、後ろで髪をしばる、いわゆる「髻(もとどり=たばねた髪)」を結(ゆ)った髪型の物を言います。
八幡黒(やわたぐろ) 当世具足に用いられた黒い威糸のことです。
山城国 (やましろのくに=京都府)八幡(やわた)に住む神人によって染められたのでこう呼ばれます。
五倍子による鉄媒染のため、時間が経つと鉄分(てつぶん)が変化して威糸が痛みやすいという弱点があります。
木綿(ゆう) 「もめん」ではなく「ゆう」と読みます。
楮(こうぞ)の樹皮(じゅひ)を剥(は)いで蒸(む)した後に、水にさらして白色にした繊維(せんい)のことです。
古くは紙垂に使われました。
右筆(ゆうひつ) 主君の側近くに仕え、手紙などの代筆をする家臣のことを言います。
後には公文書や記録の作成などの事務的な仕事もしたようです。
「祐筆」とも書き「執筆(しゅひつ)」とも言います。
ユガケ(ゆがけ) 弓を射るときに手の指を保護するために用いる製の手袋のことです。
左右一対のものを「諸ユガケ(もろゆがけ)」「一具ユガケ(いちぐゆがけ)」、弦(つる)を引く方の手用のものを「的ユガケ(まとゆがけ)」、弦(つる)を引く方の手用で小指を除く4本の指だけを覆うものを「四つ掛け(よつがけ)」などと言います。
また戦場で両手に常時着用し、弓以外の武器を扱う時でも使える5本指の手袋状のものは「修羅ユガケ(しゅらゆがけ)」と言うようです。
「弓懸」とも書き、「弦弾(つるはじき)」「弓懸(ゆみかけ)」「手覆(ておおい)」と呼ぶ場合もあるようです。
ユヅカ(ゆづか・ゆつか) @:弓の中央より少し下の部分で、弓を使うときに握る部分のことです。
通常、握り革が巻かれます。
この部分のすぐ上が矢摺藤になります。
「弓束」「弓柄」とも書き、「握(にぎり)」とも言います。
A:握り革のことです。
弓弭(ゆはず) 弓の両端(りょうはじ)の弦(つる)をかける部分、またはその部分の金具のことです。
「弓筈」とも書き、「ゆみはず」とも言います。
指掛の綰(ゆびかけのわな) 手甲の内側にある、親指や中指を通す綰(わな)のことです。
「指掛(ゆびかけ)」「指貫(ゆびぬき)」「指貫の緒(ゆびぬきのお)」「管の緒(くだのお)」「手中の管(てなかのくだ)」「手甲の管(てこうのくだ)」などとも言います。
弓台(ゆみだい) 二張(ふたはり=二本)の弓と矢籠を一緒に持ち運べるようにするための器具のことです。
八日月(ようかづき) 月が新月(しんげつ=1日目の真っ暗な月)から満月(まんげつ=15日目)に満(み)ちていく途中、八日目頃の上方が欠けた月のことを言います。
「上弦月(じょうげんのつき)」「弓張月(ゆみはりづき)」「半月(はんげつ)」とも言います。
用心鉄(ようじんがね) 火縄銃の引き金の外側に付けられた半円状の金具で、指や物が誤(あやま)って引き金に当たって発射してしまわないようにするための部品のことを言います。
「用心金」とも書き、「トリガーガード」とも言います。
横矧(よこはぎ) 板札を横に矧(は)ぎ合わせることを言います。
「横剥」とも書きます。
寄懸威(よせかけおどし) 間隔をあけてしを行う手法の事です。
しが縄目威の場合は「寄毛引(よせけびき)」または所毛引素懸威の場合は「寄素懸(よせすがけ)」と言います。
四立羽(よたてば) 矢羽の付け方で、羽を上下左右の四箇所に付ける形式を言います。
羽を四箇所に付けると、矢が水平に飛ぶようになります。
鏑矢などに用いられます。
この他、三立羽と呼ばれる形式もあります。
四つ入り鎖(よついりぐさり) 籠手などに使われる鎖(くさり)のもっとも一般的な連結方法で、「丸環(まるかん)/丸輪(まるわ)」と呼ばれる円形の輪を、「菱環(ひしかん)/菱輪(ひしわ)」と呼ばれる楕円形(だえんけい)の輪で上下左右に連結して作られた鎖(くさり)のことを言います。
「総鎖(そうぐさり)」とも言います。
鎧着初め(よろいきぞめ) 武家(ぶけ)の男子が13、14歳になったとき、初めて具足を身につける儀式のことを言います。
「具足始め(ぐそくはじめ)」とも言います。
