● 肩脱二枚胴具足(かたぬぎにまいどうぐそく) 東京国立博物館蔵
兜は
頭形兜に熊毛(くまげ)を張った
総髪で、
肉色塗の
眉庇に
見上皺と
打眉が施されています。
面頬と
籠手も
肉色塗にされています。
胴は
二枚胴で、前胴・後胴の左端から下部にかけて
金小札を紅(くれない)・
萌葱・紺・白・紫の糸を使った
色々威とし、前胴の残りには肋骨(あばら)・乳房(ちぶさ)を、後胴の残りには肩甲骨(けんこうこつ)・肋骨(あばら)・背骨(せぼね)をそれぞれ
打出して
肉色塗とし、裸体(らたい)を表現したいわゆる
肩脱胴です。
袖は左手側が
金小札の
色々威、右手側が
肉色塗の
小札を
薄茶色と思われる糸で
威しており、右肩側があくまでも素肌(すはだ)に見えるようにした凝(こ)った意匠(いしょう=デザイン)です。
元はいずれかの子爵家(ししゃくけ)が所蔵していた甲冑のようです。
これとほぼ同じ意匠(いしょう=デザイン)の甲冑が松坂屋染織参考館に所蔵されています。
染色参考館では「金小札色々威片肌脱胴具足(きんこざねいろいろおどしかたはだぬぎどうぐそく)」の名称で呼ばれ、「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」の前立と、金の輪貫の指物を備えています。
打出した胴や髭(ひげ)付きの面頬の意匠(いしょう=デザイン)などに東京国立博物館所蔵の甲冑と若干の差異が認められます。
当初からそうだったのかは不明ですが、右手側は袖だけでなく籠手の家地まで肌色(はだいろ)っぽい家地を使って素肌(すはだ)を現しています。
なお染織参考館では前立の経文(きょうもん)と指物の輪貫を「蛇の目紋(じゃのめもん)」に見立て、法華経(ほけきょう)の信者で「蛇の目紋(じゃのめもん)」を家紋にしていた加藤清正(かとうきよまさ)の所用との伝来もあるようです。