鎧通(よろいどおし) @:戦場で組討の際、鎧の隙間や鎧の上から相手を刺すために用いられた分厚くてほとんど反(そ)りが無い鋭利(えいり)な短刀(たんとう)のことです。
長さは大体30cm程度で、右手を左腰にまわす手間を省くため右の腰に差したところから馬手差し(めてざし)」「めて」とも呼ばれ、栗形返角拵えも通常品とは反対側に付けられています。
A:の一種で、太く鋭(するど)いものを言います。
四枚胴(よんまいどう) 蝶番(ちょうつがい)を三箇所に設けて四枚のパーツで構成された形式のをこう呼んでいます。
蝶番(ちょうつがい)を「・」で表すと、「右脇前板・前胴後胴・右脇後板」の三箇所蝶番(ちょうつがい)四枚分割となります。
「しまいどう」とも言います。
ら行 解説
羅(ら) 網(あみ)のように目の粗(あら)い、薄く透き通った絹織物(きぬおりもの)のことを言います。
特殊な織機を使って、3本以上を絡(から)み合わせた経糸(たていと)の間に緯糸(よこいと)を通し、網(あみ)のような見た目に織り上げるのが特徴です。
「うすもの」とも言います。
雷文(らいもん) 雷の稲妻(いなずま)を図案化した、角張(かくば)った渦巻(うずま)き文様のことです。
中国では古代から用いられていたようですが、日本ではラーメンの器(うつわ)などでよく目にします。
また「稲妻紋(いなづまもん)」として家紋(かもん)にも使われ、いろいろな種類があります。
羅紗(らしゃ) ポルトガルからもたらされた、羊毛(ようもう)を密(みつ)に織って毛を起たせた厚地(あつじ)の毛織物(けおりもの)です。
陣羽織などに使われ、緋色のものは特に猩猩緋と呼ばれることがあるようです。
螺鈿(らでん) 青貝薄板貝を様々な形に切った物を、漆塗り(うるしぬり)や木の素材に嵌(は)め込んで模様を描く方法のことを言います。
奈良時代にはすでに行われていたそうです。
利剣(りけん) @:よく切れる刀剣のことです。
A:煩悩(ぼんのう=欲望)や邪悪なものを断ち切る仏の知恵や、独鈷剣三鈷剣のような法具(ほうぐ)のことです。
隆武頬(りゅうぶぼお) 烈勢頬と似ていますが、こちらは皺(しわ)が無く頬(ほほ)の肉付が良い、冷静な勇士の表情をしたものとされます。
両乳鐶(りょうちのかん) 采幣付鐶手拭付鐶のことを言います。
それぞれの鐶(かん=輪)が両胸に付いていることからこう呼ばれます。
「りょうちちのかん」とも言います。
両引合せ(りょうびきあわせ) 前胴後胴の二枚に分割されている場合、を着用した時に左右両側で引合せをする形式を言います。
「両相引(りょうあいびき)」とも言います。
厘劣り(りんおとり) 星兜で、兜鉢天辺に行くほど星鋲を小さくしていく手法のことを言います。
室町時代後期から行われ、特に明珍派(みょうちんは)で使われることが多いようです。
「厘(りん)」は昔の長さの最小単位のことで、「厘劣り」とは「少しずつ小さくなる」を意味します。
倫子(りんず) 慶長年間 (1596〜1615年)に中国の織物を真似て、京都の西陣(にしじん)で始まったとされる滑(なめ)らかで光沢(こうたく)のある絹織物(きぬおりもの)で、経糸(たていと)・緯糸(よこいと)ともに生糸を使った繻子織が一般的です。
光の当たり具合で紋様が見えたり隠れたりするほか、色も模様もないものは特に「白無垢(しろむく)」と呼ばれ、これで作られた肌着(はだぎ)を着用できるのは官位が四位(よい)以上、さらに大名では嫡男(ちゃくなん)と限られていたそうで、それ以外の一般の武士には使用が許されていなかったそうです。
染め物の生地(きじ)としても使われます。
「綾子(りんず)」とも書きます。
瑠璃斎胴(るりさいどう) 鬼会中央から立挙にかけて一部が取り外せるか、開閉出来るようになったのことで、具足を着用したまま懐中(かいちゅう)の物を取り出す為の工夫と言われますが、明確な理由や用途は不明なようです。
江戸寛永(かんえい)の頃、源右衛門瑠璃斎という軍学者(ぐんがくしゃ)が考案したのが名前の由来(ゆらい)とされていますが、こちらも確かでは無いようです。
烈勢頬(れっせいぼお) 目下頬の一つで、非常に烈(はげ)しい怒(いか)りで相手を威嚇(いかく)するような表情をした物のことです。
髭(ひげ)を蓄(たくわ)え、鼻や頬(ほほ)に皺(しわ)を打出し、大きく開いた口に歯が付いているのが特徴です。
歯は金色にすることもあったようです。
隆武頬との違いは「皺(しわ)が有って頬(ほほ)が痩(や)せ、獰猛(どうもう)な表情」とされます。
連山形(れんざんなり) 板札の端(はし)などに、凹凸(おうとつ)の装飾パターンをつけたものを言います。
凹凸(おうとつ)のパターンを連(つら)なった山に例(たと)えてこう呼びます。
「連れ山道(つれやまみち)」とも言います。
連尺(れんじゃく) 荷(に)を背負う時に用いる、布やで作られた紐(ひも)のことを言います。
連銭葦毛(れんせんあしげ) 馬の毛色の一つで、葦毛に灰色の丸い斑点(はんてん)がまじっているものを言います。
丸い模様を銭(ぜに=コイン)に見立て、それがいくつも連(つら)なっている様子からこう呼ばれます。
「虎葦毛(とらあしげ)」「星葦毛(ほしあしげ)」とも言います。
連尺胴(れんじゃくどう) 仙台胴など、非常に重量のあるを着用するために考案されたの事です。
押付板前胴発手にそれぞれ二箇所穴を開け、その穴からの内側に連尺を通し、肩でを背負って重量を軽減させる仕組みになっています。
「連雀胴」とも書き、別名を「笈掛胴(おいかけどう)」とも言います。
蝋色漆(ろいろうるし) 生漆に油類(ゆるい)を加えずに精製した漆(うるし)のことです。
蝋色塗に使われ、塗り上がりは半艶(はんつや)くらいの光沢(こうたく)ですが、磨き上げることで光沢(こうたく)が出ます。
「呂色」とも書きます。
蝋色塗(ろいろぬり) 蝋色漆を上塗り(うわぬり)とし、表面を研(と)いでから摺り漆を行い、研ぎ出しで光沢(こうたく)を出す技法のことです。
磨(みが)くことで蝋燭(ろうそく)の蝋(ろう)のようなしっとりとした深みのある艶(つや)が出ることからこう呼ばれます。
蝋(ろう) 蝋流し蝋付けに用いる合金(ごうきん)のことで、融(と)ける温度が450℃未満の物を「軟蝋(なんろう)」、450℃以上の物を「硬蝋(こうろう)」と言います。
「軟蝋(なんろう)」は一般的に「半田(はんだ)」と呼ばれます。
合金(ごうきん)に使われている金属によって「金蝋(きんろう)」「銀蝋(ぎんろう)」などと呼ばれ、形も板・線・粉・ペースト状などがあるようです。
蝋付け(ろうづけ) 金属を接合(せつごう)する技法である溶接(ようせつ)の一つです。
接合(せつごう)したい金属よりも融(と)ける温度が低いを接着剤として用い、加熱してだけを融(と)かすことによって金属同士を接合(せつごう)します。
なお軟蝋を用いる場合を一般的に「半田付け(はんだづけ)」と言います。
老頭(ろうとう) 老翁(ろうおう=おじいさん)の髪(かみ)を模した兜のことです。
毛を植える場合は老人らしく白、または半白の毛を用います。
似たものに尉頭形兜もあります。
蝋流し(ろうながし) 金属を装飾する技法の一つで、融(と)ける温度が地金より低い地金の表面に乗せ、加熱(かねつ)してだけを融(と)かすことによって模様を付けることを言います。
金蝋を使ったものを「金蝋流し(きんろうながし)」銀蝋を使ったものを「銀蝋流し(ぎんろうながし)」と言います。
六枚胴(ろくまいどう) @:前胴後胴の二つに分け、それぞれを二箇所蝶番(ちょうつがい)三枚分割とし、両脇で引合せる形式にしたものをいいます。
前胴だけを着用すれば腹当前懸具足のように軽武装として使用出来る利点がある反面、両引合せの手間がかかったり、前胴後胴がずれないようにうまく着用するのが難しいなどの苦労が多く、遺物は少ないようです。
A:五枚胴の左脇板に蝶番(ちょうつがい)を一つ追加して、全体を連(つら)なった六枚のパーツで分割した形式です。
蝶番(ちょうつがい)を「・」で表すと、「右脇前板・前胴・左脇前板・左脇後板・後胴・右脇後板」の五箇所蝶番(ちょうつがい)六枚分割となります。
六方白(ろっぽうじろ) 兜鉢の六方向に地板篠垂がある兜のことです。
わ行 解説
脇楯(わいだて) 大鎧の右側面を防御する独立した板のことです。
壷板蝙蝠付馬手草摺によって構成されます。
和冠形兜(わかんむりなりかぶと) 冠形兜で、日本の役人の冠(かんむり)を模した物を言います。
冠(かんむり)に対して垂直や後に垂(た)らすように取り付けられた立物として付く場合が多いようですが、老懸が付いた物もあるようです。
ちなみに中国の冠(かんむり)の場合は唐冠形兜と言います。
脇板(わきいた) 文字通り、の両脇(りょうわき)にある金具廻りのことで、脇の下に出来る隙間を防御します。
胸板と同様に覆輪した鉄板などで作られることが多いようですが、当世具足では威しつけとされます。
脇威(わきおどし) 古くはa href="jiten.html#wakiita">脇板と立挙の端(はし)を脇鞐で留めていましたが、当世具足になってからは威し付けが一般的となったため、こう呼ばれるようになりました。
脇鞐(わきこはぜ) 脇板立挙の端(はし)をつなぐ綰(わな)ののことです。
脇差(わきざし) @:大刀(だいとう)の脇(わき)に差す刀(かたな)の意味で、腰(こし)に大小2本の刀(かたな)を差す場合に小さい方の刀(かたな)のことを言います。
A:腰刀のことです。
B:近世、町民(ちょうみん)などが旅をする際に護身用(ごしんよう)として腰(こし)に差した刀(かたな)のことで、「道中差し(どうちゅうざし)」とも言います。
脇指(わきざし) 指物を真ん中ではなく、どちらかに寄(よ)せて差すことを言います。
脇張出(わきはりだし) 星兜兜鉢を矧(は)ぎ止める方式の一つです。
兜鉢の左右側面に張出板が有り、その板の両端を起点として前後方向に矧板(はぎいた)を上重ねにして張っていく方式のことで、平安時代末期から鎌倉時代前期頃まで見られる手法とされます。
「左右両側面張出(さゆうりょうそくめんはりだし)」「両張出(りょうはりだし)」とも言うようです。
なお兜鉢正中と後正中張止板を上から重ねるのが一般的なようです。
また、側面の張出板から兜鉢正中張止板までの矧板の枚数と、兜鉢正中張止板までの矧板の枚数は、前者が1枚多いのがより古い形式で、時代が下がると同じ枚数になるとされているようです。
鎌倉時代中期以降になると後張出が基本となっていったようです。
脇曳(わきびき) @:脇の下に出来る隙間を防御するために用いられた、とは独立した「凹(おう)」字型の防具を言います。
板札のものや威したもの、数枚の部分に分けて蝶番(ちょうつがい)や威しで連結したものなどがあります。を着る前に肩から掛けるものを「掛脇曳(かけわきびき)」と言い、それを紐(ひも)で左右つなげたものを「連脇曳(つれわきびき)」と言います。
A:同じく脇の下の隙間を防御するために脇板に仕付(しつ)けて、先端から出した紐(ひも)を肩上に結ぶ形式のもので、
「仕付脇曳(しつけわきびき)」「付脇曳(つけわきびき)」「釣脇曳(つりわきびき)」などと言います。
いづれも「脇引」とも書き、「脇当(わきあて)」「脇(わき)」「脇摺(わきずり)」「脇込(わきこみ)」などとも呼ばれます。
和算(わさん) 日本で独自に発達した数学のことです。
広い意味では西洋数学が日本にもたらされる前の日本式数学を総称して指しますが、狭い意味では特に江戸時代の数学者である関孝和(せきたかかず/こうわ)以降に盛んになった日本式数学を指します。
計算道具の一つとして算木が使われました。
和製南蛮兜(わせいなんばんかぶと) 文字通り西洋甲冑の兜を模して日本で作られた南蛮兜のことです。
和製南蛮胴(わせいなんばんどう) 文字通り西洋甲冑のを模して日本で作られた南蛮胴のことです。
南蛮胴に使われる西洋甲冑の輸入量が非常に少なかった事もあって、日本の甲冑師がその形式を真似て作ったものです。
二枚胴で、草摺を付けやすいように前胴発手が一直線になっているのが普通です。
また、このようにを立てた一般を鳩胸胴とも呼んでいます。
肩上(わたがみ) 「わたかみ」とも言い、「綿噛」「肩噛」「綿紙」「綿咬」の字を用います。
の肩に当たる部分で、押付板の上部から頚(くび)の左右に沿(そ)って前に出され、前方で高紐を使って胸板もしくは前立挙と掛(か)け留めします。
当世具足ではここに肩当襟廻小鰭などが付きます。
腸繰(わたくり) の一種で、傷口(きずぐち)を大きくし、より深手を与える目的で使われました。
先端の尖(とが)った部分の反対側に大きなそり返しを付け、腹部などに刺さった矢を抜くときにはその部分が引っかかって腸を繰(く)り出すことから付いた名称のようです。
綿帽子(わたぼうし) @:真綿(まわた)を加工して広げて作る防寒具のことです。
A:婚礼衣装(こんれいいしょう)の一つで、花嫁が白無垢(しろむく=白一色の着物)をつけた時にだけかぶる白い袋状(ふくろじょう)のかぶり物のことです。
通常は挙式の時にだけ着用し、披露宴では着用しないとされます。
「置き綿(おきわた)」「被き綿(かずきわた)」「額綿(ひたいわた)」とも言います。
綿帽子形兜(わたぼうしなりかぶと) 綿帽子を模した変わり兜のことです。
渡巻(わたりまき) 太刀口金から二ノ足金物の少し後ろの辺りまで、柄巻と同じ紐(ひも)を使って巻(ま)き締(し)めることを言います。
の手持ちを良くするのと、を頑丈にするために施されたと言われているようです。
輪貫(わぬき) 中心をくり貫いた、ドーナツ状の円盤のことを言います。
立物指物を始め、家紋(かもん)のデザインとしても用いられます。
輪の太さによって異なる名称で呼ばれ、太い物を「蛇の目(じゃのめ)」と呼んだり、形が弦巻に似ていることから「弦巻紋(つるまきもん)」と呼ぶ場合もあるようで、また九州の立花家(たちばなけ)では「月輪(がちりん)」とも言うようです。
草鞋(わらじ) 藁(わら)を編んで作られたビーチサンダル状の履物(はきもの)のことを言います。
使いやすい上に材料入手も簡単で、大量生産が可能なことから南北朝時代頃にはかなりの身分の者でも足袋(たび=くつした)とともに着用するようになりました。
当初は藁(わら)だけでできていましたが、後に木綿(もめん)の切れ、麻(あさ)、陰干(かげぼ)しした茗荷(みょうが)の繊維、髪の毛、和紙(わし)などを混ぜ込んで耐久性を上げたものも登場したようです。
童具足(わらべぐそく) その名の通り子供が着用するための具足で、生まれたばかりの子供用の産衣鎧(うぶぎよろい)として、または鎧着初め元服の儀式(ぎしき)に際して用いられました。
子供用なので小型ですが、大人用の具足と同じようにしっかりと実用的な作りのものが多く見られます。
「元服鎧(げんぷくよろい/げんぶくよろい)」と呼ぶ場合もあるようです。
割襟(わりえり) 後・右・左の三つの部分に分かれて構成された襟廻のことを言います。
各部分は綴(とじ)付けや掛けで連結します。
割ジコロ(わりじころ) 名の通りにシコロ草摺のように分割した物を言い、通常は三分割とすることが多いようです。
首を守るのにより適していると言われるほか、重ジコロ下ジコロとしても用いられました。
鉢付板から分割する場合と、二の板(二段目の板)から下を分割する場合があり、「下散ジコロ(げさんじころ)」「分ジコロ(わけじころ)」「分離ジコロ(ぶんりじころ)」とも呼ばれます。
割立物(わりだてもの) 脇立で、天衝のように左右合わせて一つの形象(けいしょう)になるものを言います。
割蛤(わりはまぐり) 文字通り蛤(はまぐり)を2枚に割(わ)ったもののことで、貝形兜立物の意匠(いしょう=デザイン)として用いられました。
蛤(はまぐり)は、
@:口を開くのが難しいので口を割らない、守りが堅(かた)い。
A:逆に、蛤(はまぐり)のような堅(かたい)い守りであっても割って進んで行く。
B:対(つい)になる貝殻(かいがら)でないと2枚がぴったりと合わないことから、他の主君には仕(つか)えない。
と言った意味があると言われています。
個人的には「B」と似た意味で、「良い敵と巡(めぐ)り合う」と言うようなこともあったかもしれないと思います。


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